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防災インタビューVol.27

「みんなで防災!」家庭と企業で

放送月:2008年2月
公開月:2008年9月

西川 智 氏

国交省土地・水資源局水資源部水資源政策課長、元内閣府参事官

風水害について

第21回防災ポスターコンクール 防災週間推進協議会会長賞(一般の部)

「台風が来ます」という天気予報を皆さんご覧になると思いますが、最近では台風が来るといっても「怖い」と思う人が少なくなってきているような気がします。今から30年前、40年前には、台風というのはものすごく怖いことでした。ところが今、皆さんはなぜか、怖いと思わなくなってしまいました。そのことで実は、発生しなくてもいい被害が随分発生していると思います。最近、「台風や豪雨の時に、なぜ人が亡くなっているのか」ということを調べたことがあります。それを見てみると、都会だと台風が来る時に屋根瓦が心配になったり、テレビアンテナが飛ぶのではないか思って屋根に上られて、突風にあおられて落ちて亡くなっている方がいます。あるいは地方に行くと「田んぼが心配だ」「その水路が心配だから見回りに行く」と言って出掛けて、それで流されてしまったというニュースが非常に多いのです。

考えてみますと、昔の日本には「地震雷火事おやじ」という言葉がありました。この言葉の中で、おやじというのは実は台風とか嵐の別名だという解釈があります。このように自然災害というのは怖いものだという実感を持っていました。特に洪水や台風を昔は怖いものだと思っていたのが、今は怖くなくなってきてしまっています。川の堤防やダムを造り、改修をして強くするということをやっているために、大きな被害は出なくなりましたが、その一方で、実は死ななくてもいいのに死んでしまった、という事例をたくさん見ます。それはどういうことかというと、いくらニュースで「台風が来ます」「この台風はすごく強いんです」と言っていても、それがどうも自分にも災害をもたらすものだというふうに思っていないことが理由です。

2004年10月に台風23号というのが来ました。皆さんニュースでご覧になったかと思いますが、団体バスの屋根に老人クラブの方々が上って、一晩、水につかった中で励まし合って、何とか生き残ったというニュースがありました。あのことをよくよく考えると、何も台風が来る真っただ中に旅行に行かなくてもよかったのではないか、あの時たまたま帰る時間をちょっと早めていれば、また途中、帰りにお土産物屋に寄って時間をつぶさなければ、あのようなことにはならなかったはずです。やはり雨とか風とか台風、それを怖いと思ってもらわないと、防げたはずの被害が防げなくなってしまうということです。それはどういうことかというと、普段、日常生活の中で大丈夫だと考えていることでも、災害時には全然状態が違うということを知っていなければならないということです。つい最近、昨年の台風シーズンにあったことですが、台風の大雨警報が出ている中で、土曜日だったのでお父さんが高校生の娘さんを学校に連れていくために車を運転して出掛けました。ところが途中で、雨で車が流されて、結局、娘さんは亡くなられてしまったという非常に悲しい出来事がありました。この場合も「これだけの大雨なんだから、学校はお休みしてもいいんじゃないか」ということをちょっと考えるだけで、娘さんの命は助かったかもしれないのです。雨や風、あるいは雪というものを侮ることなく備えていただければと思います。

不安定な大気がもたらすもの

宮崎県では竜巻で人が亡くなっています。北海道の佐呂間町でも、これまた竜巻で人が亡くなっています。このように風、特に竜巻は実は怖いものです。竜巻は日本ではそんなにないと思われているようですが、実は面積当たりにしますとアメリカの半分ぐらいはあるそうです。

時々皆さん、天気予報で「明日の午後は大気の状態が不安定になっています」という言葉を聞かれるかと思いますが、気象庁はきちんと意味があるのであの情報を発表しています。大気の状態が不安定だと何が起こるかと言いますと、竜巻とか突風とか、ひょうとか、あられなどの現象が起こり得るのです。「大気の状態が不安定」ということは、「急激に天気が変わる可能性があります」ということを言っています。ゴルフをなさる方は雷が怖いという感覚をお持ちだと思うのですが、雷、竜巻、ひょう、あられ、いずれも急激な気象変動が局所的に起こることによってもたらされています。

昨年あったことですが、「明日は大気の状態が不安定です」という予報が出ていて、当日の朝も「これから前線が通過しますので大気の状態が不安定です」と言われている中で、ある学校が子どもたちを遠足に出しました。その結果、残念ながら風などによって、けが人が出てしまいました。運動会とか遠足とかハイキング、そういったことを企画される際に、もう少し天気予報に注意していただけたらと思います。例えば、1時間行程をずらすことによって被害を防ぐこともできますし、あるいはそれを中止することによって、けが人を防ぐこともできます。

実は竜巻の災害被害を受けて、政府では内閣府と気象庁が中心になって、「どうやって風による被害を防ぐか」ということを検討してまいりました。それを受けて、竜巻とか突風がどこで起こりやすいかという予測を、もっと精度を上げようということをやろうとしています。近い将来、そういう「大気の状態が不安定」という言葉が、もっと聞かれると思います。ぜひそのあたりに気を配っていただければと思います。

ふり返ってみると、昔は日本の家に雨戸というのがあり、「台風が来るよ」ということになったら雨戸を閉めて、それを板で打ち付けて守ったのですが、今は窓ガラスの性能がよくなりましたから、そういうことはだんだん少なくなってきています。ただ、それでも風の被害というのは実は恐ろしいものなのです。特に高層の住宅に住んでいらっしゃる方は、注意していただきたいと思います。風の被害というのは、上の階になればなるほど大きくなります。例えばベランダに物が出してあると、そのことが実は被害をもたらすことにつながりかねません。そういったあたりも、ぜひ一度考えていただければと思います。

あとは、もう1つ、雪のことも気を付けていただければと思います。雪下ろしというのも実は怖い作業です。怖い作業を1人でやると、犠牲が増えます。それをどうやって防ぐかも、大きな課題です。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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