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防災インタビューVol.39

都市と企業と防災

放送月:2009年2月
公開月:2009年9月

守 茂昭 氏

(財)都市防災研究所 事務局長

HP:http://www.udri.net/

大地震の「その後」に備える

今、各自治体の防災計画で一番心を砕いているのは、当然ながら「市民の皆さんが災難を逃れて、命を失わない」というところです。東大の目黒先生が進めておられます耐震補強運動というのは、そういう趣旨で頑張っておられます。それはそれで非常に重要なポイントです。

しかし私たちが世話をしている東京駅の周りにあるようなオフィス街は、頑強な、けっこう良い建物が建っている場所ですので、建物が崩れて圧死するということは、あまりあり得ません。せいぜい高い所にあったものが落ちてきて頭を打ったとか、そういう形の事故しかあり得ないので、命を長らえるという点においては、木造密集住宅地に比べると、かなり良い成績で地震を越えられます。

業務市街地や住宅地において、人々は五体満足で傷なしに生き残ったその瞬間から、復興に向けて何かをしなければいけないわけです。この何かのための準備というのが、そこそこないと、被災対応がものすごく遅くなってしまいます。今までに「企業のBCP」というものについてお聞きになったことがあるかと思いますけれども、その企業にとって最初に再開すべき業務、これを日ごろから選んでおいて、被災直後に再開できるような準備をしておくということがBCPですが、これと同じような準備というのを、普通の街もある程度やっておく必要があるだろうということです。それがないとあるとでは多分、復興のスピードが全然違うだろうと考えています。

今までの地域防災計画というのは、「とにかく命が助かる」というところに神経を集中しすぎているところがあります。大抵の方は生き残る、ということも思い出さなければいけないし、その方が次のアクションをしやすいように考えていかなければなりません。現代は、そういう準備を考えてもいい時代に来ているだろうと思っております。ということで、今、災害といいますと、どうしてもその災いを逃れるというところに話題が行ってしまいますが、災難を逃れた直後に、どんなことがあなたにとって重要かということを、ちょっと自問自答していただきたいと思っております。

現在、大体片道1時間とか2時間かけて通勤している方もおられます。やはりそういう方が被災したり、あるいは会社から会社に用事で訪問していて被災したり、東京の会社から八王子の会社に訪問して、そこで被災をするといったときに、皆さん、何が必要だと思いますか。もちろん必要なことはいっぱいありますが、「これとこれとこれに絞って実現をしようじゃないか」という思考、これを少し皆さんで醸造し、合意形成するために、東京駅の周りで活動をしております。

DCP=District Continuity Plan

企業では、BCP(Business Continuity Plan)といって、災害時にビジネスを継続するためのプランを考えていますが、それと同じようなものを東京駅の周りでも実践するために考えたのがDistrict Continuity Planで、今でも死なずに生きているコンセプトになっております。これはBCPが企業の中の特定業務を選んでそれを長らえるようにしているのと同じように、街の中の、ある特定機能を選んで、それを何がなんでも通じるようにするというか、動くようにするというところがDCPの精神です。

「自宅や勤務地などから遠く離れた場所、自分の本拠地から遠く離れた場所で被災したときに、あなたは一体何が必要になるか」を考えるところからDCPが始まります。これは誰しも想像なさると思いますが、やはり必要な人に連絡ができないと、どうにもならなくなってしまいます。連絡ができるかできないかで、遠距離の先での行動の形がまるで変わります。もし家族が重体のふちにあれば、足が棒になっても歩いて帰らないといけないわけですが、ピンピンしている、元気で普段通り暮らせているということならば、ちょっと放っておいて、まず自分の周りにいる不幸な人を助けなければいけないというふうに選択肢が変わってきます。やはり通信がつながるか、つながらないか、これが行動を変える、非常なクリティカルポイントになってくるわけです。この通信が通じるためには、電気が動いていないと駄目なのです。電気も、電力会社の電源があればいいですが、落ちている場合が考えられるわけで、それを高いレベルで担保する方法、これがその地区にあるかどうかが重要です。

次に、連絡がついて、落ち着いて対応できるという選択が得られたときには、そこで私生活が始まってしまうわけです。その時、昔とは違って、今は食べ物、飲み物は何とか調達できる可能性が高いです。しかし何とかならないのはトイレです。これは安政の大地震や関東大震災の被災者と、我々の現代人の趣が違うところです。下手すると、食料、水よりもトイレのほうで苦しむ可能性があります。この辺は阪神淡路のときのいろいろな教訓に出てきますが、トイレをはばかって我慢したがために持病を悪化させて亡くなってしまった方がけっこうおられます。トイレを道端で平気で済ますことができたのは、やはり昔の人。これが今、我々は、死んでも我慢してしまうという、不思議な習性の中にあるわけで、トイレがとにかく何とかなるか、ならないかで、行動パターンが大きく変わるだろうと考えています。

District Continuity Planを考える上で一番重要なのは、電気、通信、トイレです。これを何とかすることに、まずは心を砕きたいと思って、いろいろな知恵を絞っているところです。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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