いくらまでなら扶養内で働ける?年収の壁とケース別のポイントを解説
「配偶者の扶養内で働きたいけれど、いくらまでに抑えればよいのだろう」と悩むパート・アルバイトの方もいるのではないでしょうか。
扶養内で働くためには、年収ごとに設定されている「年収の壁」を正しく理解することが重要です。2026年6月現在、パートやアルバイトの方が注意したい年収の壁は7つあり、それぞれ年収を超えた際に生じる影響が異なります。
年収がいくらを超えたら何が起こるのかを正しく理解することが扶養内で働くコツです。この記事では、年収の壁の種類やそれぞれの基準額、年収を超えた場合に起こる変化についてご紹介します。
この記事を読めば、自分の理想とする働き方に合った年収ラインを見極める参考になるでしょう。
知っておきたい「税金の扶養」と「社会保険の扶養」の違い

年収の壁をチェックする前に、まずは基本的な知識として税金の扶養と社会保険の扶養の違いを押さえておきましょう。
税金の扶養とは、所得税法上における控除対象扶養親族となる人がいる納税者について、一定金額の所得控除を受けることです。これを扶養控除といい、主となる生計者(扶養者)が納める所得税を軽減する効果があります。
一方、社会保険の扶養とは、被扶養者が扶養者の社会保険に加入することです。ここでいう社会保険には、主に健康保険や厚生年金保険などが含まれます。
通常、社会保険は自身が勤務先を通じて加入し、保険料を負担することで利用しますが、一定の要件を満たす被扶養者であれば、自ら保険料を支払うことなく社会保険に加入できます。
扶養内で働くと税金と社会保険の2点でメリットを受けられますが、年収の壁を超えると社会保険料の負担が発生したり、各種控除が縮小あるいは適用不可になったりする可能性があります。
そのため、扶養内で働くことを希望する場合は、それぞれの年収の壁がどのような影響をもたらすのかを理解しておくことが大切です。
次章からは年収の壁を税金面と社会保険面の2つに分けて解説します。
税金に関する年収の壁5つ

配偶者の納税額、あるいはご自身の納税額に影響を及ぼす年収の壁は5つあります。
- 年収119万円の壁
- 年収136万円の壁
- 年収169万円の壁
- 年収178万円の壁
- 年収207万円の壁
ここではそれぞれの壁の詳しい内容を説明します。
年収119万円の壁
年収119万円の壁とは、パートやアルバイトとして働く本人の個人住民税が発生するラインです。
個人住民税には給与所得控除74万円+基礎控除45万円=119万円の控除が適用されるため、年収が119万円以下であれば原則として個人住民税は非課税になります。
なお、給与所得控除の最低保障額はこれまで65万円でしたが、令和8年度税制改正により74万円へ引き上げられました。ただし、上記は令和8年および令和9年分の措置であり、令和10年分以後は収入金額×30%+8万円が給与所得控除額となるので注意しましょう。
また、個人住民税の非課税限度額は自治体によって異なるため、地域によっては非課税ラインが119万円より低くなる場合があります。
具体例を挙げると、東京23区や大阪市、札幌市などの1級地では119万円が住民税の非課税ラインですが、伊勢原市や奈良市といった2級地、秩父市や栃木市といった3級地では119万円より低く設定されているケースもあります。
正確な非課税ラインを知りたい場合は、お住まいの自治体のWebサイトを確認するか、役場の担当窓口に問い合わせてみましょう。
(参考:国税庁『家族と税』)
(参考:国税庁『源泉所得税の改正のあらまし 令和8年4月』)
年収136万円の壁
年収136万円の壁とは、配偶者控除が適用対象外になるラインのことです。配偶者控除とは、納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に、一定の所得控除を受けられる制度です。
控除対象配偶者となるには、納税者と生計を一にしている民法上の配偶者であることに加え、配偶者の年間の合計所得金額が62万円(年収136万円)以下であることが条件とされています。そのため、年収136万円を超えると配偶者控除の対象から外れます。
なお、配偶者控除額は控除を受ける納税者の合計所得額によって異なります。一般の控除対象配偶者の場合は最大38万円、老人控除対象配偶者(その年の12月31日時点での年齢が70歳以上)なら最大48万円の所得控除を受けることが可能です。
(参考:国税庁『No.1191 配偶者控除』)
年収169万円の壁
年収169万円の壁とは、配偶者特別控除が減額され始めるラインのことです。前述したように、配偶者控除は配偶者の年収が136万円を超えると適用不可となりますが、配偶者の所得金額によっては一定の所得控除を受けられます。
配偶者特別控除の適用を受けるためには、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1000万円以下であることに加え、配偶者自身の年収が136万円超~207万円以下であることが条件です。
このうち、配偶者の年収が169万円以下までは13万円~38万円の控除を満額で受けられます。一方、年収が169万円を超えると段階的に控除額が減額されます。
例えば、納税者本人の合計所得金額が900万円以下の場合、配偶者特別控除の満額は38万円です。しかし、配偶者の年収が169万円を超えると控除額は36万円から段階的に減額され、年収207万円以下までは3万円~36万円の範囲まで縮小します。
もし配偶者特別控除を満額で受けたい場合は、配偶者年収は169万円以下に抑える必要があるでしょう。
(参考:国税庁『No.1195 配偶者特別控除』)
(参考:国税庁『源泉所得税の改正のあらまし 令和8年4月』)
年収178万円の壁
年収178万円の壁とは、被扶養者本人に所得税が課税されないラインのことです。
所得税は給与所得控除74万円+基礎控除104万円=178万円をあらかじめ差し引いた後の給与所得に対して一定の税率を乗じて計算されます。そのため、年収178万円以下であれば所得税は非課税になります。
なお、令和8年税制改正前は、基礎控除額は最大でも95万円で、かつ年収が206万円を超えると段階的に控除額が引き下げられる仕組みでした。しかし今回の税制改正により、令和8年分および令和9年分については、年収665万5,556円以下までは基礎控除額が一律104万円に引き上げられています。
令和10年分以後は従来と同様に年収206万円を超えると基礎控除額が段階的に減少し、さらに控除額の上限も最大99万円に引き下げられる予定です。
また、「119万円の壁」で説明したように、給与所得控除についても令和10年分からは見直しが行われるため、注意が必要です。
(参考:国税庁『源泉所得税の改正のあらまし 令和8年4月』)
年収207万円の壁
年収207万円の壁とは、配偶者特別控除の適用が完全に対象外となるラインです。
配偶者の年収が169万円超~207万円以下であれば、満額でなくても一定の控除を受けられますが、年収が207万円を超えると配偶者特別控除の一切を受けられなくなります。
わずかでも配偶者特別控除の適用を受けたい場合は、年収が207万円を超えないよう調整することが重要です。
(参考:国税庁『源泉所得税の改正のあらまし 令和8年4月』)
社会保険に関する年収の壁2つ

社会保険に関する年収の壁には、106万円の壁と130万円の壁の2つがあります。
ここでは、それぞれの年収の壁について詳しく解説します。
年収106万円の壁
年収106万円の壁とは、社会保険への加入義務が発生するラインのことです。パートやアルバイトで働く方は、以下の要件を全て満たす場合に社会保険の加入対象になります(2026年6月現在)。
- 勤め先の従業員数が51人以上(2027年9月まで)
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 学生ではない
- 所定内賃金が月額8.8万円(年収約106万円)以上
上記の要件を満たしている場合、原則として社会保険に加入しなければなりません。前述したように、これまで扶養の範囲内で働いていた場合は、保険料を自己負担することなく扶養者の社会保険に加入できていました。
しかし、自らが社会保険の加入対象になった場合は、保険料の負担が発生するため、その分だけ家計の負担が増えることになります。
また、106万円の壁については令和7年に成立した年金制度改正法により、3年以内に廃止される予定です。
もし廃止された場合、週の勤務が20時間以上かつ勤め先の規模が一定規模以上であれば、月額賃金や年収にかかわらず社会保険の加入対象となります。
これにより保険料負担が発生する点は変わりませんが、「社会保険に加入したくないから年収を106万円までに抑えよう」という制約はなくなり、より柔軟で多様な働き方が可能になると考えられます。ただし、税金面の壁や後述する年収130万円の壁は引き続き存在するため、どの程度働くかは全体のバランスを踏まえて検討することが必要です。
年収130万円の壁
年収130万円の壁とは、配偶者の社会保険上の扶養から外れるラインのことです。
2026年6月現在では、社会保険の加入条件はまだ緩和されていないため、勤め先の規模などによっては年収が106万円を超えても自身で社会保険に加入せず、配偶者の扶養に入ったままのケースも見られます。
しかし、年収130万円を超えた場合、原則として被扶養者の認定基準を満たさなくなります。日本では国民皆保険制度を導入しているため、扶養から外れた場合は、自ら国民年金や国民健康保険に加入しなければなりません。
その結果、保険料や年金の自己負担が発生し、家計の支出が増加することになります。そのため、扶養内で働き続けたい場合は、年収が130万円を超えないよう、勤務時間や賃金を調整することが重要です。
なお、一定の事情がある場合には、年収が130万円を超えても扶養認定が継続されるケースがあります。
例えば、事業主からの要請により労働時間が増加し、結果的に年収が130万円を超えてしまった場合などが該当します。
以前はこのようなケースでも、原則として扶養から外れてしまいましたが、現在は「年収の壁・支援強化パッケージ」の一環として、事業主がその旨を証明することで例外的に被扶養者認定が認められる仕組みが設けられています。
ただし、これはあくまで一時的・突発的な事情を鑑みた救済措置です。継続的に年収130万円以上の収入を得ている場合は、適用対象外となるため注意しましょう。
(参考:厚生労働省『パート・アルバイトで働く「130万円の壁」でお困りの皆さまへ』)
【ケース別】年収の壁の考え方

ここまで複数の年収の壁について解説してきましたが、働き方のニーズは人によって異なるため、「いくらまで稼ぐのが得か」を一概に判断することはできません。
そのため、年収の壁を考えるときは、自分がどのような働き方を希望するのかを基準にするのがポイントです。
ここでは代表的なケースごとに年収の壁の考え方を解説します。
社会保険の扶養内で働きたい場合
配偶者の扶養を維持しながら働きたい場合、勤め先の規模によって意識したい年収の基準が異なります。
勤め先の従業員数が51人以下の場合、年収が106万円を超えても社会保険への加入義務は発生しないため、扶養を外れる年収130万円までは、保険料負担を増やさずに働けるでしょう。
また、年収119万円を超えると個人住民税が発生しますが、住民税は「課税所得額×10%で求める所得割額+均等割額(約5,000円)」で計算されます。そのため、年収130万円の場合でも控除後の課税所得額約11万円に対して、税額は約1.6万円となり、「収入が増えたのに手取りが減る」といった逆転現象は通常起こりにくいといえます。
一方で、勤め先の従業員数が51人を超えている場合、条件を満たすと社会保険への加入義務が発生します。
そのため、社会保険の扶養にとどまりたい場合は、勤務条件も含めて年収を106万円以下に抑える必要があるでしょう。
扶養から外れて働きたい場合
「扶養から外れても構わないので、たくさん稼ぎたい」という場合は、年収150万円超を目指して働くのが理想です。
年収130万円のボーダーラインを少し超えた程度では、社会保険料の自己負担分を十分にカバーできず、結果として手取りが増えにくい、いわゆる働き損になる可能性があるためです。
ただし、年収が169万円を超えると配偶者特別控除が段階的に減額されるため、満額の控除を受けたい場合は169万円以下に収めることを意識する必要があります。
自ら社会保険に加入することにはメリットもある
配偶者の社会保険の扶養を外れる=保険料が増えて損をしやすいというイメージがありますが、自ら社会保険に加入することで得られるメリットもあります。
例えば、自身で社会保険に加入すると、業務外の病気やけがで働けなくなった場合などに、通算1年6カ月にわたって傷病手当金の支給を受けられます。
傷病手当金は社会保険の扶養では対象外となるため、もしものことがあった場合の保障を充実させられるでしょう。
同様に、出産のために会社を休んだ場合に支給される出産手当金を受け取れる点も、自身で社会保険に加入するメリットです。
さらに、将来受け取る年金が増える点も重要なメリットです。扶養内の場合は国民年金の第3号被保険者として扱われ、将来は国民年金のみを受給することになります。
一方、自ら社会保険に加入した場合は第2号被保険者になり、国民年金に加えて厚生年金も受給できます。
このように、自ら社会保険に加入することには複数のメリットがあるため、年収130万円の壁を考える際は、単なる手取り額だけでなく、万一の保障や将来の生活設計も含めて検討することが大切です。
まとめ

年収の壁は複数あり、それぞれの壁を超えると税金や社会保険に影響が及びます。年収いくらになるとどのような変化が起こるのかを正しく理解していないと、年収が増えたのに世帯全体の手取り額が減ってしまう逆転現象が発生し、結果的に損をすることになりかねません。
働き損を防ぐためには、現在の勤め先における社会保険の加入条件や労働時間などの条件に加え、扶養を外れたいかどうかなどのニーズに応じて、自分にぴったりの働き方を選択するようにしましょう。