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防災インタビューVol.37

地震による斜面崩壊と液状化

放送月:2008年12月
公開月:2009年7月

谷 和夫 氏

横浜国立大学工学研究員教授

液状化現象が発生するメカニズム

液状化し易い土は、飽和した緩詰めの砂です。「飽和した」というのは、砂粒と砂粒の間(これを間隙と呼ぶ)に空気がなく、全ての空間が土粒子と水だけで占められているという意味です。「緩詰め」というのは「密詰め」の逆概念で、土粒子が空間に密に詰め込まれていない状態で、全体に占める間隙の割合が多いという意味です。例えば、砂糖や塩など粒子状のものを容器に詰める際に、適当に投入してから容器に軽い振動を与えてやると、内容物の詰まり具合が徐々に密になり全体の体積が減少します。振動によって体積を減じる余地が大きい状態(土粒子間の隙間が大きくスカスカの状態)を「緩詰め」、振動によって体積を減じることができない位にギュウギュウに土粒子が詰まった状態を「密詰め」と呼びます。

一方、液状化を生じさせる作用は、地震のように短時間に押したり引いたり繰返して作用する力です。地下から地表に向かって伝播する地震波によって、地盤中の土の要素には方向と大きさが変化するせん断応力が数十秒間にわたって作用します。この繰返しせん断応力がある程度以上に大きい場合には、飽和した緩詰めの砂の中の水の圧力(間隙水圧)が急増します。そして砂粒同士の間の噛み合わせが外れてしまい、砂粒が水の中に浮いた状態になってしまいます。このような状態になった砂は、せん断に対する抵抗が失われているため、液体と同じ状態です。つまり液状化状態となり、外力に対して容易に変形し、流動してしまいます。液状化した砂層の間隙水圧はその上位の地層の間隙水圧より高くなっているので、表層の弱い部分に亀裂ができると、水と砂が亀裂を通じて地表に噴出す「噴砂」という現象が見られます。

2000年の鳥取西部地震で見られた噴砂

液状化による被害

液状化による被害としては、まず、支持力の喪失による基礎の沈下・傾斜・転倒が挙げられます。「支持力」とは、地盤が構造物を支える能力です。構造物が載った地盤が液状化してしまうと、構造物が地盤の中に沈んだり、重心が中心からずれている場合や地表面が傾斜している場合には傾いたりします。ひどい場合には、完全に横倒しになってしまいます。1964年の新潟地震では、新潟市の川岸町において、4階建てのアパートが大きく傾いたり沈下したりしました。建物自体には目立った亀裂や破損はありませんでしたが、建て直しせざるを得ない状態になってしまいました。

別のタイプの被害として、地中に埋設した物の浮き上がりが挙げられます。液状化した砂層(砂粒が水の中に浮いた状態)の密度は1.6~1.8g/cm3ですから、水よりも密度が高いものも浮いてしまいます。そのため、地震によって埋設物の周囲を埋め戻した土が液状化してしまうと、地中にあったタンクやマンホールなどが浮き上がってしまいます。

その他の被害としては、傾斜した地盤が低い方に向かって数メートルも移動してしまうこともあります。この地盤の流動は、広い範囲にわたって強い揺れが終了した後にゆっくりと発生するので、気が付き難い現象です。しかし、埋設されたパイプが流動した地盤とその周辺の地盤の境界に沿って壊れているなどの被害が出ます。

しっかりと構造物を支えていた地盤が地震の強い揺れによって急に液体と同じ状態になってしまうのですから、液状化は非常に怖いというイメージがあるかもしれません。しかし、実は液状化が直接の原因となって命を失った方はほとんど居ないと思われます。広範に液状化現象が見られた新潟地震でも、多くのアパートが大きく傾き完全に横倒しになるほどの被害となりましたが、住人でお亡くなりになった方は1人もいなかったと聞いています。液状化現象は、地震の強い揺れの直後から数分後に始まり、その影響は数分間から数十分間も継続するゆっくりした現象だからです。避難するための時間的な余裕は十分にありますし、衝撃的な激しさはありませんので、冷静に対処すれば生命に関わる事態は避けられると思います。

1964年の新潟地震により転倒した川岸町アパート

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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