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防災インタビューVol.7

災害情報ボランティアの役割

放送月:2004年10月
公開月:2007年2月

干川 剛史 氏

大妻女子大学人間関係学部 助教授

阪神淡路大震災

阪神・淡路大震災の当時、私は徳島大学の教員をやっており、自分が実際に活動した被災地は淡路島でした。その時にパソコンを持ち込みまして、パソコン通信で現地の情報をネット上にあげるという活動をやっていたのですが、これは1人ではできませんのでサポートしてくれる方がいました。慶應義塾大学藤沢キャンパス(SFC)の教授の金子郁容先生と、そこの院生・学生の方たちに現地に来てもらってパソコンを操作してもらい、その活動をやっていました。機材とか人員とかは金子先生経由でサポートを受け、ずっと活動できたのですが、それでも実際1カ月ぐらいで活動が終わってしまいました。大学が始まってしまうと学生も帰らざるを得ないし、私も大学の教員で本業に戻らなくてはいけないですから、結局、自分がやろうと思ったことの1割もできなかったというのが実際です。

なぜかというと、まずコンピューター通信、当時はパソコン通信ですが、それができる必要な機材とか回線が現地にはあまりなく、それを使えるようにするのに結構時間がかかったり、現地の人たちと協力して体制をつくるのに時間がかかってしまいました。それと、崩れた家の片付けとか被災者のケアをしている現場のボランティアから見ると、「パソコン持ち込んで何を遊んでいるのだ」と、そんな雰囲気もありました。そういう面では、現場の人の理解が私たちに対してなかった。かなりシビアな状況だったので、やりたいこともなかなかできなかったというのが現状でした。「パソコン持ってくるなら、おむすびの1つでも持ってこい」、「パソコンいじっているなら、現場に行って瓦のかけらの1つでも拾ってこい」という状況でした。

情報ボランティアの活動継続の難しさ

ちょうど阪神・淡路大震災から9年半たって起きたのが、昨年の宮城県北部連続地震です。昨年の6月29日に発生したのですが、私もこの地震でどういうふうにインターネットが活用されたか、現地の調査に行きました。実際にボランティアを現場でまとめる立場の社会福祉協議会も、日ごろからパソコン、インターネットは使っていました。それと、宮城県とか現地の自治体です。そういったところも日ごろから業務で使っていました。後方支援する災害救援ボランティアのネットワークの人たちも日ごろからインターネットを使っているのですが、皆バラバラに使っていて、社会福祉協議会と自治体とボランティアの間の連絡というのは結局は電話とFaxを使っていて、実際にはインターネットとかパソコンは生かされませんでした。

ましてや、インターネットを媒介として連携行動を取るというのも難しかったし、阪神・淡路大震災から10年近くたっても、あまり阪神・淡路震災からの経験やノウハウや教訓が生かされていなかったというのが実感でした。

結局、ボランティア頼りでずっとインターネットを使った支援活動が行われてきたのですが、これは活動する人間にとってもかなりシビアというか、時間も削られますし、場合によっては家族から白い目で見られたり、家庭不和の原因になったり、場合によっては職場から、あまり仕事をしないなら辞めろと言われた人もいました。結局、一度災害で情報支援活動にかかわってしまうと、次に災害が起こった場合、再び関わるのはしんどいので、なかなか続きません。

結局、災害が起こるたびに新たな人たちが自然発生的に同じような活動を始めて、試行錯誤が繰り返されることになり、情報支援活動のノウハウが次の災害に引き継がれないのです。そういう問題点があります。

災害ポータルサイト

ポータルサイトという言葉は、最近よくマスコミなどに出てきますが、簡単に言うとインターネット上の総合窓口ということです。そこを見ると必要な情報は手に入るというものです。災害時にもそういうものは必要で、ネット上に分散しているいろいろな情報をリンク集という形で今までまとめてきました。

しかし、これだけではやはり不十分なところがありまして、できるだけ生の情報をホームページに載せるような形のほうがよくて、リンクを張ってやるというのは、あまりいいやり方ではないと思います。

とにかく、そこを見れば必要な情報をやりとりできる、情報共有・交換ができるというものを作ろうと考えています。

つまり、今までの活動経験とかボランティアの情報支援活動の問題点を踏まえたノウハウが蓄積されないので、ポータルサイトという形でシステムをつくり、そこに全部今までのノウハウ、最新の技術を集約し、それで災害が起こったらすぐに使えるようなものを立ち上げようとプロジェクトを進めているところです。

実際の稼働はまだです。今、つくっている最中で、来年に実証実験をやります。5年計画で文部科学省からお金をもらって、プロジェクトメンバー20人ぐらいでやっています。今、システムの基本構想を練って、システムづくりが始まった段階です。実際、災害が起こると都道府県とか市町村とか、そういった単位で行政が正確な情報を出すのですが、それでは地域ごとに情報が分散してしまいます。

私たちが作ろうとしているポータルサイトは都道府県とか市町村の境界を越えた、広域のエリアをカバーできるというメリットがあります。そこを見れば、すべて情報が見られる、例えば東京であろうが神奈川であろうが必要な情報が手に入るというメリットがあります。それと、誰もが使えるものであることが必要です。行政の人しか使えないのではなく、一般の市民が自由に使える、情報が手に入る、書き込める、情報のやりとりができるといったことで、誰もが使えるということも考えています。

しかし、今ある既存のシステムはそうなっていないので、今後はそういう方向でシステムづくりを進めています。

災害ポータルサイトの実際について

現在、災害ポータルサイトのためのシステムづくりをしていますが、それが実際に使えるようにするためには、現実の災害でどういうふうにインターネット上に情報が流れたかということを、ちゃんと知っておかないとつくれません。そこで阪神・淡路大震災の時の様子をお話しします。

実際にニフティーサーブの「地震情報コーナー」を使っていた人は25万人と言われています。地震が起きた当日の午後1時に立ち上がりました。それまではお金をとられていたのですが、次の日に無料化したので、それからみんなが使うようになったわけです。最初はシステム全体の案内とか地震関連のニュース、被害情報などを書き込む掲示板、安否の確認などで使う掲示板しかなかったのですが、それがどんどん増えていって、いろいろな種類の情報が何千件と載るようになっていきました。

ニフティーサーブの「地震情報コーナー」のメニュー

実際に地震情報コーナーを分析した文献を見ますと、地震発生後4、5日ぐらいに情報が集中的に書き込まれたり、閲覧されたりということが見られました。実際数を挙げると、1月18日から2月2日までの16日間、約半月、総アクセス回数101万回ありました。それは1日平均だと、だいたい6万3千回というアクセスです。

当時25万人が使ってこれくらいのアクセスがあったわけですが、今、7500万人ぐらいの利用者がいますから、例えばこれから阪神淡路のような災害が起こったときにこういったものをつくったら、300倍のアクセスがある。そうすると1日当たりだいたい6万の300倍ですから、1800万ぐらいのアクセスがあるということで、これは1つのシステムをつくる上の大きな手がかりになると思っています。

パソコン通信というのは、あくまでも文字だけでしたが、今は画像だとか音声とか動画も扱えますから、もっと情報量が増えると思います。実際こういった災害が起こった後に備えて、システムを立ち上げる上で重要なのは、どういう種類の情報がどれだけ書き込まれて、見られるのかということです。それで見ると圧倒的に多いのは安否情報なのです。「どこどこに住んでいる誰々さんは元気かどうか」という情報。だいたい45%ぐらいはそういう情報の書き込みです。次が被害情報です。「橋が落ちている、道路が崩れている」という情報、これがだいたい2割ぐらいです。ですからそれごとに、例えばシステムをつくる場合はどういう情報をどういう形で書き込んでもらい、それをどう提供するかということを考えなくてはいけません。

ある特定の人しか書き込めないというやり方、あるいは誰でも書き込めるものと、2系統に分ける必要があると思っています。例えば圧倒的に多いのは安否情報で、これは誰が書き込んでもいいのですが、被害情報とか交通情報とかは、デマや誤報というのがあってはいけません。誰でもが書き込めるのは問題だと思います。これは例えば災害ボランティアや行政のホームページにリンクを張っておいて、正確な情報じゃないといけないと思います。

阪神・淡路大震災時のニフティーサーブ

ニフティーサーブの情報の流れを分析した文献を見ると、情報の種類によって、その流れはだいぶ違います。まず一番量が多いのは被害情報です。だいたい1日、2日ぐらいで被害情報はピークに達しますが、それから次は交通情報とか安否情報などが書き込まれる、あるいは閲覧されるものとして大きいわけです。だいたいそれも地震が発生して1週間ぐらいたつと、書き込みの件数とか閲覧の件数もだんだん少なくなり、頭打ちになるという傾向があります。特に地震発生後の2、3日間は、主に被害情報、安否情報の照会とか事実報告が中心になります。そういう情報を見る人がすごく多いということです。

ニフティーサーブの「地震情報コーナー」の各種情報の分析結果

次に被災者が必要とする情報と、被災していない人が必要とする情報は違いまして、被災している人が必要とする情報は、交通情報とか公的機関からの情報なのです。被災地の中で生き残るとか、生活するための情報が必要になる。それに対して被災地の外の人とか、被災地の中でも被災していない人が必要とする情報は、安否情報とか被害者情報とか、マスコミからのニュース速報といったものになりますので、被災者と被災していない人では分けて考える必要があると思います。

ニフティーサーブの「地震情報コーナー」の各種情報の分析結果

もう1つの点は、情報が書き込まれる件数よりも参照される回数のほうが断然多いわけで、例えば書き込まれる情報が1000件ぐらいあると、これを見る人、アクセスする件数というのは2桁から3桁ぐらい多いのです。だいたい書き込まれる情報が1000件あれば参照される回数が10万回とか100万回ぐらいになるので、圧倒的に書き込まれるよりも見るほうが多いという情報の流れになっています。

それと、参照するほうも書き込むほうも9割ぐらいが、だいたい地震が発生して1カ月以内に集中するという傾向があります。このような阪神・淡路大震災の時の情報を分析することが、これからシステムをつくる上で大変重要です。アクセスがどのくらいくるとか、どの時点でどういう情報が必要になるとかを踏まえておかないと、実際に使えるシステムができませんので、そのためにこういった考察が必要になってきます。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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