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防災インタビューVol.29

事業継続計画(BCP)とは?

放送月:2008年4月
公開月:2008年11月

丸谷 浩明 氏

京都大学 経済研究所 先端政策分析センター 教授

事業継続推進機構と先端政策分析センター

私は事業継続推進機構というNPOに入っていますが、これは事業継続を推進していこうという意味です。災害時や大事故が発生した際にも、会社の事業や役所の事業は継続していかなくてはなりません。特に地震ですと、東京に大地震がきたり、東海地震があったりというときにでも仕事を続けていくには、けっこう大変な準備をしなければならないことが分かってきました。そういった有事の際に会社の事業を続けるための方法や、それを担う人材の育成を、民間ベースで進めていこうということでつくったNPO法人が、事業継続推進機構です。

また一方、私は京都大学経済研究所先端政策分析センターの教授をしています。「先端政策分析」の「先端」というのは、要するに端っこという意味です。経済の研究をしてはいますが、実はこの分野は経済でもあり防災でもあり、経営学であったり行政学みたいなところでもあって、いろいろな分野にわたっています。逆に言えば位置付けがまだ決まっていない分野です。私は、大学ではこの事業継続という分野を専門分野の一つとしていますので、事業継続推進機構の仕事をしていても、大学の仕事をしていると認めてもらっています。まさに京都大学のおかげでやらせていただいているところです。

事業を継続していくために

個人も企業も、災害に遭ったときしなければいけないことは似ているところがあります。まず、最初に「人の命を守る」ということです。これは個人でも企業でも一緒なのです。そして人の命が守られたら、企業は仕事を守るとか、自分の財産を守るということを考えていくわけです。

例えば、企業が自分の社屋がなくなってしまったり、大きな機材などが壊れてしまったら、仕事を続けていくことはできないだろうとイメージされると思います。しかし、実は災害時などに事業を継続していくためには、そういった物だけが大事なのではないのです。仕事が続けられることを主に考えたとき、物だけに頼っているのではなく、仕事ということの継続をしっかり考えると、ちょっと考え方が違ってくることは、今まであまり日本では気付かれていませんでした。それを日本でも気付かれるようにしていきたいというのが、われわれの目的です。

事業継続計画

もし災害があったとき、すべての仕事を平常時と同じように続けることは、実はできません。というのは、会社にも被害が出ていますが、社員にも被害が出ているからです。そういった中では「継続していかなくてはならない重要な仕事を選ぶ」ということが大事です。そして選んだ仕事にできる限りの資源を投入することがポイントです。資源というのは人、物、資金、情報などのことで、このような資源を集中的に投入するということが大事です。

その次は「目標を定めて復旧する」ということが大切になります。つまり取引先にいつまで待ってもらえるか、ということを考えて、それに間に合わせるようにしないと駄目なのです。例えば新潟県で中越沖地震がありましたが、その時に車のエンジン部品のメーカーの仕事が止まってしまって、それで大きな完成車メーカーが軒並みラインを停止することになりました。重要な仕事を早めに復旧させることが大事ですが、その時は大体2週間ぐらいで復旧できました。そのくらいですと日本経済には、それほど大きな影響は出ません。つまり夏休みなどを振り替えれば、そのくらいの遅れは取り戻せるのでよかったのですが、もしこれが数カ月も止まってしまったら一大事です。私たちは目標復旧時間と言っていますが、その復旧のための目標の時間、その時間を守っていくためにどうしたらいいかを考えていくことが、事業継続計画の中心的な目標になるわけです。

事業継続(BC)の概念

企業ができること

各企業が大地震に備えるとすれば、やはり耐震補強などをやっていたほうが復旧はしやすいのは当たり前のことです。ただ、そういうお金がない中小企業の方にとって、耐震補強などはけっこう大変なので、「お金を掛けなくてもやれることがあります」ということをお伝えしています。例えば、簡単なことですが「緊急連絡をお互いに取れるようにしておく」ということも、実は中小企業の方には、まだできていないところが多いのです。自分の会社が一部こわれてしまった、電気がこなくて通信ができないというときにも、連絡が取れるような手段を事前にいろいろ工夫しておけばいいわけです。最近は携帯電話のメールがあります。電話や携帯電話の通話は災害時には輻輳(ふくそう)といって、発信が集中すると発信制限にかかってつながらないことが多いのです。ところが携帯のメールでは、あまりつながらないことは起きないと言われています。そのため、われわれは「携帯メールを使って最悪の場合、取引先と連絡を取り合ったり、安否の確認をしよう」と話しています。そのためには携帯メールが使えないといけないわけですが、携帯メールが使えない社長さんたちに防災担当者がメールの使い方を教えるのも一つの仕事になるような流れに変わってきています。そういった意味で、ちょっと頭を柔らかくしていく必要があります。防災といったら何か硬い、物を守る方向から、だんだん仕事の流れを守ることにシフトしており、その流れを、視野を広くして見ていく必要があるというわけです。

事業継続計画 BCPの認知度

私がBCPと呼ばれる事業継続計画を仕事としたのは、政府の内閣府で働いていた時に出合ってからです。この事業継続計画が日本に注目されたきっかけは、アメリカ、ニューヨークの9.11のテロの時です。アメリカにはコンピューターに頼る事業が多くあり、事前に準備をしておかないと、突然止まったらなかなか対応できません。止まってしまってから頑張るのではなくて、止まる前から頑張らないとコンピューターに頼る事業は継続していけないのです。そういった考え方がだんだん発展してきて、事業継続という考え方で災害に立ち向かおうという話になってきました。日本でも9.11のテロがあった後、しばらく注目はされていたのですが、私がちょうど3年前、政府におりました時に、ようやく普及が始まったという状況です。

幾つかのデータによれば、このBCPという言葉を大企業の担当者が知らないということは、だんだんなくなってきたようです。ただし、このBCPという計画がちゃんとできているところは、1割か2割しかありません。そういうわけで、中小企業の方や個人の方がこの言葉を知らないのは、決していけないことでも珍しいことでもありません。ただ、これから後で申し上げるように、皆さん方にも知っていただいたら、いいこともあるのではないかと思っています。

事業継続計画の策定状況

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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