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防災インタビューVol.27

「みんなで防災!」家庭と企業で

放送月:2008年2月
公開月:2008年9月

西川 智 氏

国交省土地・水資源局水資源部水資源政策課長、元内閣府参事官

自然災害の多い国 日本

日本最古(奈良時代)の歴史書「日本書紀」にも記される日本の自然災害

実は世界の先進国の中で、日本ほど災害の経験が多い国はありません。地震、火山、台風、梅雨、それから豪雪。世界の自然災害のうち、大抵のものは日本にあります。唯一ないのが、イナゴ、バッタの集団による食害だけです。よく日本は「災害のデパート」と言われます。その災害を何とか乗り切ってきたのが日本なのです。

1959年に伊勢湾台風というのがありました。これで5千名以上の方が亡くなったのですが、それをきっかけとして日本は、後追いの防災ではなく予防の防災をやろうということを進めてきました。そのために総理大臣をヘッドとする中央防災会議というものをつくり、政府のあらゆる部署は、防災のことを必ず考えなければならない仕組みをつくりました。政府だけではなく、マスコミ、銀行、通信、いろいろな分野を巻き込んで防災をやってきたわけです。

2004年12月に、インドネシアのスマトラ沖で大地震があって、その後、インド洋に大津波が発生しました。皆さんご存じかもしれませんが、津波というのは日本語由来の国際語です。津波と言えば世界中どこでも通じます。世界の中で最も優れた津波防災システムを持っているのは日本です。それはなぜかというと、今まで何回も津波の被害があったからなのです。1960年にはチリ地震津波というのが太平洋を1日かけて日本に渡ってきて、東北地方に大変な被害をもたらしました。そういう経験があるので、日本は津波防災という分野でも大変進んでいますが、津波防災というのはかなり難しいもので、まずは正確に地震の震源を探知することが大切です。どれだけのマグニチュードで、それがどれだけの津波を起こし得るかを一瞬にして計算をすること。それに基づいて、気象庁がいち早く津波警報を出すこと。その津波警報がマスコミ、あるいは地方自治体を通じて住民に伝わること。かつ住民に伝わった後、人々がちゃんと逃げること。これが全部組み合わさって初めて津波防災ができるのです。それができるシステムを持っている数少ない国が日本です。

日本は津波防災だけでなく、地震防災、あるいは風水害対策では、世界の他の先進国にはないノウハウがあります。このこともありまして、2004年12月の津波の後には、インド洋の津波の被災国から、ぜひ日本の津波防災システムを教えてくれという依頼がたくさんきました。それに対して政府では、内閣府、気象庁が中心となって、どうやったら日本の津波のノウハウを相手国に伝えられるかということで、いろいろなことをやりました。実は私が昔勤めていましたアジア防災センターでも行いました。これは江戸時代に津波が起こった時に、その村長が機転を利かせて村人を高台に避難させて命を救ったという、和歌山県に伝わる「稲村の火」という昔話があるのですが、この絵本をアジア各国の言葉に翻訳して伝えています。自然災害に対する防災というのは、政治的な思惑とは異なりますので、いろいろな国から歓迎されます。いわゆる顔の見える援助の中でも喜ばれますし、また、そのことによって経済的な発展にもつながりますので、日本としての援助の強みとして、これから重視していく必要があるのではないかと思っています。

「災害は忘れたころにやってくる」

寺田寅彦さんという方が、「災害は忘れたころにやってくる」という名言を残されています。それはいつの時代も同じことだと思います。私どもは「災害はいつも突然やってきます、でもあなたはまだ間に合います」ということを申し上げています。何で災害が起こるのかと考えると、それは自分には関係ないと思っているから災害がやってくるのです。これは交通安全と同じことかもしれません。道を歩いているときに、ちょっと気を付けている人は事故に遭わないですけれども、横断歩道を渡るときに全く気を付けていなければ事故に遭うかもしれない、それと同じことです。特に自然災害ですと毎日起こるわけではないので、いつも人ごとだと思っています。それでは困るので、私は前の職場で「1日前プロジェクト」というのをやっていました。

この「1日前プロジェクト」とは何かというと、実際に被害に遭ったことのある人たちに、「もしあなたがその災害の1日前に戻ることができたら何をしましたか」ということを考えながら、いろいろな災害の身近な経験談をお話ししてもらいました。例えば、2005年3月の福岡県西方沖地震を福岡市内の高層マンションで体験した主婦の方のお話を聞きました。そうすると、この方は、高価な食器を地震で2度割ってしまったということです。1度目の地震で、せっかく食器棚にきれいに飾り付けておいた大事なきれいな食器が割れてしまい、とても悲しい思いをしたということです。地震の直後にはそれを片付けて、もう1回戸棚をきれいにして、お友達がくれた食器をもう1回飾り、最初の1カ月間は扉にちゃんと留め金具をしていました。しかし1カ月たったらもう忘れてしまって、留め金を外してしまいました。そこに余震が来て、もう一度食器が割れてしまい、すごく悲しい思いをしましたとお話しされています。これは非常に身につまされるお話です。

みんなで防災

実は災害というのは、いつも人ごとだと思っているから災害に遭うという傾向があります。前にお話ししました内閣府の防災のホームページで、「みんなで防災」というページがあり、その中に「1日前プロジェクト」というページがあります。ちょっとご覧いただくと、いろいろな立場の人の話が載っています。例えばお店の人たちはどうしたか、あるいはご家庭の中にいた方はどうなったか。地震だけではなくて水害のことも載っています。

内閣府の防災ホームページ

テレビを見ていたら、隣の部屋にいた子供が「なんかおかあさん、畳がブニュッとして変だよ」と言いました。そして、ふっと気がついたら次の瞬間、畳が浮き上がって家の中が浸水していたということです。「テレビでは大雨洪水警報が出ていると言っていたけれど、それがまさか自分のところだと思っていなかった」という経験談が出ています。

災害というのはいつも人ごとだと思っていると災害ですが、万が一そういうことがあるかもしれないと頭の片隅に置いておくと、実は防ぐことができます。例えば毎朝、天気予報は気を付けて聞いていらっしゃると思いますが、その予報を聞いて傘を持っていくか持っていかないか、皆さん考えられると思います。また同じように台風が来る、風が強いかもしれないということを気にします。今は緊急地震速報というものを出せるようになり、いろいろなメディアで使えるようになっていますが、緊急地震速報が鳴った時に、自分はどうしようかということをちょっと考えていただくと、その情報が生きると思います。電車に乗っている時だったらどうしよう。この道を歩いている時だったらどうしよう、職場にいる時だったらどうしよう、こういうことを常に考えてほしいと思います。

お話の最後に一言だけ申し上げたいことがあります。ぜひ今夜寝る前に、寝る部屋の家具の向きとベッドの向きをちょっと見てみてください。人間は寝ている時は一番無防備です。その時に、たんすや本棚が自分の頭の上に落っこちてきたら、一瞬にして死んでしまいます。けれども、その向きを変えることだけで、あなたは次に地震が来たときに生き残れるかもしれません。ぜひ今夜お休みになる前に、家具の向きをちょっと点検してみてください。よろしくお願いします。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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