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防災インタビューVol.10

大地の異変…破局を回避しよう

放送月:2005年1月
公開月:2007年5月

木谷 正道 氏

東京都総務局IT推進室担当部長

最新の耐震補強 ~耐震後付ブレース工法~

平塚の防災まちづくりプロジェクトの一つとして、私たちが耐震補強をしたのは、深田一元さんという県立高等学校の校長先生のお宅でした。昭和32年築の、サザエさんの漫画に出てくるような懐かしい雰囲気がする住宅ですが、地震に弱い。これをなんとか強くしたいけれども、建て替えると思い出がなくなってしまうので、躊躇していたときに、昔の雰囲気を損なわないで強くなる方法を、私たちのNPO仲間の福井義幸さんが開発しました。「耐震後付ブレース工法」といいますが、鉄のワイヤーを筋交いに張るだけで、壁を作るのと同じくらい強くなるという大変効果が高いものです。破壊実験までやりましたが、ワイヤーというのは、吊り橋をつり下げるぐらい高い強度があります。これを家の補強に使うことを、福井さんという友人が考え出して、実行しました。深田さんのお宅で何十回も視察会をやったところ、だんだん有名になってきて、昨年暮れの段階で、7件くらい、この工法でやって欲しいという注文が入っています(注.2007年4月時点の実績は70件)。

耐震後付ブレース工法 F邸 地域住環境研究所

横浜市は、耐震補強の工事に対して、手厚く助成をするので有名な市です。最高540万円まで出るのですが、なかなか市民はやりません。全額出してくれるのならいいのですが、ある割合までしか出してくれないので、全体の工事の金額が高いと、補助金の上限が高くても、自分もたくさん払わないといけないわけです。車だったら100万円以上出しても買うんだけれども、耐震補強で100万円以上出すのは嫌だという方は多いです。そうするとなんとかして安く、効果があり、なおかつ魅力的な工法を開発する必要がありました。そこで、この耐震後付ブレース工法が開発されました。平塚で今、ヒットしつつあります。

この工法だと非常に安く耐震補強ができます。1面張るのに20万円くらいですので、5つの開口部を壁にすると100万円です。平塚市は半額助成の制度を持っていますので、もしうまくはまれば50万円でできます。建物の構造で一概には言えませんが、50万円程度で地震が起きても安心して寝ていられるのであれば、多くの市民がやってくれるでしょう。

横浜では、理容組合の理事長さんをしていらっしゃる方が、神奈川新聞に出たワイヤー工法を見て、直ちに工事の依頼が来ました。床屋さんの場合、道路に面したところがガラス張りのショーウィンドウになっていますが、あれは壁でふさぐわけにいきません。ワイヤーを張るしかないのです。現在は、横浜に助成の申請をして、横浜でもそういう新しい工法に対して助成をしてもらうように、準備を進めています。

どのような方法でも良いので、とにかく急いで耐震補強は進めていただきたいと思います。住宅の耐震補強をしないと、大地震が起きたときに、家がつぶれて家族が死にます。そこから火が出ても消す人がいないので燃え広がる。自分の家は大丈夫だったけれど、近所から燃えてきて、結局焼けてしまったということになり、敗戦直後と同じような焼け野原になってしまうという国の想定も出ています。横浜市では無料の耐震診断がありますから、耐震診断だけでもまず受けていただきたいと思います。

平塚耐震補強推進協議会の発足

理髪店 地域住環境研究所

耐震補強を推進するために、平塚市の住宅相談を担当している工務店の方々とか、耐震診断士の方々との話し合いを進めてきましたところ、ようやく、工務店、耐震診断士、建築士などの専門家と、防災まちづくりのリーダーである篠原憲一さんたち市民活動団体メンバー、神奈川大学の松岡紀雄先生など、たくさんの方々が集まり、平塚耐震補強推進協議会ができあがりました。平塚市には、工務店、大工さんはたくさんいるわけですが、今、結構仕事がないんです。景気が悪いということもありますが、家を建てるときに、みんな大手のプレハブを買ってしまったりするので、在来工法をやっている大工さん達は、だんだん仕事がなくなってきています。ただ、その方達は、確かな腕があるので、今回のブレース工法を施工する場合、一週間程度でできます。ただ、耐震補強なので、しっかりやってもらわないといけません。大工さん達には、本当に入念にチェックをして、大地震のときに壊れないように施工するためにみんなで訓練したりしています。とにかく、平塚の街を壊さないようにする運動をみんなの力で推進するために、それを真剣に進める協議会ができたというところです。もう既にたくさん注文が上がってきていますので、それにどうやって応えていくかが課題になってくると思います。たぶん3月までに、今の流れだと、10棟以上耐震補強ができると思います。

耐震補強の需要は多いのですが、どこに頼んでいいか分からないし、信用のおける所にやってほしいという希望があると思います。現在は、信頼関係の中で工事が行なわれ、それが口コミで広がっていくことによって、少しずつ実際に耐震補強をする方の輪が広がってきていますので、これはなかなか素敵なことだと思います。

大きな公共事業ではありませんが、このような小さな公共事業が広がっていけば、みんな自分のお金を出して耐震補強をしていくわけですので、これによって、平塚の地元の経済がだんだん潤っていくし、工務店の方々との関係もよくなっていく。この相乗効果はとてもいいことです。まだ発足したばかりですが、これからに期待したいと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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