生活から考える防災まちづくり
現在は、災害対策基本法という法律で、国の役所と都道府県の役所と、市町村、それぞれが防災計画を作ることになっています。一番身近なのは、各市区町村の、地域防災計画という計画で、これが防災の基本的な計画の単位になっています。ところが最近は、皆さんの生活パターンをお考えいただくとお分かりのように、日中は仕事にいったり、買い物に出かけたり、家と離れた学校に通ったりと、実は皆さん、普段の生活は、かなりお住まいの市区町村とはまた別の所で生活をされていると思います。しかし、そういうことを、今の役所の防災計画では、組み込んでおらず、みんなが住民票を持ったところにいるという前提で防災の計画を作っています。
そうするとやはり、お互いに、出かけたその場所でどういう行動をとるかということを、皆で考えなければいけないということだと思います。自分たちの街は自分たちで守る。また、たまたまそこにいらっしゃった方は、みんなでケアしましょうという発想を、すべての地域の方がやっていただくということが、地域の防災力を高める上で、実は非常に大事なことなのではないかと思います。実際に早稲田や、平塚、あるいはこのたまプラーザを中心としたいろいろな地域で、地域ごとにそのような防災の取り組みというのは進んでいます。
内閣府では、昨年度ですが、全国の自主的に地域防災に取り組んでいる地区、6箇所選びまして、「防災まちづくり」のモデル事業ということで、ウォッチをさせていただきました。まもなくその結果が内閣府のホームページに載ると思いますので、是非ごらんいただければと思います。
(注:その後、内閣府のホームページに、「みんなで防災」というサイトが立ち上がり、各地の防災まちづくりの取組が紹介されています。http://www.bousai.go.jp/minna/)
防災まちづくりのポイントは、普段から日常的にいろいろな取り組みをしているということが大切です。何かあったときに行動するのではなく、普段から自分たちのまち、あるいは自分たちのまちを訪れてくれる人に、楽しんでもらいたいということで、実は防災とあまり関係ないような活動を、皆さんされている。それが結果として、防災基本計画を補うような、地域や社会の防災力を高めるような、そういうような力になってくるのではないかと思います。
なかなか行政では、例えば個人の財産である住宅について、耐震補強をしなさい、などということを強くいうのは難しいです。しかし、地域の人たちならば、気さくに、「ちゃんと工事したほうがいいんじゃないか」というアドバイスができると思います。地域の中で、リサイクル活動や、福祉活動をされる中で、防災にも目を向けていただいて、そういうような運動をされている地域が、どんどん増えていけばいいなと思っています。今、いくつかの地域で行なわれている取り組みを、結び付けていくことで大きな流れにしていきたいと思っています。
オフィスでの防災対策
そういうまちづくり活動は、何も商店街だとか、住宅街で行われているだけではなく、実は、都心のオフィス街でも行なわれています。その例として、大手町、丸の内、有楽町、頭文字を取って「大丸有」と呼んでいますが、この地域のオフィスでの防災対策についてお話したいと思います。
最近丸ビルが新しくなって、素敵なレストランとかができました。そこで働いている人だけではなくて、遊びに来る人も受け入れる街にしたいということで、再開発のために、街づくりの協議会を、ビルに勤めている人たちが作りました。その協議会を立ち上げた中で、防災というものを考えてみようということになりました。大地震の際には、東京駅も近いし、電車が止まると、大勢の方がオフィス街に難を逃れてくる可能性があります。そういうときに、みんなで手分けをしてそういう方々のお世話しようということを考えています。ある会社がクローズしたり、ある会社だけが受け入れたりすると混乱の元ですから、みんなで相談して協定のようなものを結ぼうということで、今、いろいろな話し合いをしているところです。これを「大丸有の防災隣組」といっています。日本を代表する大企業の人たちが防災隣組というのを作ってしまったというのは、非常に大きなことだと思います。こういう動きが、各地で広がっています。商店街とか住宅地だけではなく、オフィス街もそういう動きがあるということで、是非こういう動きがいろいろなところに広がっていくといいと思っています。