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防災インタビューVol.86

自分の健康は自分で守る~インフルエンザの傾向と医療機関受診のポイント~

放送月:2010年3月
公開月:2013年6月

大地 まさ代 氏

江戸川区健康部保健予防課長

今回の新型インフルエンザの傾向

昨年末、都内では大体10月の一番最後の週から11月の第1週のあたりが、新型インフルエンザ第一波のピークを迎えていました。その時期には、江戸川区内でも67施設ぐらい、集団発生による学級閉鎖がありました。その時に比べると、現在はかなり終息に向かっていると思います。

今回、小学校の学級閉鎖、学校閉鎖が多かったのですが、やはり学校の中では友達同士が非常に濃厚に接触しているので、そういう意味では非常に感染は広がりやすかったのだと思います。入院している方の傾向で言いますと、5歳から9歳が一番多く、1月22日ごろまでのデータでは、入院している人の約4割が5歳から9歳で、10歳未満で約7割を占めていましたので、非常に低学年のお子さんが多かったと言えます。免疫がなかったのと、体力的に弱いというのも十分考えられると思いますが、入院された人のほとんどが回復して退院しました。しかし逆に、慢性の呼吸器疾患や糖尿病などの基礎疾患を持っていて20歳以上という方が、非常に重症化しやすかったという傾向がみられています。

新型インフルエンザワクチンの副作用について

今回の新型インフルエンザのワクチンは、全く新しいワクチンですが、国内産のワクチンの場合には季節性のワクチンと同じように鶏の卵から製造しますし、皮下注射ということで、接種の方法も季節性のインフルエンザと全く同じです。そういう意味では効果や安全性については、これまでのインフルエンザのワクチンと同じではないかと考えられています。実際に12月25日までに全国で行った今回の新型インフルエンザのワクチンの副反応を解析していますが、安全性については、国内産について言えば「季節性のインフルエンザとほぼ同じではないか」という見解が得られているところです。ただ一方で、もともと非常に重症な基礎疾患を持っている方がワクチンを接種して、その後に亡くなったという事例も報告されています。たまたま、もともとあった基礎疾患が重症化して亡くなったということと重なったとも考えられて、今の段階ではワクチンとの明らかな因果関係が認められたということではありませんが、いずれにしても100%安全ということは言えないと思います。

輸入ワクチンについては、カナダのワクチンに大きな副反応が出た、ということで問題になったと思いますが、日本の調査団をカナダに派遣した際の調査結果を見ますと、特に問題はないという見解が得られています。今回、日本でも2社から海外産のワクチンが、特例承認という形をとって輸入が決定しました。通常は薬事法に基づいた輸入の承認を得ることが必要になってくるのですが、そういう手順に従ってやりますと非常に時間がかかるので、今回は緊急に承認を得るという特例承認という方法がとられました。また輸入ワクチンについては、国産のワクチンと違って筋肉注射であること、あとは鶏の卵から製造するのではなくて、細胞培養という動物の細胞で培養する方法がとられるということ、ワクチンの効果を増強させるために免疫補助剤というものが使われているということがありまして、やはり国内産のワクチンとは製造方法などという点で違った形になっています。当然、臨床検査もしながらワクチンを進める形になるのですが、国産ワクチンに比べたら、打ったところの腫れが長引く可能性があるとか、そういったことは危惧されているところですので、実際に打つ方については十分に主治医の先生と相談をして、ワクチンを接種するかどうかを検討されたほうがいいと思います。

今後の課題

現在はインフルエンザは全国的にも患者数は減少し、ピークを過ぎ、終息しつつあると思われています。しかし普段の年の季節性インフルエンザは、1月から2月の真冬の時期にピークを迎えます。仮に現在予測通りいったん終息したとしても、第2波が訪れる可能性が十分に考えられます。これまでの累積罹患率が5~8%程度と言われていますので、第2波が同程度だとすると、累積の罹患率は18%ぐらいになるということも予想されます。いずれにしても予想は簡単ではないのですが、これまで対応できているとすれば、第2波に対しても乗り越えられるのではないかと考えています。

しかし問題は、強毒型のインフルエンザが発生しとき時です。この場合の推定罹患率は25%、医療機関の受診者数は1300人から2500万人、死亡者は17万人から64万人です。国は近々強毒型の新型インフルエンザ発生時の業務継続計画案を発表する予定です。

今回の新型インフルエンザが確認された時も、私たちはまずこの業務継続計画のことを考えました。仮に罹患率が25%であったとすると、1つの流行の波は2カ月続き、その後の流行の波は2、3回繰り返されます。そして職員本人の罹患や家族の看病などによって、職員の40%程度が欠勤するという事態も考えなければいけません。特に対応の中心となる保健予防課の職員は26人、到底太刀打ちができません。そこでまず、健康部内での初動チームの班編成を行いました。健康部から70名を選出して、初動対応を図るチーム編成を行いました。各班の役割は、本部、連絡調整、装備担当、疫学調査、検体搬送、防疫対応、患者移送の7つ。本部は管理職によるいわゆる指令塔です。その他は1つの役割に対して最低2班、頻繁に出動が予想される役割に対しては8班編成しました。そして新型インフルエンザ以外の業務をどうするかについても検討を始めました。

今回の対応を教訓に、さらなる準備と訓練を積み重ねることが重要と考えています。行政だけでなく、関係機関との連携、地域の力が必要です。今回、国などからの情報が日々発信される状況の中で、関係機関にいかに迅速に情報を伝達して、また医療機関をはじめとする関係機関からの情報をいかに迅速に吸い上げ、共有化するかが最も重要な課題であると実感しています。強毒型インフルエンザに備え、私たちはさらなるネットワークを構築したいと考えています。私たち行政スタッフは感染拡大を可能な限り抑制し、健康被害を最小限にとどめること、社会、経済を破綻に至らせないことを目標に対策を進めています。

地域の皆さんは「自分の健康は自分で守る」という大前提で、冷静な判断の下での行動を期待したいと思います。そのためには日頃から家族との連絡方法を確認しておくこと、かかりつけ医を持つこと、正しい情報を入手する手段を習得すること、あらゆる感染症から身を守る方法を習得して、日常の生活に取り入れることが大切だと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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