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防災インタビューVol.40

災害と共存しながらも安心して暮らせる幸せな社会へ

放送月:2009年4月
公開月:2009年10月

佐藤 唯行 氏

NPO法人シュアティマネージメント協会代表

NPO法人SUMAのHP:http://www.suma-j.com/index.php
佐藤のブログ(いきつなぐ活動報告):http://blog.suma-j.com/

いきつなぐ」と災害

NPO法人シュアティ・マネジメント協会

「いきつなぐ」と災害は、息をつなげていきたい、親からつながった「生き」を子どもの世代までつなげていきたい、という思いが、災害で命を失わないという根本になるのではないかと思いました。そして災害のことを考える際に、例えば日本国土がどうだとか、首都直下が起きたら東京はどうなってしまうのだとか、そういうことではなく、自分の命、親から与えられた命、子どもに与えた命をどうやってつないでいけばよいのか、その視点で考えてみようと思いました。

そういう視点で考え、理念で「いきつなぎたい」ということをテーマにし少しずつ活動していくと、いろいろな仲間と出会うのです。今までは、防災マニアや地震工学の先生、津波の先生、洪水の先生とか自然災害の先生、いろいろな先生と会ってきましたが、「いきつなぎたい」というふうに話をしてみると、純粋に子どものことを考えるお父さん、お母さん、孫のことを考えるおじいちゃん、おばあちゃんにと、いろいろな人と出会うようになりました。その中で、例えば「じゃあ、いきつなぎたいというのをもう少し分かりやすくするには、どういった言葉を使ったらいいのだろう」と考えてくれる人。「いきつなぎたいというものを子どもにもわかってもらうために、どんな絵を描いていったらいいのだろう」と考えてくれる人に出会いました。それは防災の専門家ではなくて、一般市民の感情にすごく近いところで表現してくれる人たちが集まってくださったのです。

自称防災屋と言いながら、今まで具体的に災害に対するきちんとした抜本的な提案もできなかったし、自分でビジネスを起こすこともできなかったので、災害に対してすごく無力だと感じていました。しかし一緒に考える人たちが集まってくださり、いろいろな感性を持っている市民の感情に近い人たちが、「いきつなぎたいっていうことが大切だね」と言ってくれることが、自分にとても力を与えてくれました。とても一人では、このような活動は続けられないのですが、シンプルに「いきつなぎたい―自分の大切な人を守りたい」というところからスタートしたら、「それはそうだよね」とおっしゃってくださり、賛同してくださる人がどんどん増えてきました。

そして、この「いきつなぐ」という言葉を象徴にし、NPO法人シュアティ・マネジメント協会、略称SUMA(シューマ)ができました。私たちは、人々が災害に対して「他人ごと」だった気持ちを、逆に「自分の大切な人を守りたい」「いきつなぎたい」というような気持ち、すなわち「自分ごと」に変えていく、そこから大きな社会循環の輪をつくっていこうという活動を、いろいろな視点、いろいろな感性で取り組んでいる団体として始まったところです。

不幸せな循環から幸せな循環へ

先ほどの「いきつなぐ」の話の中で、繰り返される災害、それを不幸せな循環と言いました。過去の災害をしっかり学習し、何らかの対策を取っていれば救われたかもしれない命が、結局対策を取らずにいたために、同じように人々が傷つき、死んでいってしまっている、それは不幸せな循環です。それを何とかして、あるきっかけで幸せな循環へと少しずつ変えていけないものかと思っています。そしてそのきっかけをつくるのがNPO法人SUMAだと思ってください。

防災に取り組んでいて疑問に思っていることがあります。人類は有史以前から災害に遭遇して、生命や財産や文明、あるいは社会そのものを失い続けてきました。イタリアのポンペイでは、火山の爆発によって一瞬にして灰になってしまいました。これも自然災害です。ポンペイとは限らず、火山がある所で生活をしていたら、あのようなことが起きてしまうことは現在ではよくわかっているにも関わらず、やはりそこに住んでしまうということが起きます。どうしてなのでしょう。それは、きっと災害が自分ごとのように思えないから、あるいは、その災害をわかったところで対策の施しようがないから、自分一人で何かしたところで何も変わらないと思うからです。要は「洪水や地震が来るのに自分一人で何か対策を行っても変わらない」と思ってしまう訳なのです。または、世の中の雰囲気が全体的にあきらめムードで、「もう来たらしょうがないよね」と思ってしまうことにもあります。

現在、ハザードマップや危険度マップが出されていますが、例えば江戸川区のハザードマップを見ると、全体的にここは海抜マイナス4.8m地域なので、「地震が来て堤防が崩れた場合、全水没します」となっています。このことを住民に言われても、どうしようもなく、漠然として、どう対応していってよいのかわからないです。この様な漠然とした大きな相手に対して、一個人というのは無力です。それは、私も災害でいろいろな研究活動や調査、ボランティア活動を行ってきましたので、同様に無力感を感じていました。

ではどうしたらよいのか?
私は、多くの人々にとって他人ごとであった災害を自分ごとに変化させるには、客観を主観になぎ倒す、そのようなことが必要なのではないかと思っています。

それは新しい表現、言葉が必要なのではないかと。今まで災害を防ぐ、対策を表す言葉としては、防災、減災、ディザスターミティゲーション等がありました。それはとても堅苦しく、子どもからすると怪獣みたいな言葉、名前に聞こえます。そう感じるのは、防災やディザスターが言葉に「ばびぶべぼ」が付くからかもしれませんが、何かポジティブな言葉ではありません。それから最近、安全・安心という言葉が使われますが、それもすごく静的で、前向きな行動に移らないような気がします。

そこで私は、新しい概念を表す言葉、「シュアティ」というものを提案し、不幸せな循環から幸せな循環へと少しずつ変わることを願って、災害に対して新しいアプローチを試み、NPO法人SUMAで活動しています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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