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防災インタビューVol.5

阪神淡路大震災での体験

放送月:2004年5月
公開月:2006年12月

中川 和之 氏

時事通信社Web編集部 次長

長年の気象庁担当を通じて地震・火山を学び、(社)日本地震学会の委員会活動として「地震・火山子どもサマースクール」を毎年開催しています。記者としてだけではなく市民の立場から、災害援助のあるべき姿を模索し、神戸市の研究会委員や厚生労働省の専門分科会委員なども務めています。また、NPO法人CODE海外災害援助市民センター監事や東京いのちのポータルサイト理事を務め、ボランティアとしても活動しています。

災害ハザードマップ

ハザードマップというのは、最近ではあちこちで作られるようになってきましたが、横浜で作られているマップの特徴からお話ししたいと思います。ハザードマップというのは、災害が起きたときにどういう行動をするとか、災害に備えて普段からどういうことをしておかなければいけないかと考えるための道具でもありますが、横浜市がまず最初に作ったのは、地震でどれだけの揺れがありますという地震マップです。

今、作ろうとしているのは、次のハザードマップになっていく地図ですが、それは、例えばどこに避難所がありますとか、どこに災害時の井戸がありますとか、どの辺に壊れやすい崖がありますということのデータが載っている地図です。そういう地図を作っている自治体は、最近増えてきました。横浜の地図は、行政が作って「はい、皆さん使ってください」という地図にしないところが、ちょっと面白いところかなと思っています。

市では、3種類の地図を作ろうと考えていますが、区の地図、それから学区、小学校なり中学校が避難所になろうということで指定されていて、そのエリアごとの地図を1つ作ろうということになっています。もう1つの地図はご近所の町内会単位の地図で、その地図にはほとんどの情報があまり書いていない。何のためにその地図が作られているかというと、その地図を使って皆さんに自分たちの近所のハザードマップを作ってもらおうと考えています。市内全部でその地図を使えるような仕組みを、今どんなふうに作ろうかということを、市役所で考えているところです。昨年テスト版を作り始めて、今年それをどういうふうに作ろうか、詰めているところです。

1995年1月29日、神戸市長田区の鷹取商店街

情報をただ受け取るだけでは、よく分からない、ちゃんと自分の身に付かないと思います。自分でその情報を作ってこそ初めてその情報が見えてくる、分かるということになると思います。自分たちで歩いて、自分たちの街の、例えば危ない所、ひょっとしたら逃げやすい公園とか、あともう1つ大事なのは、ただ単に危ないとか安全というだけではなくて、自分たちの街がどんないいところかというのも、地図を作ってみることで感じることができるのではないかと思います。当然、地図を作る前には自分たちの街の中を歩いて、どんなものがあるか、道が広い・狭いとか、車がたくさん止まっているとか、ここはすごく眺めがいい所だとか、そういうのも含めて自分たちの街のいいところ・悪いところを見てもらって知ることによって、これからどうしていこうかということを、普段から考えてもらえればいいのではないかと思います。

防災 ~ことおこし、ひとおこし、まちおこし~

防災を考えたときに、一人ひとりでできることと、みんなで一緒でなければできないことがたくさんあって、どちらかというと、これまでの阪神大震災以前の防災というのは、一人ひとりでできることばかりしか考えられてこなかったと思いますが、実はそうではないことがたくさんあります。それは地域ぐるみでどうしていこうとか、コミュニティーが大事であるとか、そういう話につながっていくと思います。では、どうやっていけばいいのか、コミュニティーで一緒にやっていくといっても何をすればいいの?ということになると思います。でも、それでいいのだと思います。地図を作っていくのも1つだと思いますが、何でもいいのです。何かをやることで少しずつ地域のコミュニティーができてきて、つながりができてきて、それが最終的には地域の防災力を強くするということだと、私は思っています。

平塚深田邸の耐震補強工事の見学会

そこで、いくつか被災地の中で仕入れてきたというか、一緒に使ってきた言葉があって、それを皆さんにご紹介して終わりにしたいと思います。1つは、「ことおこし、ひとおこし、まちおこし」という3つの言葉です。まず何かをする。一緒に事をおこすと、その事をおこす中で目覚める人が出てくる。それによって人が起きる。「ことおこし」をして人が起きると、それによって街が起きてくる。街が少し起きてきたら、また次のことをおこしていって、また新しい人が起きてくる。新しい担い手が出てきて、こんなところにこんな人がいたじゃないということが見つかって、またその人たちと一緒に街がどんどん目覚めていって、街おこしができていって、街全体に活気が出てきたり、結果的に防災力も高まっていく。そういう、「ことおこし、ひとおこし、まちおこし」のスパイラルということを、情報ボランティアをやっていた方がおっしゃっていました。

もう1つ、被災地のいろいろな復興まちづくりをする中で、実は難しいことがたくさんありました。まちづくりをするといっても限られた土地の中に、例えばどうやって公園を造るか、道を広くするか、みんなの土地を出し合って共同住宅を造るかというときに、一緒に物事を決めなければいけません。ある種財産に絡む話もあります。そこを一緒に合意形成、みんなでまとまって何かを決めていくときに大事だった3つの人材があります。それは「若者、ばか者、よそ者」と言うんです。普段いる普通の人たちだけでは駄目で、勢いがある若者がいたり、ちょっとばかになってやれる人がいたり、少し外からの視点を持っているよそ者がいたりと。そういう3種類の人材がいることによって、地域がうまくまとまっていけたとおっしゃった方がいます。確かに普段の自分たちの活動を見ているときに、若者の視点、ばか者の視点、よそ者の視点が入っているかと思うと、割といろいろなことを考えることができると思います。

最後に、まちやコミュニティーで、みんなでいろいろなことをやっていこうとするときに関係することです。私自身もNPO活動に関わる中で自戒的な意味でも使っているのです。例えば、いろんな活動の中でうまくやろうと思うと、分かっていることを人より先にやってしまうことがあります。分かっていない人に対して、「それはそうじゃないんだ」と言ってしまったりします。そのときに気を付けなければいけないことは「強者の論理」というか、つい自分が強い立場で言ってしまうことがないかと自戒することが大切です。また、「そんな分からず屋とやるのは面倒くさいから置いといて」という「排除の論理」になってはいないかということです。できるだけ皆さんを受け入れて、視点を低くして一緒に活動していくということをしていかないと、なかなかうまくいかないというのが、自分の活動を振り返っての反省事項でもあります。

都会ではなかなか近所付き合い、地域の付き合いがないと思いますが、積極的に参加して、いろいろなことがこれからできると思いますので硬く考えずに、ぜひ一緒に遊んでくださいという感じでしょうか。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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