インバウンド需要回復の背景と対応策!受け入れ体制を強化するには?
目次
訪日外国人の客足はコロナ禍前の水準に戻り、2024年のインバウンド需要はさらなる盛り上がりを見せると期待されています。訪日外国人客の受け入れ体制を強化するにはどうすべきか、知りたい方もいるのではないでしょうか。
「モノ消費」から「コト消費」への変化など、インバウンド需要の傾向も理解した上で対策を検討することが大切です。そこでこの記事では、インバウンド需要の動向や急回復の背景、需要を取り込むためのポイントについて紹介します。
インバウンド需要(インバウンド消費)とは?
インバウンド(Inbound)は「外から中に入ってくる」という意味を持つ言葉です。業界・分野によって使われ方や意味は異なりますが、観光業界においては外国人が国内に訪れる旅行(訪日旅行)を指します。
インバウンド需要とは、訪日外国人の日本国内における商品・サービスへの需要です。訪日外国人の国内における買い物・宿泊・飲食などの消費をインバウンド消費と呼び、文脈によってはインバウンド需要と区別なく使われることもあります。
インバウンド需要の最新動向とコロナ禍前との変化
観光庁や観光庁所轄の独立行政法人JNTO(日本政府観光局)は、インバウンド需要に関する調査結果を随時公表しています。2023年通年のインバウンド消費は過去最高を記録しましたが、コロナ禍前と傾向の違いも見られるため、訪日外国人客をスムーズに受け入れるにはニーズ変化を把握することが大切です。
ここでは観光庁発表の資料を基に、インバウンド需要の動向・変化を解説します。
2023年のインバウンド消費総額は過去最高
観光庁が発表した調査結果によると、2023年暦年の訪日外国人旅行消費額は5兆2,923億円で、コロナ禍前の2019年度と比べ9.9%増となりました。国籍・地域別のインバウンド消費額トップ5は以下の通りです。
1位:台湾7,786億円(構成比14.7%)
2位:中国7,599億円(同14.4%)
3位:韓国7,444億円(同14.1%)
4位:米国6,062億円(同11.5%)
5位:香港4,795億円(同9.1%)
コロナ禍前のインバウンド需要は「爆買い」によるところが大きく、2019年暦年のインバウンド消費額は中国が1兆7,704億円(構成比36.8%)を占めていました。ところが2023年は中国以外の国・地域のインバウンド消費が大きく伸び、消費総額は過去最高を記録しています。
(参考:『【訪日外国人消費動向調査】2023年暦年全国調査結果(速報)の概要|観光庁』)
単価(1人当たり旅行支出)が大きく上昇
インバウンド消費総額は「訪日外国人客数×1人当たり旅行支出」で算出されます。観光庁が発表した調査結果によると、2023年暦年の訪日外国人客数は、全体で2019年比21.4%減でした。
訪日外国人(一般客)1人当たり旅行支出は各国籍・地域で大きく伸び、全体平均は約21万2,000円(2019年比33.8%増)となっています。国籍・地域別の1人当たり旅行支出トップ5は以下の通りです。
1位:スペイン約34万2,000円
2位:オーストラリア約34万1,000円
3位:イタリア約33万6,000円
4位:英国約33万1,000円
5位:フランス約32万4,000円
マレーシア・フィリピン・シンガポールなど東南アジア諸国の1人当たり旅行支出も伸び率が高く、今後は中国以外の国・地域にも目を向けるとともに、訪日外国人客数という「量」より単価という「質」を重視したインバウンド対策が求められます。
(参考:『【訪日外国人消費動向調査】2023年暦年全国調査結果(速報)の概要|観光庁』)
「モノ消費」から「コト消費」への変化が見られる
インバウンド需要は費目別でも変化が見られます。観光庁が発表した調査結果によると、2019年暦年のインバウンド消費は買い物代(構成比34.7%)が最多でした。2023年暦年は宿泊費(構成比34.6%)が最も多く、2位の買い物代(構成比26.4%)を上回り、3位の飲食費(構成比22.6%)も微増となっています。
1人当たり旅行支出の内訳を見ると、宿泊費は英国・イタリア・フランス・オーストラリア・ドイツが13万円超と高く、飲食費も欧米豪が軒並み高い結果です。訪日外国人客はコロナ禍前に比べて買い物よりも体験を重視する傾向が強まっており、「モノ消費」より「コト消費」を重視したインバウンド対策が求められます。
インバウンド需要が急回復した背景
コロナ禍で観光業界は一気に冷え込みましたが、2022年10月ごろからV字回復を果たし、2024年初頭のインバウンド需要は好況です。なぜインバウンド需要は急回復し、コロナ禍前より拡大する勢いを見せているのでしょうか。今後の需要の変化を見通すためにも、急回復の背景を知ることは大切です。
新型コロナ水際対策の大幅緩和
インバウンド需要が急回復した直接的なきっかけは、2022年10月に新型コロナウイルスの水際対策が大幅緩和されたことです。主に以下のような点が緩和されたことで、制限はほぼコロナ禍前の状態に戻り、右肩上がりのインバウンド急回復が始まりました。
・1日当たり5万人をめどとしていた入国者総数の上限が撤廃
・訪日外国人の入国についてパッケージツアーに限定する措置が解除され、個人旅行による入国が解禁
・68の国・地域から観光などで訪れる短期滞在者のビザを免除する措置が再開
水際対策の大幅緩和前から続く円安進行
水際対策の大幅緩和後、訪日外国人客数が急回復するだけでなく、2023年暦年での1人当たり消費額はコロナ禍前の水準を上回りました。この大きな要因として考えられているのが、2022年3月ごろから始まった円安進行です。
訪日外国人客にとっては、自国通貨建てでの支出額は変わらなくても円建てでは大きく増え、コロナ禍前に比べて「日本での旅行が割安で楽しめるようになった」という状況があります。
ペントアップディマンドの顕在化
ペントアップディマンド(ペントアップ需要/繰越需要)もインバウンド需要回復の要因の1つと考えられます。ペントアップディマンドとは、特定の要因により抑えていた消費者の需要が、要因の解消により一気に回復することです。
日本は世界経済フォーラムが発表した2021年版観光魅力度ランキングで1位を獲得するなど、旅行先として高い人気を誇ります。日本各地で見られる外食の回復や宿泊・観光施設の稼働率上昇には、コロナ禍でおおよそ3年間もの間日本に旅行できなかったリピーター層などによる需要が、一気に顕在化したことも影響しているでしょう。
インバウンド需要を取り込むための3ステップ
訪日外国人客の間でコト消費の関心が高まっていることもあり、宿泊・観光・飲食などさまざまな業界でインバウンド需要の好況が期待されます。ここでは、自店舗でインバウンド需要を取り込むための基礎的な取り組みを、3ステップに分けて見ていきましょう。
1.目的・目標を明確化する
まず、訪日外国人客を対象にした認知拡大・売上アップ・リピーター獲得・ブランディングなど、何を目的とし、何を達成したいのかを明らかにすることが重要です。
そのためには、コロナ禍からの反省を踏まえた現状の課題や将来の展望やリスクを含めて徹底的に分析し検討する必要があります。また、商品の単純な購入から一連の体験を提供するコト消費へのシフトなど、インバウンド需要の傾向を考慮した目的・目標を設定しましょう。
2.ターゲット層を明確化する
目的と目標を設定した後、ターゲットとなる層を特定します。インバウンド市場の主な寄与者は引き続き近隣アジア諸国(台湾・中国・韓国・香港)や米国ですが、欧州や東南アジアからの訪問者も軽視できない増加を見せています。
訪日客のニーズは、母国の言語や文化、所得水準、年齢層により大きく異なるため、リソースの最適な配分を図る上で、ターゲット層を明確にすることが重要です。
3.ターゲット層向けの商品・サービスの開発
ターゲット層が定まったら、それに応じた商品やサービスの開発に着手します。これにより、インバウンド需要を効果的に収益化し、競合との差別化やブランド力向上を図ることができます。顧客満足度を高めることは、リピート購入や口コミの拡散を促すためにも極めて重要です。
コト消費への関心が高まっている現在、日本独自の伝統料理や文化を生かした体験重視の商品・サービスの提供が求められています。さらに、知的好奇心が旺盛な高付加価値の旅行者に向けては、詳細な情報提供や体験型アクティビティの導入も検討するとよいでしょう。
インバウンド需要を取り込む具体的な対策とポイント
多くの訪日外国人客が、今まさに日本を訪れようとしています。多言語で自店舗の情報を発信して集客施策を展開し、店内を多言語対応にして「言葉の壁」をなくしましょう。併せてWi-Fi環境やキャッシュレス決済などの受け入れ体制を整え、より選ばれやすい店舗作りをすることも大切です。
【関連記事:インバウンド対策とは?飲食店の売上アップを成功させる施策8選】
多言語で自店舗の情報を発信する
インバウンド需要を取り込むためには、多言語で情報発信をすることが必須です。訪日外国人客はWebサイトやSNSから情報収集する他、移動中にGoogleマップなどで店舗情報を検索します。このため以下のような対策を講じましょう。
・Webサイトや予約システムを多言語表示にする
・YouTube・Facebook・Instagramなどで自店舗の魅力を多言語でプロモーションする
・訪日外国人客向けの観光情報発信サービスに自店舗の情報を掲載する
・Googleビジネスプロフィールなどに記載する店舗情報やメニュー情報を多言語表示にする
【関連記事:飲食店のメニュー翻訳アプリ・サービス8選!翻訳のポイントも解説】
店内を多言語対応にする
訪日外国人客が実際に自店舗を訪れた際の「言葉の壁」をなくすことも必須です。少なくともターゲット層の使用言語について、店内で問題なく使用できる環境を整え、意思疎通が図れるようにしましょう。主な対策は以下の通りです。
・店内の掲示板・リーフレット・メニューなどを多言語表示にする
・タブレット式の多言語表示メニュー・オーダーシステムを導入する
・外国語で対応できるスタッフを確保する
・AI自動翻訳ツールなどの翻訳・通訳手段を用意する
リアルタイムなコミュニケーションに柔軟に対応するには、多数の言語を瞬時に通訳できるAI通訳機を導入するのがおすすめです。
満足度の高い受け入れ体制を整える
さらに顧客満足度を高めるための受け入れ体制を整えることも大切です。母国語で観光を楽しめる環境を整えることは基本的な対策ですが、訪日外国人客には他にもさまざまなニーズがあります。重要な受け入れ体制は以下のようなものです。
・気軽にインターネットを利用できるようにWi-Fi環境を整える
・訪日外国人客が利用しやすいキャッシュレス決済(クレジットカードやオンライン決済)に対応する
・日本食・着付けやゲーム・アニメの聖地など、日本ならではの体験を提供する
きめ細やかな多言語コミュニケーションを叶えるAI通訳機「ポケトーク」
訪日外国人客の接客時には、オーダーの取り違えなどが起こる懸念もあります。特に文化的背景などの説明を要する体験型アクティビティは、会話のパターンや語彙数も多くなりがちで、スタッフの語学力では対応できないこともあるでしょう。
多言語できめ細やかな対応をするなら、AI通訳機「ポケトーク」の導入がおすすめです。アジア圏や欧米の主要言語を含む合計84言語のコミュニケーションに対応でき、全世界からの訪日外国人客の接客に活用できます。
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まとめ
インバウンド需要はコロナ禍前の水準に回復し、2024年はさらに盛り上がりを見せると期待されています。1人当たり旅行支出の増加やコト消費の需要拡大などの変化もあり、旅行業界では訪日外国人客のニーズ変化を敏感に察知した対策が必須といえる状況です。
近隣アジア諸国・地域や米国だけでなく、東南アジア諸国や欧州・オーストラリアなどからのインバウンド需要も取りこぼさないように、情報発信や店内の多言語対応を強化しましょう。インバウンド需要を取り込むための環境整備をお求めなら、スムーズな多言語コミュニケーションをサポートできるイッツコムにご相談ください。