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防災インタビューVol.29

事業継続計画(BCP)とは?

放送月:2008年4月
公開月:2008年11月

丸谷 浩明 氏

京都大学 経済研究所 先端政策分析センター 教授

事業継続のためのデータ、重要書類のバックアップ

大きな会社でもそうですし、個人で働いている方や、あるいは私のように学校の先生もそうですが、仕事を続けることについて、小さなコンピュータでもある携帯電話も含め、昔よりもコンピューターに強く依存しています。いろいろなデータを自分のノートではなくコンピューターに覚えさせているので、携帯電話をトイレに落としてしまった場合、メールやデータがなくなってしまい悲惨な目に遭いますが、その拡大版が災害時にも間違いなく起こるということなのです。

20年前だったら、災害が起こっても自分のデータは紙に書いてあるとか、打ち出してあり、火事に遭わない限り取り出せたわけです。ところがコンピューターがつぶれてしまったら、入っているデータを取り出せる可能性はあまりないでしょうし、自分では取り出せないので専門家に来てもらわなければなりません。専門家には同じような対応要請がいっぱい来るので、順番待ちをしなければならず、何日先か何週間先になってしまうかもしれません。その間ずっと仕事を休んでいられる人は当然ほとんどいないので、なくしてしまったら困るデータは、紙に打ち出しておく知恵でもいいのですが、とにかく自分で何かバックアップを取っておかなければいけないことになるわけです。仕事を続けるという意味では、このところを強調されるべきです。

また、大きな企業になりますと、データだけではなく情報システム自体が二重化されてなければいけないことになります。例えば、銀行のネットワークが止まってしまうことは絶対あってはいけませんので、今は二重、三重にシステムができているわけです。このような国を挙げて守らなければいけない重要なシステムだけではなく、各企業、各組織ともバックアップをデータの面、書類の面、さらにはシステムの面で持っている必要があります。なぜならば、支援に来てくれる人でもそれだけは助けることができないのです。支援物資を持ってきてくれたり、仕事を手助けしてくれたりすることはあるのですが、データや記録やシステムに関しては、そのものがなくなってしまったら、もう誰にも助けられないのですから、バックアップが重要です。

今は個人ベースであれば、コンピューターの中身を取り出して持ち歩けるようなものが数千円から数万円ぐらいで十分に準備できます。データだけでなく画像や写真、動画も入るものがいくらでも出ています。要はコストの問題というよりも手間暇と、それをやる仕事の仕組みづくりの問題です。ただ、逆説的なのですが、この際のポイントは欲張らないことです。あれもこれもやると途中で嫌になってしまって、バックアップを取る次の期間までが長くなったりします。それでは意味がありません。本当に最小限でいいので、とにかくきちんと小まめにバックアップを取っていかないと、結局は失敗してしまいます。

バックアップを取るのは、地震が起こったときだけのためではありません。コンピューターを間違って落としてしまうこともありますし、火事に遭ったり盗まれたりということもあります。事業継続の対策の幾つかは、地震だけに有効なのではなく、何か事が起こったときに代わりを確保しておくという発想ですので、バックアップもそういう考え方に当てはまります。日ごろから活かしていただければと思います。

企業のバックアップ対策とは?
  • オフィス機能の代替場所や複数の連絡手段、バックアップ用のOA機器などを予め確保しておく
  • 特に重要性の高い業務を支える情報システムについては、同時被災しない場所にバックアップシステムを整備する
  • 重要データのバックアップ頻度を明確にし、同時被災しない場所に保存する
  • 通信回線の二重化(異なる通信事業者、経路)を行う
  • 緊急時に業務を行うバックアップ要員を取り決めておく
  • システムの復旧について体制・要員・手順等を明確にしておく
  • 情報処理を外部へ委託している場合、事前に対応方法等の取り決めを行う

NPO法人事業継続推進機構「企業を守る災害対策・事業継続のすすめ」より引用

事業継続のための対策の継続

データのバックアップの話をしましたが、これを含めて、事業継続のための対策というのは、企業でも個人でも、一遍に完ぺきにやろうと思ったら、お金も掛かるし手間もかかるし大変なことです。ですから、1回やったことを続けながら、少しずつそれを良くしていこうという考え方が大切です。

少し難しい話になりますが、この考え方は事業継続だけに言われている話ではなく、環境対策のマネジメントや品質管理でも、徐々に良くしていく考え方があります。これは「継続的改善」と表現されますが、皆が工夫して少しずつ良くしていこうという考え方です。日本の「改善」という言葉は今では国際的に通用するようになっていますが、少しずつ着実に進めていくことが大切です。

例えば、「耐震補強しなければうちの防災はできないが、資金がないから防災はあきらめよう」というのではなく、少しずつでもできることを継続することが大事なわけです。例えば「データのバックアップをしよう」とか、「安否の確認の訓練を続けよう」とか、「連絡先をきちっと維持していこう」といったことを、少しずつ広げていき、毎年毎年良くしていこうという考え方でやりましょうということです。

事業継続計画の運用は、別名で「事業継続マネジメント」とも言われています。マネジメントに慣れた企業の方にとっては、「事業継続マネジメントも、継続的改善をすればいいんですよ」と気楽に考えていただければと思います。最初に高い目標を掲げて進んでもいいですが、地道にやりましょう。考えただけで何もやらないのでは何も起こりませんから、簡単なことから少しずつ継続的に粘り強くやるということが大切です。そして、実はこれが、企業の文化を変えるということにもつながっていきます。

事故が起こっても、あるいは突発的な不祥事が起こっても、粘り強く生きていけるということです。これが継続的な改善という意味なのです。

BCの維持・向上のために

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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