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これで理解!「サイバーセキュリティ」と「情報セキュリティ」の違い

日々の業務で扱っている請求書、見積書、設計図、議事録。こうした資料が万が一外部に漏れたらどうなるでしょうか。現在、情報セキュリティの脅威は中小企業にも深刻な影響を与えています。特に「サイバーセキュリティ」と「情報セキュリティ」の違いを曖昧にしたまま対策を講じると、対処が後手に回り、重大な抜け漏れが発生しかねません。

この記事では、両者の違いを整理し、自社に合った現実的な対策と必要なツール選定の判断基準を解説します。

サイバーセキュリティと情報セキュリティの違いを明確に理解

両者は似たような言葉ですが、守る対象と手段に違いがあります。それを理解することで、対策の優先順位や社内の担当範囲を明確にできます。

情報セキュリティは企業全体の情報資産を守る考え方

情報セキュリティは、紙の契約書、業務マニュアル、口頭でのやり取り、USBメモリに保存されたファイルなど、デジタル・アナログを問わず、企業内に存在するすべての情報資産を保護するための総合的な仕組みです。

社内の情報の分類・棚卸し、アクセス権の設定、保管方法の明文化、従業員教育などが主な取り組み内容となります。重要なのは、ITだけでなく、人的・物理的管理も含まれることです。

サイバーセキュリティはIT領域に特化したセキュリティ対策

一方のサイバーセキュリティは、インターネットや社内ネットワーク、業務で使うパソコンやクラウドサービスなど、デジタル領域の情報資産を外部からの攻撃や不正な操作から守ることを目的としています。

例えば、ウイルスを検知して駆除する仕組みや、不正アクセスを防ぐファイアウォール、社外からの接続を安全にするVPNといった技術的な手段が該当します。最近では、すべての通信や操作を疑って確認する考え方や、社内の端末の動きを常に監視して異常を見つける仕組みも注目されています。これらは自社の業務に合わせて段階的に導入することが可能です。

セキュリティ被害は中小企業にも発生している

「うちは大企業じゃないから関係ない」と考えているかもしれませんが、実際には中小企業こそ攻撃対象として狙われやすい傾向があります。

なぜ中小企業が狙われるのか

現在のサイバー攻撃は、単に無差別にウイルスをばらまくものではなく、特定の企業や業界を対象とした標的型の攻撃が主流になっています。特に、実在する取引先を装ったメールにマルウェアを添付し、社内に侵入する「標的型メール攻撃」が急増しています。

中小企業が狙われやすい理由として、まずセキュリティ専任の人材が不在であること、複数の業務を少人数で兼任していること、古い機器やソフトウェアをそのまま使い続けていることなどが挙げられます。攻撃者にとっては「セキュリティ対策が手薄な侵入口」と見なされているのが現実です。

一度侵入を許すと、機密データを抜き取られるだけでなく、社内ネットワーク全体に感染が広がり、業務を停止せざるを得ない状況に追い込まれることもあります。ランサムウェアの被害では、社内のファイルがすべて暗号化され、復旧と引き換えに金銭を要求されるケースも多く報告されています。

被害事例から見る現実のリスク

2021年、徳島県のある医療機関がVPNの脆弱性を突かれてサイバー攻撃を受け、患者情報8万件以上が流出する事態が発生しました。このケースでは、電子カルテシステムが停止し、診療が一時不能になるなど、直接的な業務への影響が生じました。最終的な対応費用は2億円を超えたと報道されています。

また、建設業界では、公共事業の委託を受けていた中小の設計会社がランサムウェアの被害を受け、都市計画関連データが流出した結果、委託元からの取引を停止される事態に発展しました。復旧費用や信頼回復のための対応に加えて、新規受注への影響も大きく、最終的な損失は7億円超とされています。

これらの事例に共通しているのは、特別な操作や判断を伴わない日常業務の中で発生している点です。つまり、セキュリティに詳しくない社員でも扱える環境を用意しておかなければ、知らぬ間に重大な被害が起こる可能性があります。

対策を後回しにするのではなく、情報取扱規程の整備、従業員教育、そしてウイルス対策ソフトやVPNといった最低限の技術的対策を、半年以内に実施することが現実的な初期対応です。

次の章では、限られた予算と人手でも導入できる対策を具体的に紹介します。

自社で実行できる現実的なセキュリティ対策

すべての対策を一度に導入することは難しいため、できることから段階的に実行することが重要です。ここでは、人的・技術的対策に分けて紹介します。

ルール整備と教育は最初に着手すべき施策

情報セキュリティは、仕組みよりも先に人が動ける環境を整えることが重要です。まずは社内で扱う情報を「社外秘」「社内共有」「一般公開」のように分類し、それぞれの取り扱いルールを決めます。文書化したルールは、全社員に配布し、入社時や異動時のタイミングで再確認できるようにします。

パスワードは8桁以上、使い回し禁止、定期変更を基本とし、端末の無人状態時の自動ロックも設定します。USBメモリの使用は禁止または事前申請制にするなど、実際の運用に耐えうる形で整備します。

教育は、メールの添付ファイルやURLを不用意に開かないこと、怪しい画面が出たらすぐ報告することなど、初歩的な対策から徹底します。1回限りの講義形式ではなく、半年に1回のeラーニングや、模擬攻撃を含んだ訓練を通じて、習慣づけることが重要です。

ツール導入は機能と管理負荷のバランスが重要

ツールの導入は、「管理できる範囲で、必要な機能に絞る」ことが基本です。ウイルス対策ソフトは、管理画面で複数端末の状態を一括確認できるクラウド型を選ぶと、IT担当者がいなくても保守がしやすくなります。

ファイアウォールやUTM(統合脅威管理)は、社外との通信の出入口を制御し、不正アクセスを防ぐ役割を果たします。メール監視機能があるタイプであれば、標的型攻撃にも対応しやすくなります。

VPNは、社外から社内システムにアクセスする業務がある場合に必須です。コストを抑えたい場合は、法人契約向けのクラウドVPNを導入すると、端末にソフトを入れるだけで接続環境を整備できます。

どのツールも、導入後に「誰が管理するか」「どこまでログを見るか」まで決めておかなければ、効果を発揮しません。手間をかけずに守りを固めるには、機能と管理負荷のバランスを意識することが重要です。

限られた予算・人手で現実的にセキュリティ体制をつくるには

セキュリティ対策というと、高額なツールや専門人材を思い浮かべるかもしれません。しかし中小企業にとって必要なのは「できる範囲で、優先すべきことを確実に実行する体制」です。

ここでは、予算と人員が限られていても実現できる3つの対応方針を紹介します。

まず半年以内に取り組むべき最小限の対策

最初のステップは「攻撃されやすい穴をふさぐ」ことです。特に標的型メールやウイルス感染など、入り口対策に集中するだけでも被害リスクを大きく減らせます。

  • 社内規程の整備(情報の分類と取り扱いルールの文書化)
  • パスワード管理と端末ロックのルール設定
  • ウイルス対策ソフトの導入(年間数万円で導入可能)
  • VPNの導入(リモート業務がある場合は必須)
  • 社員教育(eラーニングや模擬攻撃メールの訓練)

これらは、初期費用を抑えつつ、自社内で対応しやすい範囲に収まります。10万〜30万円程度で基本の備えが可能です。

外注と社内対応を分けてコストと負担を最適化する

すべてを外部に任せると高額になりますが、かといって全てを社内で抱えるのも無理があるでしょう。コストと手間のバランスをとるには「最低限を社内で担い、専門性が必要な部分を外注する」ことが有効です。

【社内対応に向く業務】

  • 社内規程の作成・更新
  • 社員教育や研修の実施
  • パスワード管理、端末設定などの基本操作

【外注すべき業務】

  • 24時間ログ監視、不正アクセスの検知
  • 脆弱性診断やインシデント発生時の初動対応
  • 定期的なセキュリティ監査や外部診断レポートの作成

ハイブリッド型の体制にすることで、主導権を自社に保ちつつ、負荷の大きい領域だけを外部の力で補うことができます。

ステップを分けて段階的に強化する

すべてを1度に導入する必要はありません。1〜2年かけて段階的に体制を強化することで、無理なく予算を分散できます。

期間やること
0〜6ヶ月ルール整備、社員教育、ウイルス対策、VPN導入など、最低限の対策を実施
7〜12ヶ月UTMやファイアウォール、クラウドサービスのアクセス制限、IT資産管理ツールの導入など、技術的な強化を進める
2年目以降インシデント対応フローの構築、脆弱性診断の外注、セキュリティ監査など、運用力と改善サイクルを整備していく

予算に応じて、「まず守る」「次に広げる」「最後に回す」の順で取り組めば、費用対効果を高めながら現実的に対応が可能です。

【関連記事:法人のセキュリティ対策!予算と人手が限られていてもできる工夫

社外業務でも情報を守るなら、モバイル閉域接続とBoxの導入で安心を

テレワークや外出業務が当たり前になった今、セキュリティは社内環境だけでなく、社外でも万全な対策が求められています。特に中小企業では、私物端末の使用やフリーWi-Fiの接続など、意図しないリスクが広がりやすいのが現実です。

イッツコムが提供する「モバイル閉域接続」と「Box」は、社外業務における情報漏洩リスクを抑え、セキュアで効率的な業務環境を実現するための強力な選択肢です。

モバイル閉域接続でのデータ保護強化

従来のVPNは広く利用されていますが、設定や運用の不備によって情報漏洩のリスクを完全には排除できません。

こうした課題への対策として有効なのが「モバイル閉域接続」です。イッツコムのサービスでは、PCやスマホに専用SIMカードを挿入するだけで、NTTドコモ網とイッツコム網を通じた閉域ネットワークを自動で判別し、社内LANへ直接アクセスできます。ユーザー側でVPN設定を行う必要がなく、管理者によるIDやパスワードの管理作業も不要になります。

Boxで社内外のファイル管理とセキュリティを両立

情報共有やバックアップ管理に課題を抱える場合、イッツコムが正規代理店として提供するクラウドストレージ「Box」が適しています。アクセス権限の設定やバージョン管理、操作ログの取得といった機能が標準で備わっており、セキュアな状態でのファイル管理を実現します。

また、Webブラウザや専用アプリを使って、社内外問わずファイルの閲覧・編集が可能になるため、複数拠点や外部パートナーとの業務連携にも対応しやすくなります。個人PCやUSBメモリによるファイルの持ち出しを減らすことで、情報漏洩リスクの低減にもつながります。

まとめ

情報セキュリティは、すべての情報資産を守るための包括的な取り組みであり、サイバーセキュリティはその中でもネットワークやシステムといったIT領域に特化した施策です。この違いを正しく理解することで、自社の状況に応じた対策の優先順位が明確になります。

中小企業では、限られた人員と予算の中で「できるところから確実に取り組むこと」が求められます。まずは社内ルールの整備と従業員教育から着手し、必要に応じてVPN、クラウドストレージ、モバイル通信といったツールを導入することで、段階的に体制を構築することが現実的です。

イッツコムでは、モバイル閉域接続やBoxなど、外出先や複数拠点での業務にも対応できるサービスを提供しています。社外でも安心して情報を扱える環境を整えたいとお考えの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。情報を守る取り組みは、信頼を築き、事業を継続的に成長させる土台になります。