1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. まちづくりと建築土木
  6. 環境と防災を考える建築
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.11

環境と防災を考える建築

放送月:2005年9月
公開月:2007年6月

柴田 いづみ 氏

滋賀県立大学環境学部教授

イスタンブールでの世界建築家協会世界大会

イスタンブール

UIA、世界建築家協会というものがありますが、世界大会がイスタンブールでありました。昨年スマトラ沖地震で、大変大きな被害が津波であったので、災害に対するセッションをつくりたいという依頼が、JIA、日本建築家協会にありました。どういう話をしましょうということで、いくつかのプログラムを組み立てて、それを発表してまいりました。

アジアの各国の方々が、それぞれの被害があって、その後にどういう仮設住宅を作ったかという話を発表なさったのですが、日本は、津波自体ではなく、むしろ地震についてお話しました。阪神淡路大震災を始めとして、中越地震、先日東京でもありましたし、宮城沖地震もあったし、それらを建築家としてどういうふうに災害に対して対応できるかということをお話しました。それからもう1つは、この番組でもお話くださった東大の目黒先生が、災害が起こる前に耐震化をするために国がお金をかけるべきだという話をしました。災害によってたくさんの方が亡くなられてしまう前に対策を立てるべきであるということや、災害後に残材を廃棄したり、仮設住宅を建てたりするよりは有効であるということを世界の方々に、お話しました。実は、津波セッションだけではなく災害全体ということでその話を核に持っていきましたが、それはトルコがやはり、何年も前に大変大きな被害を起こしているんです。日本と違って組積造ですので、災害の種類は違うかもしれないのですが、災害に対する自分たちの心構えがどうあるべきか、ということが、建築家の中でも大変に問題になっていた部分でした。ですから、私の話が、単なる災害報告に終わらないで、そういう次の社会がやるべき指針みたいな形でお話できたので、トルコ自体が大変にびっくり致しまして、2日後にトルコの放送局から連絡がありまして、インタビューにお答えしました。

日本は建築家も社会学者も、地震学者も、それから経済の人たちも、まとまった、ある意味でNPOみたいな形で、防災に対しては、一緒に行動している、そういったところが非常に特徴的だと思います。世界の建築家というのは、ある意味で、建築家が、何ができるかという、そういったところに的を絞りやすいです。そうすると、災害が起きてから仮設住宅をどうつくったかということは非常によく話すけれど、災害を起こさないための手段として何ができるかというところのポイントが少なかったのだと思います。

「稲村の火」

日本でも、スマトラ沖地震のあとに、津波教育というものを、もう1回見直したほうがいいのではないかということで、いろいろな方が立ち上がって、戦前の津波教育の紙芝居の、復刻版を出しました。それが「稲村の火」です。この話は、庄屋さんが山の上にいたら、津波で波が引いていくというのを発見しましたが、街は村祭りで、普通の人はあまり気がついていませんでした。「彼らに早く丘の上に上がりなさい」と伝えるために、庄屋さんは丘の上の家の前にあった、刈り取ったばかりの稲に火をつけて、みんなに知らせました。すると村の人たちは、「庄屋さんの家が大変だ」ということで、みんなが丘に上がってきました。それを見ながら庄屋さんは、「火は消さないでいい」といいました。人数を数えてみんな上がってきたのを確認すると、「ほら、見なさい。今は波が引いている。津波がもうすぐ来るぞ」と言いました。稲は自分の財産です。だけど財産を燃やしてでも人の命を守ったという、そういうお話の紙芝居です。復刻版として、日本でもそれを作ってくださった方があったので、その英語版をつくって、会場に展示をしました。この「稲村の火」は、ラフカディオ・ハーンが聞き書きしたものを、紙芝居にアレンジしたものです。ところが、今回内閣府が2005年版を作ったものは、もう少し、和歌山県であった史実に基づいて、もう少し詳しく作りました。この話では、千葉県に野田しょうゆというのがあり、そこの創設者が、津波の防波堤をつくるために、津波ですべてをなくした人たちのために、工事を発注するという話です。今もその防波堤があるという、そういうところまでを、新しい紙芝居にしています。

実は、今回イスタンブールでお話する前でも、世界中でこの話は反響があり、自分たちの国の物語として、または日本ではこういう言い伝えですよということで、戦前のラフカディオ・ハーンのものを中心とした紙芝居のほうを、8カ国で作られています。それだけスマトラの災害というのは強いインパクトをアジアに与えたし、世界もそれに対して、防災教育、災害に対する教育ですね、それの大事さというのが非常に強くなってきたということが言えると思います。

日本は津波の警報も早いです。地震についても、地震波が届く少し前には、地震情報さえも届いているという警報もあります。これがもう少しどんどん、どんどん解明されて、一部の専門家だけではなく、市民の人たちにうまく地震の警報が届くというシステムが確立できれば、災害を小さくすることができます。また、災害を小さくするということは、人の命を守ることですから、守った方々が、被災した方々を助けにも行けるし、それから、自分の仕事、社会をそのまま確立して、事業を継続していくこともできるということに、つながっていくわけです。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針