人手不足倒産とは?原因や問題解決の方法を紹介
企業が倒産に追い込まれる理由は複数ありますが、中でも近年話題を集めているのが人手不足倒産です。その名の通り、人手不足を原因とした倒産のことで、特に飲食店やホテルといったサービス業で起こりやすい現象として知られています。ただし、人手不足倒産はどの産業・企業でも起こり得る可能性があるため、早い段階で原因を突き止め、然るべき対策を講じることが大切です。
この記事では人手不足倒産の基礎知識と、主な種類と発生原因、人手不足倒産を防止する対策について解説します。
人手不足倒産とは?
近年増えている人手不足倒産とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。基本的な知識と、人手不足倒産が特に起こりやすい業界について解説します。
人手不足倒産の意味
人手不足倒産とは、事業を継続していく上で必要な人材を確保できずに倒産することです。ヒト・モノ・カネは経営の三大資源とされており、いずれか一つでも不足すると経営はたちまち行き詰まるといわれています。
人手不足倒産は三大資源のうちヒトが不足することによって起こる問題で、2013年ごろから取りざたされるようになりました。厚生労働省が発表した資料によると、人手不足関連倒産の件数は2013年以降、右肩上がりに増加しており、2022年には485件と過去最多を記録しています。
(参考:厚生労働省『人口減少社会への対応と人手不足の下での企業の人材確保に向けて~人材不足解消のカギは仕事と子育ての両立支援!~』)
人手不足倒産が起こりやすい業界
人手不足倒産はどの産業・業界でも起こり得るもので、特に多いといわれているのがサービス業、建設業、運輸業です。サービス業の中でも、飲食店やホテル業、スーパーなどの小売業は各種産業の中でも特に賃金水準が低い、長時間労働が常態化しやすく、従業員一人当たりの負担が大きいといった問題から早期離職者が多く、人手不足倒産のリスクが高いといわれています。
一方の建設業は、重労働かつ賃金水準が低いという問題に加え、近年は原材料高騰に伴うコスト高が人材の確保の難易度を上げる結果でした。運輸業に関しては、トラックドライバーの高齢化や、EC産業の拡大に伴う需要増などが大きな要因とされています。
人手不足倒産の種類
人手不足倒産は、人手不足になった原因によって大きく4つの種類に分類されます。
ここでは主な種類とそれぞれの特徴について詳しく解説します。
求人難型
求人難型とは、求人募集を行っても十分に人が集まらず、人手不足を解消できずに倒産するタイプです。
現代日本は少子高齢化が加速化しており、経済を支える生産年齢人口(15~64歳の人口)は年々減少傾向にあります。働き手が少なくなっている今、就職市場や転職市場も売り手優位となり、募集をかけても応募がないケースは多いです。特に、他の業界に比べて賃金が安い、重労働といった問題を抱えている産業は敬遠されがちで、人手を確保するのに長い時間を要することもあります。
従業員退職型
従業員退職型とは、既存の従業員の退職によって人手が不足し、事業経営が立ち行かなくなるパターンのことです。事前に予想できる定年退職だけでなく、何らかの理由で従業員が離職すると、新たな人材を確保できるまで、人手が足りない状態で事業を継続しなければなりません。特にもともと人材が少ない中小企業の場合、一人いなくなっただけで業務がうまく回らなくなるケースは多く、従業員退職型のリスクはかなり高いといわれています。
このタイプは、離職した人材の穴埋めを試みたものの、人が集まらなかったという事例も多いため、求人難型とセットで発生するパターンでもあります。
後継者難型
後継者難型とは、現在の経営層に代わる後継者が見つからず、事業経営が困難になるパターンです。
経済産業省の資料によると、2023年時点の経営者年齢の平均は60.5歳と過去最高を更新している一方、後継者不在率は60代経営者で38%、70代で30%、80代で23%にも及んでいます。経営そのものに大きな問題がなかったとしても、事業を引き継ぐ後継者がいない場合、経営層の死亡や引退がそのまま倒産につながるケースもあるようです。
(参考:経済産業省『事業承継・M&Aに関する現状分析と今後の取組の方向性について』)
人件費高騰型
人件費高騰型とは、人件費の圧迫によって経営難に陥り、倒産するケースのことです。最低賃金の見直しや、物価高の影響に伴う賃上げ要求などによって人件費が高騰する一方、収益が思うように上がらない場合、人件費の占める割合が大きくなって経営を圧迫する原因となります。
賃上げの要求に対応できないと、早期離職や転職を招いて従業員退職型に陥ったり、条件が悪くて人がなかなか集まらず求人難型の倒産に追い込まれたりするケースもあります。
人手不足倒産が発生する主な原因
人手不足倒産のリスクを解消するには、まず原因を特定し、それを解決するための対策を講じることが大切です。
ここでは人手不足倒産が発生する主な原因を5つご紹介します。
少子高齢化により労働力が不足している
日本は少子高齢化が加速化しており、15~64歳の生産年齢人口は1995年をピークに減少の一途をたどっています。2023年の総人口における労働生産人口の割合は59.5%で、今後その割合はますます大きくなると予想されています。
働き手の人口そのものが不足すると、採用競争が激化し、「募集をかけたのに誰も応募してこない」という求人難型倒産に陥りやすくなります。特に中小企業は大手企業に比べて好条件を出しにくく、少子高齢化の影響を大きく受けやすいようです。
(参考:国土交通省『国土交通白書 2024 第1節 本格化する少子高齢化・人口減少における課題』)
労働環境が悪化している
求人難型や従業員退職型に多い理由として、労働環境の悪化が挙げられます。労働時間が長い、仕事がきつい、休日出勤が多いなど、労働環境に何らかの問題を抱えていると、人が集まらなかったり、早期離職や転職が相次いだりする原因となります。特に近年は転職市場の活発化や少子高齢化に伴う売り手市場により、求職者の職場定着率は以前よりも下降傾向です。
従業員の早期離職や転職、求人難が目立つ場合は、労働環境が悪化している可能性があるため、早急な改善が必要です。
自社の魅力をうまくアピールできていない
売り手市場の現代において、自社にマッチする人材を確保するためには、求職者に対して自社の魅力を上手にアピールしなければなりません。自社ではどのような事業を行っているのか、同業他社と比較してどのような強みがあるのか、などを明確かつ魅力的に発信しなければ、求職者の興味・感心を引けず、いつまで経っても応募が来ない可能性があります。
このようなケースでは、自社の魅力や強みを把握・可視化できていない場合が多いため、市場や顧客を分析したり、競合他社と比較したりして自社の強みを洗い出すところから始めましょう。
定着率を高める取り組みが不足している
終身雇用制度の崩壊や働き方の多様化が進んでいる現代では、人材の流動化が加速しており、企業努力を怠ると従業員はすぐに離職・転職する傾向にあります。例えば、入社後のフォローが足りない、正当な評価を受けられない、人員配置がミスマッチなどの問題をそのまま放置していると、従業員の定着率が下がり、人手不足に陥るリスクが高まります。
これらの問題を解決するには、現場の声に耳をしっかり傾けた上で、入社後のフォローや教育体制を整える、適切な評価制度を導入するなど、根本原因を解消するような工夫を取り入れることが大切です。
連鎖的に退職者が増えることもある
従業員が退職や転職すると、新たな人材を確保するまで、その人が担当していた業務を残った人材でカバーしなければなりません。すると、従業員一人当たりの負担が大きくなり、現場から不満の声が噴出しやすくなります。
人手をすぐに確保できれば良いですが、人材の穴埋めが遅れた場合、現状に耐えかねた従業員が一人、また一人と続けざまに辞めていく退職連鎖が発生する原因となります。特に中小企業はもともと従業員一人当たりの責任や負担が大きい傾向にあるため、退職者が出た場合にどう対応するべきか、あらかじめ対策案を講じておく必要があるでしょう。
人手不足倒産を防止するための対策
人手不足倒産を未然に防ぐためには、自社が抱える問題や課題を正確に把握した上で、原因に応じた対策を行う必要があります。対策が遅れると人手不足倒産に陥るリスクが高くなるため、現時点で人手不足を感じている場合はもちろん、そうでない場合も早めに対策を考えておくのがおすすめです。
ここでは人手不足倒産を防止するための対策を4つご紹介します。
職場環境を改善する
長時間労働の常態化や時代にそぐわない評価制度の導入など、職場環境に何らかの問題を抱えている場合は、それらを改善するための施策を取り入れましょう。具体的には、業務効率化に取り組んで長時間労働を是正する、従業員の業績や意欲、会社への貢献度などを評価し、待遇やキャリアアップに反映させる人事評価制度を導入するなどです。
これらの取り組みは既存の従業員の定着率を高めるとともに、求職者へのアピール材料にもなるため、求人難型や従業員退職型の防止につながります。
採用計画を見直す
募集をかけているのになかなか人が集まらないときは、採用計画に問題がある可能性があります。企業と応募者の間にミスマッチが生じた場合、採用難になるだけでなく、入社後の早期離職を招く原因となるため、これまでの募集要件の見直しを図ってみましょう。
募集要件の見直しを行う際は、自社がどのような人材を求めているのかを明確にした上で、募集要項に自社の強みや魅力をしっかり明記することが大切です。
研修制度を充実させる
研修制度が整っていない会社は新入社員にとって働きにくく、早期離職を招く要因となります。少しでも早く仕事や環境に慣れてもらえるよう、新入社員向けのセミナーや講習を開いたり、資格取得のための学習支援制度を設けたりするなどの工夫を取り入れてみましょう。研修制度が充実していれば、求人要項で「未経験でも安心」とアピールできるため、一石二鳥です。
DX化を推進する
DXとは、IT技術などを取り入れることでビジネスモデルを変革したり、業務プロセスを見直して競争上の優位性を確立したりすることです。
便利なシステムやサービスの導入などによってDX化を推進すれば、従来アナログで行っていた作業を自動化できるだけでなく、業務フローを改善することも可能です。また、DX化によって業務効率化が進めば、長時間労働の是正や従業員の負担減につながり、定着率アップを期待できるでしょう。
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まとめ
少子高齢化や人件費の高騰、人材の流動化などが進んでいる現代日本では、人手不足で倒産する企業もめずらしくありません。人手不足倒産の原因は複数あるため、なぜ自社の人手不足が解消されないのか、その理由を洗い出した上で、早い段階で適切に対策しましょう。
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