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防災インタビューVol.39

都市と企業と防災

放送月:2009年2月
公開月:2009年9月

守 茂昭 氏

(財)都市防災研究所 事務局長

HP:http://www.udri.net/

CATV電話

CATV電話端末

自分が自分の本拠地から遠く離れた所で被災した場合に必要なものは、電気、通信、トイレであるということを東京駅周辺防災隣組は主張していますが、この1月に「災害時第二通信網」が総務省の研究助成で成立しまして、都市防災研究所に、とある電話が1台入りました。この電話はどういう電話かといいますと、CATV電話という電話です。

これはケーブルテレビの視聴者に300円ぐらいのわずかな追加料金で、テレビの横に電話をつけることができますが、これがインターネットを利用したIP電話です。昔は音声が途切れたりして評判が悪かったのですが、だんだん技術の改良が進んで、きちんと通じるようになりました。このCATV電話が、普通のNTTの電話にもつながるようになっていますので、一見見たときには、まるで普通の電話です。受話器を取って、ダイヤルを押して、世界中どこにでもつながります。ただ、この電話には1つ、重大な特性がありまして、加入者同士、例えばイッツコムのCATV電話に入っている人同士は、NTTとは独立してお互いが通話できる状態になっています。例えば万が一NTTが何かの事故で、全社機能停止ということになっても、イッツコムのCATV電話の加入者同士は話すことができます。ちょうどビルの中の内線電話がNTTとは無関係に、2階と3階で話せるのと同じような状態が、CATV電話加入者同士の間で成立しています。

今回、都市防災研究所に入れたのは、最寄りの隣接地区にあります東京ケーブルネットワーク、TCNのCATV電話です。このCATV電話というのは元来、住宅地にしかないのですが、総務省の予算をお借りしまして、大手町、丸の内地区にあります光ファイバー網に接続して電話をつなげるということをやりまして、TCNさんのエリアからちょっと離れた場所にCATV電話がつながりました。これによって今、CATV電話同士が相互連携をしておりますので、TCNを通じてイッツコムのCATV電話を持っておられる方、あるいはジェイコムのCATV電話を持っておられる方、あるいはほかにもつながっているCATVは北海道から沖縄までいっぱいありますので、都市防災研究所につけた電話を使うと、それらのお宅とは、NTTとは無関係でしゃべれる、こういう状況をつくり出すことができました。

これによりまして、東京駅で将来、帰宅困難者問題が起きたときに、東京駅で動けない方がこの電話を取ると、自分の家がCATV電話であれば話せるわけです。被災直後、NTTがある期間、輻湊で通じないということをお聞きになったことがあると思いますが、輻湊問題をどう乗り越えるかは、けっこう頭の痛かった問題です。171なんかも、まさにその問題のためにあるツールですが、CATV電話をうまく使いますと、日ごろから、あのお宅とあのお宅とあのお宅はCATV電話が通じるということを自分が認識していれば、被災時にその輻湊を迂回してしゃべることができるということです。

安くて、身近なもうひとつの通信手段

被災時にNTTが一番頭を悩ませている問題が輻湊問題ですが、短く言いますと、たくさんの方が同時に電話をかけると、機械のほうがそれを全部つなぎ切れないという現象が起きてしまうわけです。これは昔の交換機のときに言われた技術上の言葉ですが、今、IP電話の時代になってきても、NTTの電話の事情は同じで、あるキャパ以上の人が同時にかけたら、やっぱりつながりにくくなります。これはもう技術の問題ではなくて、1つのものに皆がたかると避けられません。それはNTTがメジャーであるがゆえにそうなるわけです。メジャーであるがゆえに皆が使い、メジャーであるがゆえにみんながかける。平常時にはあり得ない発信が多くなって、しゃべれなくなる。この問題についてNTTは、災害伝言ダイヤル171で発信データ量の少ない通話を考案しました。これは、録音しておいたものを後で聞くというものですが、ただ、私どものように被災対応組織をやっていますと、やはり一言「生きているよ」ということでは済まないものがあるわけで、「3日とどまる」だとか「子供は全員元気だ」とか、とにかく確認しなければならないことがたくさんあるので、やはり話したいと思います。そうしたときに誰でもが思いつくのは、遠く離れた自宅と勤務先を結ぶトランシーバーがないだろうかということです。でもそんなものがあるわけはありません。最近、技術が進歩したのでいいツールが出てきていまして、衛星電話ならば通じるわけですが、自宅に1台、自分の会社の机に1台持つにはちょっと高すぎる、という具合で、輻湊している瞬間のNTTを補う通信手段というのは、なかなかいいものがありません。

それと、私どもがCATV電話に着目したのは、安さです。通常の電話料金に大体近い形で買えますし、もしCATVをお持ちならば、月300円ぐらいで入ることができます。日ごろからその電話で、NTTに世話にならずにしゃべれる相手は誰かということを心しておきますと、それは被災時に大変な有用性を持つ可能性が出てくる、ということで、輻湊という通信技術者が最も頭を悩ましている問題を、非常に安く解決することができます。この「安い」というのが重要です。値段をいくらでもかけていいなら、いろいろやり方はありますが、安いということが大事です。安いがゆえに日ごろから使えますし、日ごろから使えるから忘れない、ということがものすごく大事です。日ごろは普通の電話として使いながら、被災地ではこの電話はちょっと別のつながり方をするということを思い出しながら使っていることが大事です。ですので、そういうことを思い出せるように「災害時第二電話」というステッカーでも作って配ろうかと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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