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防災インタビューVol.228

リアルな訓練・情報で命を救う初動対応へ

放送月:2024年8月
公開月:2025年1月

片岡 克己 氏

ERTトレーニングセンター センター長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

情報の重要性

災害対応時には情報が重要です。「情報が人を殺して、情報が人を生かします。」何を言っているのかと思われる方もいるかもしれませんが、災害時に絶対に収集しなければならない情報の中で「GUMBA」と呼ばれている負傷者情報があるかないかで怪我をされた方の命、または予後を左右すると言っても過言ではありません。大変重要で命を救うのに必須の情報です。

1つ目、「GUMBA」の「G」は『原因』の「G」です。どうして怪我をしたのかを負傷者の意識があるうちに訊いてください。例えば、避難している時に階段から落ちたと言われ、見た目でも足が変な方向に向いていたとすると、誰の目にも骨折であると見て取れます。しかし、ここでポイントなのは「階段から落ちた」ということが重要で、今見えている外傷以外に、もしかすると頭をぶつけているのかもしれない。首や背骨が折れたり、神経が切断されたりしていないか、など、関連する問題が予測でき、見逃し防止や応急手当に活用できます。

次に「GUMBA」の「U」は『訴え』の「U」です。先ほどの例に続いて、負傷者が「お腹が痛い!」と訴えたとします。足が折れているから足が痛いのではないかと思いますが、階段から落ちた時にお腹を強くぶつけたかもしれません。そうすると内蔵が破裂している、お腹の中で出血しているかもしれない等の想定ができます。その判断が出来れば、適切な手当てや、搬送に向けてどの方法で運べばよいのかなどの判断材料にもなります。

次の「M」は『飯』の「M」です。何時にどのくらいの量の食事をしたかを訊いてください。先ほどの原因のところで「階段から落ちた」ことが分かっています。仮に頭をぶつけていてお腹の中で出血していると、意識が朦朧とするかもしれません。意識が朦朧としていると場合によっては嘔吐します。その嘔吐したものが喉に詰まってしまい窒息することもあります。一般的に食物は2~3時間で消化され、腸へと送られます。脂っこいものや肉類など腹持ちの良いものは消化に4~5時間かかると言われています。食事を摂った時間と量を知ることが出来れば、原因などを考慮して嘔吐を警戒すべきかどうか判断ができます。さらに、災害直後の水は大変貴重な品物の一つです。食事を摂っていることが分かれば、食事を摂られる時に水分補給もされますので脱水症状は起こりにくいと考えられますので、貴重な水を他の負傷者に回すことが検討出来ます。

そして「B」は『病歴』の「B」です。過去に大きな病気や手術をされたか、現在患っている病気とお薬について訊いてください。例えば、人工透析を受けている、COPDなどで在宅酸素療法を受けている、高血圧、糖尿病、ホルモン系の患者さんは時間でお薬を飲まないと命に係わる問題になってきます。お薬を飲んでいるのか?今日は何時にお薬を飲んだのか?次は何時に飲まないとダメなのか?そのお薬がどこにあるのか? 災害時、すぐにお薬が手に入るかどうかもわかりませんので、その方がお持ちのお薬だけが頼りになってきます。

最後、「GUNBA」の「A」は『アレルギー』の「A」です。病院では必ずお薬のアレルギーを訊かれるかまたは検査します。しかし災害時は病院も混乱します。お薬に対するアレルギー情報を把握し医療機関に伝えることができれば、一秒でも早く医療サービスを受けられる可能性が高まります。

バイタルサイン(生命の兆候)

「バイタルサイン」と呼ばれる、生命の兆候とその基準目安数値を知って頂くとなぜその応急手当が必要なのかがさらに理解できます。サインとあるように体から発生してくる生きるための指標です。バイタルサインは生きるために必要な「呼吸」、「循環」、「意識」等を司る肺、心臓、脳の状態を簡単に知ることが出来ます。災害時の応急手当は「呼吸」「循環」「意識」これらの安定化ともいわれます。

まず、「呼吸」は地震などで頭に衝撃を受けると舌が空気の通り道である気道を塞いでしまうことがあります。窒息しないように、喉を伸ばすようにして気道の確保が必要です。また、異常に早い呼吸、異常に遅い呼吸のように、普通ではない呼吸をしている場合は危険だと異常を感じるようにしましょう。

次に「循環」です。「呼吸」が出来ていたとしても、出血で大切な血液が失われてしまうと、酸素を各臓器に届けることが出来ません。災害現場で怪我をしている人を発見した時に、血が出ているのか出ていないのか、見た目だけでは分かりません。洋服の中で出血していて全く見えない、または血液が洋服に吸収されてしまって外には漏れ出していないということがあります。血液の30%を失ってしまうと大量出血として命の危険が非常に高まります。命に係わる出血かどうかを確認する方法はいろんなところで情報発信されていますので、ぜひ検索してみてください。

もう1つお伝えしておきたいのが「意識」です。「意識」というのは、脳の動きですから、「手を握ってください/放してください」などと指示をして反応すれば、指示を聞いて理解して体が動いていることが分かりますので、脳は正常であると判断できます。

住所を尋ねてみて、「私の住所は東京都ニューヨーク市」などと訳の分からない回答が来たら異常であると分かります。医療従事者にとっては重要な情報ですので、ぜひお伝えいただければと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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