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防災インタビューVol.17

工務店が守るお客さまの命

放送月:2007年4月
公開月:2007年12月

松崎 孝平 氏

松崎建設代表取締役

東京都の防災ボランティアとして

私は足立区で工務店を経営していますが、耐震工事をしている関係で防災にもかかわっています。工務店は父が初代で、私が二代目です。阪神淡路大震災以前は、全くと言っていいほど耐震建築についてはやっていませんでしたが、阪神淡路大震災がきっかけで変わりました。

東京都には防災ボランティアという制度がありまして、私も登録はしていたのですが、どんな仕事をするかという点はよく分かっていませんでした。けれども、阪神淡路大震災が起こった時に、東京都建築士事務所協会から「現地へボランティアとして行ってくれないか」という話がありました。その当時、比較的若かったものですから「じゃあ私が行きましょう」ということで、手を挙げて行きました。

私が担当した地域は長田区、東灘区、灘区という非常に被害が大きかった地域でした。こう申し上げたら怒られると思いますが、どんなものか見てきたいという程度の考えで現地に行ったものですから、実際、現地の惨状を目の当たりにして言葉を失うというか、非常にショックを受けました。

ボランティアとして私が現地には2泊3日で2回行きました。これは応急危険度判定という、地震が起きた後に建物の危険度に応じて、緑・黄・赤の判定の張り紙をするという仕事でした。現実問題としては、現地に行って危険度の判定の仕事ももちろんしますが、むしろ多いのは、被災された方の不満を聞いてくることでした。これが非常に大きかったです。

ある時、地図を渡されて、対象の調査するお宅を探していましたが、長田区は焼け野原だったので、「ここにある郵便ポストを曲がって」と言われても、郵便ポストも焼けただれてしまっていて、すべて、がれきの山でした。仕方がないので、がれきの上を乗り越えて行こうと思いました。その時に後ろから声が掛かりまして、「おい、兄ちゃん、その辺むしゃむしゃ乗ったらあかんで」と言われました。振り返ると、そこに人が立っていて、「まだ骨も拾われんからな」と言われました。その時にぞっとして、「ああ、ここが人が命を落とした現場なんだな」ということを強く感じました。

倒れる家と倒れない家

あちらこちらの被災した家屋を調査して回っているうちに、不思議なことに気が付きました。大きく傾いたり、あるいは完全に倒壊している家がある中で、何ともない家も建っているのです。決して倒壊していない家が、ほかの家に比べて新しいということでもない、古さとしては同じくらいです。「これはどうしてかな」ということを強く感じました。

その地域一帯が全部一様に倒壊しているのであれば、そんな疑問はわかなかったと思うのですが、同じ地域でも倒れる家と倒れない家がある、これはどうしてだろうと思いました。

その時に、これがもし東京で起きたなら、自分の住んでいる街で起きたなら、どうだろうかと考えました。私も街の普通の工務店ですので、人気商売と言えば人気商売です。「あそこの建てた家はしっかりしているよ」という評判になれば仕事もくるでしょうし、もし私どもの建てた住宅が倒れてお客さまが命を落とした、あるいは大けがをされたということになれば、どうすればいいのだろうと考えました。そうなりましたら、それこそ商売していけなくなるのではないかと、大変強い危機感を感じました。

早速東京に帰って、私どもで建てた家屋の補強をさせていただき、地震が来たときにお客さまが誰もけがをしなかった、壊れる家がなかったということになれば、逆に非常に評判になるなと私は考えました。帰ってきてから、先代の父はとうの昔に亡くなったのですが、父が造った建物は当然、旧耐震基準の建物ですので、昔からのお得意さんを1軒1軒回って、「補強しましょう」と勧めに行こうと思って、意気揚々と戻ってきました。うちのお客さんだけは何とか守ってやる、そんな思いで各家々を回ったのですが、簡単ではありませんでした。「こんにちは。実はうちのおやじが造った建物は地震のときに危ないので、補強をしてはどうですか」と、こう言うわけです。こちらはありのままを言っているのですが、先代のお得意さんは、けげんそうな顔をして見るわけです。「お前、おやじさんが死んでから、そういうことを言うのか」と、逆に怒られたりもしました。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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