1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. まちづくりと建築土木
  6. 地震による斜面崩壊と液状化
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.37

地震による斜面崩壊と液状化

放送月:2008年12月
公開月:2009年7月

谷 和夫 氏

横浜国立大学工学研究員教授

プロフィール

私は大学で土木工学を勉強した後に、約10年間、(財)電力中央研究所で地盤工学に関する研究・開発をしてきました。そして10年前に、現在、勤めている横浜国立大学に移り、地盤工学に関する教育と研究をしております。これまで主に地盤防災に関わる業務に携わってきましたので、地震による地盤災害、特に斜面の崩壊と液状化についてお話ししたいと思います。

斜面移動の分類

最初に「斜面移動」についてお話しします。「斜面移動」は聞き慣れない言葉かも知れませんが、傾斜した地面(斜面)が下方に動く現象を意味する専門用語です。日常的に使われる「地すべり」や「土砂崩れ」の方がイメージし易いかも知れません。

私たちは、この「斜面移動」を5つのタイプに分類して対策を立てたりしています。「地すべり」、「クリープ」、「崩壊」、「崩落」、「土石流」の5つです。この分類の考え方では、主に、すべり面があるのかないのか、どのくらいの時間をかけて移動するのか、塊状を保ちながら移動するのかばらばら分解して移動するのか、さらに渓流の水と共に流下するのか、といった特徴に注目しています。

5つのタイプの「斜面移動」の中で、どれが主に地震の場合に発生するかと言いますと、「地すべり」、「崩壊」、「崩落」の3種類になります。「クリープ」というのは何年間もかけて斜面が重力の作用によって徐々に変形する現象ですので、地震の強い揺れによって斜面が短時間に崩れる現象とは関係がありません。それから「土石流」も、岩屑(土砂)が大量の水と共に渓流を流れ下る現象ですので、地震というよりも大雨が原因となって発生します。

斜面の安定は、斜面をすべり落そうとする作用と、これに抵抗しようとする作用のバランスによって成り立っています。斜面が安定しているためには、すべり落そうとする作用に打ち勝つだけの大きさの抵抗を発揮できることが必要です。逆に、すべり落そうとする作用が抵抗しようとする作用を上回ってしまうと、斜面は動き始めてしまいます。私たちは、この2つの作用の大小関係に注目して、斜面の安定性を評価しています。

勾配が急な斜面や崖は、すべり落そうとする作用として重力が常に働いていますので、地震が発生しなくても動き出すことがあります。それから、地面の中の地下水は、抵抗しようとする作用を弱めてしまいますので、大雨や春先の融雪によっても斜面が動き出すことがあります。しかし、地震の場合には、重力の影響に足し算する形で、地震動がすべり落そうとする作用として働きますので、強い揺れに見舞われた地域では、たくさんの「地すべり」、「崩壊」、「崩落」が発生します。

一方、斜面をすべり落そうとする作用に抵抗する作用については、斜面を構成する土や岩の強さが支配的ですが、その他にも、地質構造や補強の有無などが関係します。斜面の勾配が同じであっても、その内部の構造によって、移動し易いものと移動し難いものがあります。地層の傾斜が斜面の勾配に近い地質構造を「流れ盤」と呼びますが、特に注意が必要です。また、固くて割れ目が少ない岩盤から成る急な崖も、背面に深い亀裂が形成され、斜面の下部が侵食によってえぐられて凹んでいれば注意が必要です。このような凹みは「ノッチ」と呼ばれています。また、地表近くの岩盤は、長い時間が経つと徐々に風化が進行して弱くなるので、表層のすべりもしばしば見られます。

2004年新潟県中越地震で発生した「流れ盤」斜面の崩壊

地すべり・クリープ・崩壊・崩落・土石流

「地すべり」の定義は、連続したすべり面があって、その上を地盤がばらばらにならないで(塊状を保ちながら)すべる現象です。例としては、1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)の際に西宮市の仁川で発生した地すべり(死者34名)や、2008年岩手・宮城内陸地震の際に荒砥沢ダムの上流斜面で発生した大規模な地すべり(約7,000万m3)が挙げられます。

「クリープ」という言葉は余り耳にしないかもしれませんが、日本語では「はう」とか「ゆっくり動く」という意味になりますので、特徴は非常に長い時間を掛けて斜面が移動することです。それから、連続したすべり面が明瞭に形成されないことが多いようです。移動の速さは大体1年間に1センチから数センチですから、短時間に作用する強い揺れが特徴の地震とは関係はありません。

続いて「崩壊」ですが、これは急な斜面が地震の揺れなどによって塊の状態からばらばらに分解しながら落ちてくる現象です。数十センチから数メートル程度の石や岩が落下する場合には、「落石」とも言われます。そして「崩落」というのは、急崖の一部が巨大な塊のままに落下する現象を指します。規模が大きい場合には「岩盤崩落」と呼びますが、何十メートルもの大きい岩塊が落ちてくることもあります。これらは地震に関係なく発生する場合もありますが、地震の際には山岳部で多く見られる現象です。

最後の「土石流」というのは、大雨の時に発生します。山に降った雨が沢に集まって水と土砂が一体となって流下する現象で、非常に破壊力が大きいものです。しかし、地震の発生が大雨の最中や直後という特殊な条件でなければ、土石流は地震とは無関係に大雨だけで発生する現象になります。

2008年の岩手・宮城内陸地震で発生した荒砥沢地すべり

地すべり、崩壊、崩落の起こりやすい場所

「地すべり」、「崩壊」、「崩落」が起こり易い場所というのは、日本全体の中でも大体分かっています。東北地方から北陸地方の日本海側や、四国の中央部は地すべりがたくさん発生する地域です。それから各地方自治体では、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」(急傾斜地法)に基づいて「急傾斜地崩壊危険区域」を指定し、危険な斜面や崖の位置を地図に示して公開しています。平成15年に公開された調査データでは、人家が5戸以上影響を受ける可能性がある箇所として11万箇所以上が「急傾斜地崩壊危険箇所?」として挙げられています。東京都や神奈川県にも、それぞれ2千箇所以上が「急傾斜地崩壊危険箇所?」として挙げられています。影響を受ける人家が4戸以下のケースも含めれば、さらに多くの斜面が崩壊する可能性があるのです。

ご自宅や学校、職場の近くに斜面災害の危険があるどうか、その正確な位置を調べたい場合には、自治体のホームページの防災情報をチェックすると必要な情報が得られます。例えば、神奈川県については、県のホームページにある「神奈川県土砂災害危険個所マップ」をクリックすると、斜面災害の危険がある場所が地図の中に赤い枠線で表示されています。その他、斜面の近くを歩いていると、道路脇にその地域を管轄する治水事務所などが建てた「急傾斜地崩壊危険区域」を示す地図が印刷された看板を目にします。近傍の危険な傾斜地が赤い枠線で表示されています。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。