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防災インタビューVol.2

地震から命を守るために~21世紀の大地震に備えて~

放送月:2004年3月
公開月:2006年9月

鍵屋 一 氏

板橋区役所福祉事務所長(元防災課長)

災害時のご近所の底力

実は、災害時にはご近所が本当に大切になります。例えば今、大地震が来たと想像してみてください。大きな揺れがあって、「大丈夫か」と家族で声を掛け合います。怪我もしていないし、家族も幸い無事であったとします。ところが電気はつかない、ガスは止まってしまった、電話もつながらない、トイレの水も流せない。余震もあるし、安全な場所に避難して、そこで食事の配給を受けようかということになり、一家揃って近くの小学校に行って避難することになったら、ちょっと待って下さい。自分が助かったら、「ご近所は大丈夫ですか?」と思って下さい。お年寄りや身体の不自由な人はご近所にいませんでしたでしょうか。ご近所を見渡してみて、もし家が傾いていたり、つぶれたりした家があったら、その中にいる人を助けることを考えてください。

阪神淡路大震災では、家の中に埋もれた人は35000人くらいと想定されていますが、そのうちの27000人、8割の人を、ご近所の人が助け出したというデータがあります。警察、消防、自衛隊が助けたのは8000人くらい、2割ちょっとであったということから、ご近所の人が相互に助け合って、多くの人が助け出されたということになります。まずはご近所づきあいというものをもう一度見直していただき、いざというときは助け合うということが極めて重要であると思います。

阪神淡路大震災の時も、10日後に住民基本台帳を元にローラー作戦をやって、1戸1戸安否確認と避難場所を全部確認していきました。それなのに、実は3月になって見つけきれずに餓死した人がいるという話も出ています。なかなか安否確認をするというのは難しい話です。私は板橋区の防災課におりますが、私たちとしては災害時に、困る人たち、高齢者や障害をお持ちの方々の情報を事前にいただいて、その人たちを誰が助けにいくのか、誰が安否確認をして、病院まで連れて行くのかということを、事前に計画を作りたいと考えています。これからはだんだん自治体も本気で安否確認や救出に取りかかりますが、まず第1は、ご近所同士で助け合うということが、災害時の救助活動では大事になるのではないでしょうか。

「地震だ。火を消せ。」

地震前の対策は耐震補強と家具どめがもっとも重要です。しかし、いざ地震が起きたら、もっとも大事な対策は、火事を出さないことです。関東大震災のときに、建物被害で亡くなった方は、7千人から1万人と言われていますが、火事で亡くなった方は、なんと10万人を超えると言われています。「地震では建物が倒れるよりも、火事のほうが怖い」ということから、「地震だ、火を消せ」というのが標語になっています。ほんとうは、建物がたくさん壊れるから火事が出るのですが。

火事については意外とよく知られていないということも、お話しさせていただきたいと思います。情けは人のためならずと言いますが、ご近所で火事が起きていないかと気にして、いろいろ手を焼くことは、実は人のためではなくて、自分の財産を守るためなのです。せっかく地震で倒れなかった自分の家が、隣近所から火事が出て、その火事を消せないばかりに燃えてしまったという例は、過去の地震のときにはたくさんあります。地震になると消防車は当面来られないことをご理解ください。というのは、いろいろなところで同時に火事が起こるし、地震で建物が倒れて道路がふさがって消防車は来られないのです。地震が起こったら、自分たちが力を合わせて、ご近所で力を合わせて火事を消すしかない、これをよく覚えておいてください。

消火訓練・日本ミクニヤ(株)提供

古い例ですが関東大震災のときに、東京の下町はほとんど全部焼けてしまいましたが、神田佐久間町、神田和泉町という地区は焼け残っています。当時の記録を見ると、周りが全部焼け野原の中で、砂漠の中のオアシスのようだったと言われています。神田佐久間町、和泉町はなぜ焼け残ったのかは、いろいろ研究されていまして、理由がだいぶ分かってまいりました。まず、住宅が倒れなかったので、神田和泉町などは怪我人が1人もいなかったと言われています。住宅が倒れずに怪我人がいなければ、その力を、ご近所総出で火を消すことに当てられます。彼らは、19時間消火活動を続けたと言います。それくらい周りの火がすごかったのです。ポンプが1台あったことも幸いしたのですが、バケツリレーで一生懸命消火活動をして、町を守り抜いたそうです。なぜそれほどの精神力が発揮できたかというと、突き詰めると、隣近所仲が良くて、普段から助け合いの気風があったということだそうです。そういう形で、ご近所、力を合わせて消火活動を行うというのは、地震直後には非常に重要です。地震が収まったら、まず火事が出ていないかと、周りをご確認いただきたいと思います。絶対自分たちの町は焼かない、自分たちの手で守るんだという信念をもって、皆さんの力を合わせて消火活動に当たれば、今の建物は昔の建物と違って鉄筋コンクリートで燃えない住宅が増えていますし、道路も広がって火が飛んでいきにくくなっていますので、そんな大きな火にはならないうちに消せるのではないかと私は思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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