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防災インタビューVol.27

「みんなで防災!」家庭と企業で

放送月:2008年2月
公開月:2008年9月

西川 智 氏

国交省土地・水資源局水資源部水資源政策課長、元内閣府参事官

企業防災とBCP

最近、BCPという言葉を聞かれる方がだんだん増えてきていると思います。これは英語の言葉でビジネス・コンティニュイティー・プランの頭文字を取ってBCPというのですが、日本語に訳すと「事業継続計画」と言います。

この話の前に、まず企業防災についてお話ししましょう。企業の防災活動がなぜ必要なのか。それは3つ理由があります。1つは、平日昼間、働き手はどこにいるのでしょうか。そして、私たちはどこで活動しているでしょうか。職場で働いているかもしれませんし、工場で働いているかもしれません。お店でお買い物をしているかもしれません。ここ最近の日本の大きな地震というのは、なぜか平日のワーキングアワーには起こっていないのです。本当に偶然ですが、阪神・淡路大震災は三連休明けの月曜日の未明でした。2004年の新潟県中越地震は土曜日の夕方。2005年の福岡県西方沖地震は日曜日の昼前。能登半島地震は日曜日。それから、つい先日の新潟県中越沖地震も日曜日でした。たまたまワーキングデーでなくてよかったのですが、もしこれがウイークデーの昼間に起こっていたら、大変なことになっていたと思います。例えば、阪神・淡路大震災の時には、三宮の駅前のさまざまなビルが壊れている様子を皆さんもテレビでご覧になったかと思いますが、あのビルの中で、もし働いていたらどうなっていたでしょうか。平日の昼間に働き手やお客さんがいる空間の安全を確保するのは、何といっても企業の責務です。

それからもう1つは、企業というのは良き市民でなければいけないということです。最近、地域コミュニティーでの防災活動というのがだいぶ盛んになってきましたが、その中で企業だけがそっぽを向いていたのではうまくはいきません。

それから3つ目は、財やサービスの円滑な提供がなければ、それだけで経済被害が起こってしまうということです。例えば新潟県中越沖地震の時に、自動車部品メーカーが止まり、そのことで日本全国の自動車メーカーのラインが止まってしまいました。今の企業社会の中では、特に製造業はサプライチェーンでいろいろなものが結ばれています。どこか1カ所の工程が止まってしまうと、それだけでいろいろなところに波及してしまいます。よく、ライフライン企業という言い方がありますが、電気、ガス、水道、通信あるいは鉄道というものについては、絶対止めてはいけないということで、それぞれの事業者の方はいろいろな努力をされています。でもそれはライフライン企業に限ったことではありません。われわれの生活を考えてみましょう。例えば、毎日服用しているお薬がなくなったら、それだけで困ってしまいます。企業が製品を供給し続けるということは、ものすごく大事なことです。

災害が起こった後でも、日本の経済がしっかりしていれば当然復興はできます。その復興するための資金を稼ぐためにも、経済がしっかりしていなければいけません。そのためにもぜひ、いろいろな企業に、かつその企業が事業をどうやって継続していくかという観点で防災を考え、「そのためのBCPをつくってください」ということを、実はいろいろなところで呼び掛けてきております。このBCPという言葉は、現在だいぶ定着してきました。昔の日本の企業はTQC、品質管理をよくすることによって、日本の企業の評価を高めて世界で有名になってきたわけで、昔はTQCで日本の企業は品質向上を図ってきました。これから日本の企業はBCPを使って安全管理、あるいは品質管理をさらに進めて、かつ災害時にも強い企業になっていかなければいけないと思っています。

BCPを実施している企業

日本でどのくらいの企業がBCPを実施しているかについて、1年ほど前に日本政策投資銀行が調べたアンケート調査を見ると、約1割の企業がそれに着手しているということです。ただ、今急速にBCPという言葉が普及してきていますので、だんだん取り組む企業が増えてきています。これはどういうことかというと、実は個人や家庭でもそうですが、万が一災害が起こった場合に、うちの会社はどうやって動こうか、何を段取りしておけばいいかということを、あらかじめ考えておくということが大事だということです。

例えば、どこかの自分の工場が止まってしまったとしたら、では、そこで作っている製品の代替製品をどこで作るのか。あるいはもし万が一、自分のところの社長と連絡がつかなくなったら、誰に権限を代行させるのか。いろいろな段取りがあると思います。その段取りをあらかじめ考えておくということが、実はBCPの基本です。何でこんなことが必要かというと、例えば近い将来起こると言われている首都直下の地震の時に、もし事前に何もしなければ、日本の中心がやられてしまうことになりますから、経済被害は大きいだろうと言われています。けれども仮に地震が起こって物理的な被害が起こっても、それをどうやって復旧させるか、いち早く復旧させるための、あるいはバックアップするための体制が取られていれば、その経済被害をぐっと食い止めることができるのではないかということを考えて始めたものです。これらのことについては、「企業防災」「みんなで防災」というキーワードで検索していただきますと、内閣府の防災のホームページの中の「企業防災」というコーナーが出てきますので、そこを見ていただくと、事業継続ガイドラインというものが出てまいります。ぜひ会社の関係の方はご覧いただければと思います。また中小企業の方にはBCAOというNPO法人がありまして、そこのホームページをご覧いただきますと、例えば中小企業のためのBCPガイドラインについても載っております。

災害に備えて

近い将来どこかで災害が起こった場合に、ぜひ地元の経済界の方に考えておいていただきたい、もう1つ大事なことがあります。もちろん災害が起これば、どういう被害があったのかという情報はたくさん出てきますが、その災害があったからといって、その地域の企業が全部止まってしまうわけではありません。逆にそこできちんと操業している企業の方は、「私の会社はきちんとやっていますよ」「ここの地区の商工会議所としてはほとんど被害がありませんよ」というような情報を出していただくのは、とっても大事だと思っています。

実は私が昔、国連で働いていた時に、エジプトのカイロで地震があったことがありました。それでニュースをつけますと、カイロの中心のビルがガラガラッと崩れている映像が流れてきましたので、世界中の人は、エジプトのカイロは壊滅したに違いないと思ってしまったのです。しかし私どもが国連のほうから現地に偵察隊を出して行ってみたところ、実は崩れていたのは違法建築のもので、それがガラッと崩れただけで、実はほとんど被害はなかったのです。それを見ることによって私はつくづく感じたのですが、もし近い将来、東京で地震があった場合に、もちろん部分的にひどくやられる場所は出てくるかもしれませんが、首都直下の地震が起こった場合には、そうでない場所がほとんどだということです。その場合に、被害のなかった企業が「私たちの企業はちゃんと操業していますよ」ということを世界に対して発信することによって、日本経済に対する信頼というものが確立されるのではないかと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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