1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. まちづくりと建築土木
  6. 工務店が守るお客さまの命
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.17

工務店が守るお客さまの命

放送月:2007年4月
公開月:2007年12月

松崎 孝平 氏

松崎建設代表取締役

「ぐらチェック」~耐震補強がわかる本~

私どものお客さんで耐震性の低い家にお住まいの方に、何とか耐震補強をしていただきたいという思いで勧めてはいるのですが、なかなかしてくれません。それを勧めるために、口で言ったのではなかなか分かってもらえないので、耐震性の必要性をまとめたものをお客さんに読んでもらおうと書き始めました。最初はA4、4枚ぐらいで作っていました。ただ、それだと読んでくれる方があまりいないものですから、防災協会で出している簡易診断のテストをゲーム感覚でやっていただこうという発想で作り始めました。

そのベースには、防災協会で出された「簡易診断」という本がありますが、残念ながら解説が少なく、一般の方には分かりにくいという意見がありました。あるお客さんから電話で、「簡易診断にある布基礎って何だい?」と言われました。「布基礎は土台の所にありませんか?」と答えると「ちょっと待って、見てくる」と言われ、戻っていらして「布はないみたいだよ」と言われたのです。お客さまというのは、われわれが当たり前に使っている言葉でも分かりにくいのだというのを実感し、簡単に作ったはずの簡易診断も分からないならば、もっと易しく書いて、それに解説を加えようということで作ってみました。それをまとめて1冊の冊子になったのが、「ぐらチェック」という本です。

「東京いのちのポータルサイト」との出会い

「ぐらチェック」を東京いのちのポータルサイトのメンバーの方に見ていただいたことがきっかけで、私も東京いのちのポータルサイトのお仲間に入れていただくことになりました。

それまでは自分が阪神で見てきたこと、感じたことを個人で何とか展開しようと思ってやっていました。「ぐらチェック」もその1つでしたが、どうしてもある程度のところまではいっても、そこから先がなかなか進みません。そこで、この大きな意味で志を同じくする「東京いのちのポータルサイト」の皆さんと出会うことによって、活動の場が非常に広がりました。私自身は研究者でもなければ、いわゆる学者でもありませんし、街の中で普通に仕事をしている工務店です。その私に何ができるのかということを考え、私の住んでいる足立区、城東方面は非常に地盤が悪く、木造密集地域の多い所ですが、その中で私が頑張っていこうというふうに活動のきっかけをつくってもらったのが、東京いのちのポータルサイトとの出会いだったと思います。

中越地震でのボランティア

中越地震のときは、専門ボランティアという形で参加をさせていただきました。中越地震は12月に発生しましたが、通常は固定資産の評価を1月1日に行いますが、今回の地震により市区町村で固定資産税の評価替えをしなければならなくなりました。そのままだと、地震でなくなっている建物に課税してしまうことになってしまうので、地震で損害を受けている建物の税額を安くするという作業が残っていました。そのために私は十日町に行き、十日町市の税務課の職員と私たち専門ボランティアと2人ペアになりまして、一軒一軒回って、どの程度被害を受けたのかを調査してきました。

一軒あたり、おおむね1時間ぐらいかかって調査をしますが、阪神淡路大震災とは明らかに違う点がありました。阪神淡路大震災のときには、都市災害としての特徴が非常によく出ていましたが、中越地震の場合には、土砂崩壊とか地盤崩壊の問題がたくさんありました。もう1点非常に印象に残ったのが、お年寄りが1人でお住まいになっている家が多かったということです。

私と税務課の職員2人で行って小1時間調査をしましたが、内閣府で決められているガイドラインに基づいて診断をすると、全壊判定でした。阪神淡路大震災のときには全壊判定だと一時金が出るということで、何とか全壊にしてくれというような話もありましたが、こちらのおじいさんの家では逆で「全壊にしないでくれ」と言うわけです。ただ、希望で判定が変わるものではないので、全壊のところに○をしました。おじいさんの家は屋根も一部落ちて、ポッカリ穴が開いており、雨が中に降ってきてドロドロの状態です。そこにミカン箱を並べて、ベニヤを敷いて、そこにおじいさんが寝泊まりしていました。私や市の職員が避難所に行くように勧めても、言うことを聞きません。その話をしている時に、ちょうど新潟にお住まいになっている息子さんが来ました。全壊なので、新潟に来て一緒に住もうという話をされていましたが、頑として「嫌だ」と言うのです。やはり生まれ育った所を離れたくないというのがあるようです。命からがら助かったにしても、あのお年で家を失うというのは、その後も非常に厳しい現実を突きつけるのかなというのを強く感じました。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針