1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. ファーストエイドを身につける
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.8

ファーストエイドを身につける

放送月:2005年5月
公開月:2007年3月

岡野谷 純 氏

日本ファーストエイドソサエティ 代表

命を守るために、自分の地域を知ること

前2回はファーストエイドとは何か、またAEDを使っての救命や心肺蘇生(CPR)の方法についてご紹介をしました。他にも家族を守るために知っておくといい知識はたくさんあります。機会があればご家族で、またお友達と一緒に、色々な講座や訓練に参加してみませんか。JFASでも地域のサークルや自治体、学会などの要請を戴き、様々なセミナーを企画しています。そんな中から少しご紹介しましょう。

もうすぐ間近に関東や東海の広い範囲にわたる大地震が来るかもしれない、と言われて久しいですが、最近は確かに日本各地で小地震が続いており、本当に明日にでも大震災が来ないとはいえない状況になっています。国も各自治体も、いろいろな被害想定をして災害訓練を展開しています。それほどの大規模な訓練をするのでなく、私たち市民にできることは何か。家族を守る、自分を守るための防災を考える必要もあるかもしれません。

安楽島ぼうさいMAP

たとえば、実際に自分たちの町や地域が、どのくらい危ないかを体験するための勉強会はいかがでしょうか。JFASではこれまで多くの自治会や地域のサークルの皆さんとご一緒に「地域安全を見直す勉強会」を企画してきました。土曜日や日曜日の午前中、地域の皆さんが誘い合わせて町歩きをします。自分たちの地域を歩くのだから、だいたいの地理や建物の場所は分かっています。それでも新しい家や道路ができていることを知ったりします。また、我が家の周りには袋小路が多いこととか、小学校の裏門から出て路地を歩くと、周囲の塀がけっこう高くて地震が起きたら確実に倒れそうだということに気づくなど、今まで歩いてきた道が防災という観点からみると結構危険な場所だったことがわかることもあります。

広報に載せて公募するので、最近引っ越してきたご家族や、地域を初めて歩いてみましたと仰るカップルも参加することも多く、新しい交流も生まれます。

午後はセミナーです。午前中に集めた情報を、テーブルいっぱいに広げた大きな地域の地図に落とし込んでいきます。そうすることで、自分たちの住む地域の中で、ここは危ない、ここは何となく安全そうだ、ということが事実として見えてきます。通学路を変えたほうがいいのかもしれない、救急車を呼ぶなら大通りまで誘導に行かなければ、というほどの狭い道も認識できます。

行政や自治体と一緒に企画するときには、備蓄倉庫の位置や内容物、公園の中の資材、ここは地盤が危険だ、今後数年間の道路整備情報などの詳しいデータも書き込んでいけます。

こうしてできた地図を見ながら、ではどうしたらわが町は地震に強い町になるのか、安心な町になるのか。第3部はそんな討論を展開します。グループごとに発表をし、全体交流で終了となる、一日のセミナーです。自治体により何回かに分けて開催したり、地区ごとに開催したりと、工夫をされています。ぜひあなたの街でも市民の呼びかけでこんなセミナーを開催してみませんか。

災害訓練に参加しよう

防災というと、多くの方が「地震への備え」と仰いますが、災害とは地震に限られず、昨今日本でも増えている水害や風害、大きな交通事故や化学工場からの有害物質の漏れ出しや爆発、そしてテロなど、対策を検討すべき事案がいろいろとあります。そういった災害について、国土交通省や厚生労働省、学会などが、実際を想定して多くの訓練を行なっています。

特にJFASでは医療関係者の開催する訓練にユニークなお手伝いをしています。医療関係者がどんな訓練をするかというと、大規模災害が起こったときに、自分の病院に押し寄せる多くの患者をどう受け容れるのか、また自分の病院の患者をどうケアするのか、をシミュレーションし、緊急事態に対応する能力と人材を養成するのです。

そのためには、押し寄せる被災者、患者、けが人の役を演じる人が必要になります。本当の患者さんを使うわけにはいきませんからね。この患者役をお手伝いすることがJFAS会員活動の1つになっています。

この患者役のことを「医療災害訓練の模擬患者」といいます。救急医学の学会、集団災害の学会などは学会単位でセミナーや訓練を開催しています。また自治体・保健所の訓練や大きな病院での患者の運び出し訓練などでも、けが人・病人役は重宝がられます。

さて、けが人や病人の役をやろうと思っても、ある程度の病態やケガの状況についての基礎知識がないとできません。JFASでは患者役をしたいという仲間で、まずは応急手当てや病気のこと、けがのことを勉強したうえで、実際の現場でお手伝いをします。けがの想定では、頭や足など、設定された場所に本当にけがをしたように見せるために、外傷用のお化粧(ムラージュ)をしたり、服に血糊や泥をつけて、災害時のけが人というイメージを作り出します。その上で本当に痛そうに演じると模擬患者ご自身も段々にその気になりますし、医師や救急隊員など医療関係者の皆さんもトレーニングに真剣になるようです。

市民にとって、模擬患者の体験はとても大切だと思います。医師や救急隊員、看護師のみなさんが、どんなことを考えながら私たちのケアをしてくれるのかいうことを知るいいチャンスになります。逆に自分がけがをしてしまったときに、どうすれば医療従事者は助かるのだろうかということも学べます。究極的には、自分は難を逃れて元気だけれど、たくさんけが人がいるときに、医療者の手助けになるためにどんな手伝いをできるのか。大変な修羅場を少しでもよくできるのだろうということを考える機会にもなります。このような模擬患者体験が、今とても人気があります。

この災害医療訓練、病院や自治体からだけでなく、洋上での豪華客船衝突事故(海上保安庁訓練)や飛行場でのジェット機着陸失敗(新築空港)を想定した訓練など、様々な団体から模擬患者の要請を戴き、会員も張り切って参加しています。

模擬患者研究会のメーリングリストも立ち上げて、勉強をしています。宜しければ、読者の皆さんもぜひご一緒に訓練に参加してみませんか?

そしてもう1つ、災害訓練で一般市民の皆さんに知っていただきたい厳しい現実があります。それは「トリアージ」という言葉なのです。もともとの意味は「選別」という結構きつい言葉です。例えば災害現場に医師が2人いて患者も2人ならば、どちらの患者さんも丁寧に診てあげられるわけです。でも2人の医師に対して患者が10人だとちょっと大変ですね。更に100人の患者さんが押し寄せたら如何でしょうか。とても全員を均等には診られません。では「最大限に助かる人を助けよう」というのがトリアージの概念なのです。

歩ける人、話せる人、つまり現時点で元気な人には一旦「あなたたちは元気なのだからあとでケアをします」とお願いをする。また呼吸をしていない方については「助けられない人はごめんなさい」ということで治療待機群として分類する。そして、すぐにでも治療をしないと死亡してしまう方を選別して、まずは優先するという方法です。災害の現場ではそんなトリアージが行われざるを得ず、医療関係者は適切な選別方法を学ぶために研究や訓練をしています。そのお手伝いをする市民は選別される辛さを味わいつつ、協力をしています。国民もそういう医療の事情を知った上で、現場でのケアを受ける、家族の治療をお願いする、ということになるわけで、ちょっと厳しい話でもありますが、この訓練を経験して、看護師になろうと決意した方や、もう一度医学の勉強を始めた方もいて、模擬患者を体験することで色々と人生の役にも立ったりしています。

そのほかにもたくさんのユニークな防災訓練、災害訓練があります。JFASのホームページや地域の訓練に、時々はご家族で参加してみて下さい。家族みんなが同じ目線で安全を考えることがが大切です。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針