耐震改修に対する助成など
当然、個人の財産を自分たちの安全のために直そうということですので、直す費用を全部税金で賄うということは、なかなか他の皆さんにご理解いただけないことだと思います。しかし、ある程度、15%ぐらいの部分は国や地方公共団体が一緒になって応援をしましょうという制度はあります。さらに最近では地域住宅交付金、まちづくり交付金という形で、自治体が15%を30%とか50%に上げてもいいというような制度も出てきました。
ぜひそういう新しい制度を使って、特に高齢者やお金のない方もやっていただきたいと思います。また一方で、お金持ちの方がやりたいというときに、補助金という形で応援するのでは理解し難いところもありますので、そこの部分については税金を軽減するような制度も新しくつくっています。例えば、耐震改修をした方については、使った費用の1割、20万円を上限で申請してもらえば税金が安くなるというような制度を、ちょうど今年から始めておりますので、ぜひそういうものを使っていただきたいと思っています。
耐震改修に踏み切るための仕組みづくり
テレビなどで耐震改修について紹介をされると、補強したいと思う住民の方が増えますが、安くて早くて面倒がない、例えば住んだまま確実にやってもらいたいと思ったときに、誰に相談したらいいのかが分からないというのが一番の問題点になってきます。耐震診断や補強の方法というのは、結構技術的な部分がありますので、業者から説明されても、それが本当に正しいことを言っているのかどうかが分からない、費用対効果が適切かどうか分からないということがあります。また残念なことにリフォーム詐欺といったものがあって、いろいろ言ってくるけれど、やはり怖いと思われることがあるようです。国が制度をつくるということではなく、地元の現場の方がいかに補強というものに取り組みやすくするかという仕組みづくりをどのようにつくったらいいかということで今、頭を痛めているところです。まずは住民が気軽に相談をできたり、改修の方法などをチェックする体制を地域につくることが重要だと思っていますので、ぜひ地方自治体、特に区市町村がその体制づくりに腰を上げていただきたいとお願いをしているところです。
自治体、市町村レベルで耐震改修に積極的に取り組んでいいただきたいと思ってはいますが、ただ役所に相談窓口を置いただけで、あまり頻繁に相談に応じられない、というようなことがあると困ります。それを解消するには、地元の建築士などの専門家や地元の住民も入って「協議会」をつくって、それぞれが助け合い、業者を紹介しあったり、あるいは改修工事がきちんとできているかどうかをチェックするような仕組みづくりをしてほしいと思っています。横浜市のように非常に先進的に取り組まれている自治体もありますが、なかなか地元の方々がやるという仕組みにはなっていないので、きちんとした仕組みづくりが大切です。ぜひそういうところを、運動として掘り起こしていきたいと思っています。
耐震改修促進法における国の目標
耐震改修促進法を改正して、既に国は目標を作って公表していますし、それに基づいて国の官庁施設がどれくらい耐震性があるかということも公表しています。国土交通省のホームページを見ていただくと、どの建物でどれくらいの耐震性があるか、耐震性があまりないところについては、いつごろまでに直す必要がある、いつごろ工事を予定している、ということまで公表しています。一部静岡県も同じようなことをやっていますが、自治体も耐震診断をして、情報開示をすることが必要なことではないかと思います。例えば学校の耐震改修は非常に遅れていますので、一刻も早く進めなければいけないと思います。
現在、国がやっている耐震改修促進計画と同じような形で都道府県、あるいは市町村も取り組んでいただきたいと思っています。2006年10月現在で、全ての都道府県が耐震改修促進計画を作ることになっていますが、市町村になりますと、2006年度中に計画を作ると予定しているのは100市町村のみで、2007年度中には何とかやりたいと答えているところが約450、2008年度以降になるが計画を作ると答えているところが約70あります。このように見ていくと、全く計画を作る予定がないという市町村がまだ1200ばかりありますので、これは非常に残念です。住宅だけでなく学校、病院、消防署などの官庁舎も皆対象になりますので、地域の問題として問題点を明らかにして、どういう形で取り組むかを地域で議論をして決めて、取り組んでいただきたいと思っています。