火災で人は死なない
火災で亡くなる方は多いのですが、死因の4割は一酸化炭素中毒です。煙は目で見ることができますが、一酸化炭素は目で見ることができません。火災の時、一酸化炭素が体の中に入ると、酸素を運ぶヘモグロビンとくっついてしまい、ヘモグロビンが酸素を手放してしまいます。それによって、酸素が欠乏する状態となり突然倒れてしまうことになります。
一酸化炭素は、通常時は酸素と同じ重さなので低いところにも存在しますが、火災が発生している時は、熱によって上の方に集まります。ですから、火災発生時の避難をする際にはハンカチで口を覆いますが、なるべく体を低くして、煙がなくても一酸化炭素があるということに注意して、なるべく自衛隊の匍匐前進のような姿勢で避難をしていただくと安全に避難できると思います。火災が発生した時には「煙が上がっていく方へは逃げない」また「ドアをなるべく閉めながら避難をしていく」ことによって少しでも火災の延焼を遅らせながら逃げることが、重要なことだと思います。
揚げ物油は危険
揚げ物油というのは、どこのお家でも唐揚げや天ぷらを揚げた時に出ると思いますが、この油をずっと加熱して放置していると360℃程度で自然にぽっと酸素と反応して火が付いてしまいます。最近の新しいコンロには、自動的に消火できる装置もついていますが、使用している鍋の種類によってはセンサーがぴったりくっつかないこともありますし、センサーの故障などによってIHキッチンのお家でも揚げ物油での火災が発生しています。
IHの場合は、IH用の鍋を使用していただければいいのですが、IHに対応していない鍋や、IHにも使用できますが鍋の真ん中に熱が広がりやすいおへそのようなものがついている鍋があります。このような鍋を使用した場合、コンロ中央のバネで上がるセンサーが接着せず、温度が高くなっていることが分からなくなってしまいます。センサーが機能せずに高温のまま放置すると自然発火してしまい非常に危険です。
揚げ物を調理している時にインターホンが鳴り、訪問客とついつい話し込んでしまい、キッチンに戻るとすでに火がついているという火事が本当に多いです。揚げ物油については、「放置すると火事になる」ということは広く世の中に知れ渡っているため、これが原因で発生した火事はその人の不注意であると考えられてしまいます。過去の判例では重過失と判断され、保険が下りなくなってしまうこともありました。
通常は火事が起きると水をかけて火を消すというのが常識ですが、揚げ物油に限っては、絶対に水を入れてはいけません。よくデモンストレーションでも行いますが、大さじ1杯のお水をいれただけで爆発してしまいます。ですから、揚げ物油の火災には消火器、または専用の消化用具を設置して、いざという時のために備えていただきたいと思います。