プロフィール
ERTトレーニングセンターのセンター長を仰せつかりまして、防災に関する教育を進めています。2023年までは、3M(スリーエム)という会社の安全衛生製品技術部の学術担当として主に呼吸を守るという業務を担当してきました。感染症やアスベスト問題、それから原発の放射性微粒子などから人々を守るという仕事を担当してきました。さらに、化学兵器などによる攻撃についても呼吸に関係してきますので、これらについても担当してきました。
元々、配属されたのが安全衛生というところで、工場などで働く方々を守る仕事をしていました。その中で、呼吸というのは人間が生きていく中で切っては切れないものですので、呼吸するところが災害現場であろうと建設現場であろうと、私たちがお手伝いをしないといけないなと考えるようになりました。元々はマスクに関するものや、自動車産業向けの様々な化学物質から作業者を守るためのマスクを開発しました。20年ぐらい前からついこの間までは私が設計したマスクが世界中で使われていて、標準化された経緯もあります。
防災訓練の変化(リアリティの要求増加)
ここ数年防災に関わることに携わっていて、様々な企業へ防災教育や防災訓練のお手伝いをさせていただいています。正直にお話すると「なんちゃって」という形の防災訓練が多く見られます。
例えば、避難訓練の中で担架を使って人を運ぶ訓練をされているところは多くありますが、その担架に乗っている負傷者役の方が自ら腰をかけて寝て運ばれていくという様子をほぼ全ての訓練で見かけました。実際の現場では負傷者の方は動けないので、正しく乗せてあげないと場合によってはその負傷者の方が命を落とすこともありますので、その「なんちゃって」で訓練するのは良くないと考えています。いざという時に、私たち民間人でもやれることはたくさんあるので、その基準を知るべきであると考えます。
2016年からはリアリティを持った訓練が求められ、日本を代表する企業などではより実践的な訓練が実施されてきています。私たちがお伝えしている内容なども、どんどん企業の中で内製化が進んでいるというのが現状です。
備蓄の重要性
近年はコロナウイルスにより私たちは翻弄されました。今後もこのような感染症が発生することが考えられます。コロナウイルスの感染を防ぐために多くの人がマスクや手指消毒薬のようなものを買い求め、2020年では手指消毒液の売り上げは対前年比790%と驚異的な数値が叩き出されました。転売ヤーと呼ばれるような方が出てきてしまい、安いものを高く買わされるという社会現象にもなりました。要は備えていないということが1つの問題だと考えています。
マスクには、サージカルマスク、防塵マスク、それからN95マスクや4Gマスクなどの種類がありますが、これらの使い分けも今では大体理解されているのかなと思います。特に、今後マスクなどをお買い求めいただく場合には、どこのメーカーでもいいのですが信頼されるメーカーのものを買ってほしいなと思います。経産省は驚異的な速度でマスクの規格を発行しました。JIS T9001(医療用及び一般用マスクの性能要件及び試験方法)、JIS T9002(感染対策医療用マスクの性能要件及び試験方法)という規格です。現在はこのJISに適合した信頼できるマスクが流通していますので、JISのマークがついているものを目安に購入すれば安心です。
残念ながら日本では災害現場などで石綿などを吸い込む可能性がまだまだ残っています。建物の中や外装などにも使用されていることがありますので、少なくとも避難をする時、それから救助に入る時には必ず防塵マスクをして欲しいと思います。また、最近では富士山の噴火についても政府の方で検討会などが動いていますので、いざという時に困らないように予めの準備が必要です。
また少し話が脱線しますが、実際に火災が発生したり、災害時に火傷をしてしまった場合には水で冷やすという行為が行われます。学会から発表されているのは、火傷の程度にもよりますが応急手当として冷やすことを目的に5~30分間流水で冷やすことが推奨されています。この時に必要な水量ですが、大体一般的な蛇口を30度程度ひねると1分間で約6リットルの水が出てきます。それを30分間となると180リットル、湯舟1杯分になります。それだけの水を用意できるのか疑問に感じます。火傷などの怪我をしないように予防していただきたいと願っています。