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防災インタビューVol.2

地震から命を守るために~21世紀の大地震に備えて~

放送月:2004年3月
公開月:2006年9月

鍵屋 一 氏

板橋区役所福祉事務所長(元防災課長)

地震から命を守るための3つの対策 -家の中の安全化、地震の予知、住宅の耐震補強-

南関東地方は、1923年の関東大震災以来、80年以上1度も大地震がありません。ところが、ちょっとふり返ってみると、17世紀には7回、18世紀には2回、19世紀には5回、それぞれ大きな地震があって、大きな被害が出ています。これを考えると、20世紀には1回しかなかったので、21世紀はかなりの数の地震が起きそうです。その地震から命を守るために、何をすればいいかということを、お話しさせていただきたいと思います。

地震から命を守るために、まず私たちができることは3つあります。1つ目は、家具などを倒れないようにして、部屋の中を安全にすること。2つ目は、地震がいつ来るかを予知すること。そして、3つ目は耐震化をして家を強くするということです。しかし、実はこの3つとも、あまり真剣に取り組まれていないのです。

1. 家の中は安全ですか?

まずは、家の中の安全化についてですが、皆さんの家には、1高さのある家具は震度6以上の地震で簡単に倒れる(震災文庫より 和田幹司氏撮影)メートル以上の高さのあるタンスや食器棚や本棚はありませんか。それはどうなっていますでしょうか。これらの家具は、震度6以上の地震の場合、まず倒れると思ってください。しかし、これを倒さない方法がいくつかあります。1番簡単な方法は、重いものを下に置いて、軽い物を上に置くということです。できればベニヤ板、あるいは新聞紙でもいいので、家具の手前側に挟んで、壁に立てかけるような形にします。些細なことですが実際に板橋区の起震車で実験してみたところ、本当に劇的な効果がありました。これは1円もお金がかからない話なので、必ずすぐに実行してください。もちろん1番良いのは、転倒防止の金具をしっかりとしたところに打ち付けて、家具を倒れないようにするということです。それはちょっと手間もかかりますし、コツもいりますので、まずはこのような方法で家具を倒さない対策をすぐにやっておいてください。

次に怖いのはテレビです。テレビが飛んできて頭の上に落ちてきて亡くなったという方も、阪神淡路大震災のときには結構いらっしゃったという話を聞いています。テレビは四隅をガムテープで留めるか、ガムテープをくるっとまとめて、テレビとテレビ台をくっつけてしまう、これをやるだけで相当有効です。

次に地震の時に怖いのは窓ガラスです。できれば寝るときは必ず厚いカーテンを引いておく、これだけでもかなり違います。防犯性を兼ねて、フィルムを貼ったり、中にフィルムが入っているガラスを入れるというような方法も、最近はありますので、検討してみるのもよいと思います。

2. 地震の予知はできますか?

地震から命を守る2番目の方策は、地震の予知であると言われています。いつ地震がくるかわかれば、安全な所にいればいいのですから。

地震を予知するということは、究極の夢と日本では言われていますが、実は江戸時代に地震を予知したお侍さんがいます。1703年、江戸に元禄地震という非常に大きい地震がありました。関東大震災と同じくらいの地震です。一説には、3万人の方が亡くなられたと言われています。ところが、天野弥五右衛門長重という武士は、この地震を予測して、自分の家を大きなくぎ300本で耐震補強させたそうです。ほどなく大きい地震が確かにやってきて、多くの人が亡くなって、建物が倒れましたが、長重の屋敷だけは無事でした。周りの人がびっくりして、「どうして地震がくるとわかったんですか」と聞くと、長重は、「大地震がくるときは、必ず天が近くに見える、空が近くに見えるんだよ」と答えたという話があり、これは江戸時代の古文書の中に書かれています。

震災文庫より 和田幹司氏撮影

現在の地震予知は、もう少し物理学的、科学的に考えられるようになってきました。地震がなぜ起こるかというと、大地の奥で、大きな岩石に圧力がかかって割れ、それが急速にずれて起こるわけですが、岩石は1ヶ月とか2週間とか、長い間少しづつ割れ続けています。そのときに電磁波などが発生します。ネズミ、猫、犬などの動物が、それを敏感に感じ取って、異常な行動をとるということは、昔から知られています。おそらくそれは、この電磁波を感じ取っているのではないでしょうか。よく、ナマズが騒ぐという話もあります。そういう動物の行動が地震の予知につながるのではないかということから、予知の研究をされている方もたくさんいらっしゃいます。また、変な臭いがしたとか、普通ならこれから下がらなければいけないのに、気温が急に上がった、あるいは地鳴りがあった、光が放たれた、そういった自然現象、異常な自然現象が地震の前に起こるとも言われています。これらを宏観現象と言いますが、そういう現象の研究で有名なのが、東海大学地震予知研究センターです。国内の研究者や海外の研究者と連携して、普段から観測をしています。異常な電磁波が出た時は、どの方向からどのくらいの強さで出ているか、研究者間で意見交換をして、将来の地震予知につなげるための研究をしています。

地震については、なかなか予知は難しいということで、今は、予知から実際の観測のほうに移ってきていますが、日本は地震大国であり、たくさんの地震があります。すぐに結果が出るので、予知研究するには絶好の舞台です。もし日本で地震について、科学的な予知の方法が確立されたら、世界的な貢献になるのではないかと思っています。ところがこの地震予知には、なかなか予算が割かれません。本当に数少ない研究者の方や民間の方が、手弁当でデータを取り続けて、意見交換をしながら進めているというのが実情です。地震予知に、もう少し大勢の研究者が参加して、なおかつ国の予算がついて、きちんとした研究がなされることが、私は非常に重要なことだと思っています。

3. 住宅の耐震補強は万全ですか?

現在、全国には4400万棟もの住宅がありますが、そのうち1150万棟が、大きい地震があるとつぶれる可能性があると言われています。家がつぶれるから、亡くなったり怪我をしたりする人が増え、つぶれた家から火が出るから、消せなくて大きな災害になっていくわけです。家がつぶれなければ、地震というのはほとんど恐れるに足りないとも言われています。従って、耐震補強というのは非常に重要なのですが、これが全然進んでいません。

日本の国レベルで考えますと、これだけ住宅が危ないというのは、まさに国家の危機とも言えます。ところがこれについては「私有財産だから、自分で耐震補強をやって下さい」という状況になっているところがほとんどです。例えば建築基準法上のきちんとした耐震をすると、平均で290万円かかりますし、民間の事業者が行っている、命を守るために必要な最低限の耐震補強のレベルでも110万円くらいかかっています。非常にたくさんのお金がかかるので、なかなか自分でやろうという気にならない、というのが大きな問題です。

大破してしまったビルの柱

しかし、さらにもっと大きい問題は、情報が足りないことです。耐震補強について何もわからない。何かやろうかなと思っても、つい止まってしまうということです。そこで私は、自治体と、設計士、建築士、工務店が集まって、1つの協議会みたいなものを作り、そこに頼めば情報がふんだんにもらえて、しかも一番安く合理的な方法で耐震補強ができるという仕組みを地域レベルで作ることが重要なのではないかと考えています。

もう1つは、アパートやマンションについてですが、現在は建物に耐震性があるかどうか、表示することが義務付けられてはいません。しかし、古いアパートやマンションの場合は、私は、耐震性を表示させたほうがいいと思います。きちんと診断をして、耐震性の有無を表示することを義務付ける。そうすると、アパートを借りよう、マンションを借りようと思った人は、その表示を見るようになります。そうするとそのオーナーさんは、自分の建物を耐震補強するか、建て替えをして地震に強くしていく必要が出てくる、そういう流れが作られてくると思います。情報の表示によって耐震化を進めるというのは、決して国民の税金を使うわけではない、ちょっと仕組みを変えるだけで進められることなので、是非政策的に取り上げられるべきことかなと考えています。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。