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防災インタビューVol.41

災害からいのちと暮らしを守るために~災害救援NPOの現場から

放送月:2009年5月
公開月:2009年11月

栗田 暢之 氏

レスキューストックヤード代表

レスキューストックヤードHP:http://rsy-nagoya.com/

地域のおせっかいの勧め

最近の高齢者の中には「おせっかいはご遠慮願いたい」と言う方も多いのですが、実は災害時要援護者と言われる高齢の方々が過去の災害時に、大変な犠牲に遭っている割合が高いのも事実です。

例えば、2004年に台風が10個上陸したときは、台風と併せて集中豪雨もあり、60ぐらいの自治体が水浸しになり、実はあの時に230人ぐらいの方がお亡くなりになりました。そのうちの6割以上が60歳以上の高齢者でした。これは非常に高い割合です。水害でしたら「もうすぐ台風が来る」とか「川が氾濫しそうだ」というような情報はテレビ、ラジオで一斉に放送されていますが、実はそういう情報を受け取り難い方々がいたり、それが分かっていても、なかなか避難するという行動が伴わないという高齢者がたくさんいらっしゃり、そういう方々がやはり犠牲になってしまうという割合が高いのです。そういう緊急事態のときに、私たちが一番頼りにしているのは行政ですが、行政が一軒一軒のお宅に「もう避難しなきゃ駄目ですよ」ということをお伝えするということは、もうほぼ不可能です。その自治体によっても違いますが、行政は多くても何十人という体制の中で、人口何万人という方々一人一人に「逃げなさい」ということは不可能です。そうするとサイレンや有線など、いろいろな方法で伝えることは伝えていますが、それを受け取るほうが聞いているかどうか分からないし、非常に情報伝達という問題は難しいものです。しかし「隣の家の人はどうしているかな」ということを考え、ちょっと声を掛け合うだけで「ああ、逃げなきゃいけないな」ということを感じていただけるような、そういう人たちも結構いると思います。この際、自分自身が考えるのは広い地域のことではなく、それぞれの隣の方のことだけでいいわけです。ですから地域がもっともっと緊急時におせっかいになって「もう逃げようじゃないか」「もう危ないよ」というような声を掛け合えるようなつながりを持った生活を普段からしていくということが、災害時に犠牲者を生まないといったことにつながるのではないかと思います。そういう意味で考えているのが「地域のおせっかいの勧め」です。

地域、地域と一口で言っても、せいぜい組とか班とか、そういうレベルだと思います。
お隣とか、何軒先ぐらいまでで、そこの範囲の中で声を掛け合って、ということが理想的です。私は名古屋に住んでいますが、1小学校区だけで大体1万人以上住んでいますので、一つの村と同じような人口が住んでいるわけです。そういう中で情報伝達というのは非常に難しいと思います。多分、横浜でも同じことです。ですから、地域といっても広い範囲ではなく、組とか班という範囲の中で、丁寧に「地域で助け合うことが非常に大事だ」ということを啓発していけば、私も活動の経験上、地域の中には「自分たちの住んでいる町のことだから一肌脱いでやろう」「ちょっと、おれ頑張ってみよう」という人は必ず住んでいるので、そういう方々がたくさんいる地域は救われます。そういう方々がたくさんいる地域が、やはり災害に強い町だということになると思います。

災害時の救援物資について

「救援物資は被災地を襲う第2の災害」という言葉を聞いたことはありますか。災害時には物資は必要ですが、必要な人に必要なものを届けるということは、とても難しいことです。特に、報道を見た人が、自分たちも何かをしたいという思いで、救援物資を送ってくるのですが、届き過ぎてしまいます。阪神大震災のときには一説には、ゆうパック百万個が届いたとも言われています。私たちも現場に行って一箱一箱整理しましたが、「一体これは、いつになったら被災者の方の元に届けられるんだろうか」というぐらいの勢いで物が届くのです。「応援しています」というような手紙も入っていて、被災者の方にお渡しすると泣いて喜ばれます。そういう真心は必要です。

しかし多くの場合、古着が送られてきたりします。衣服は、男女もあるし、サイズもあるし、季節もあるし、非常時にこう言ってはなんですが好みもあるので、非常に難しいです。必要な時に必要な物が届かないということが一番致命傷です。服が届いたころには近くのお店屋さんがやっていたりしますので、そういう時に物が届きすぎてしまうと、逆に被災したお店が物を売ることができなくなってしまうので難しいです。また心無い人たちの中には、壊れたおもちゃ、何に効くか分からない病院からもらって残った薬などが入っていたりします。お中元、お歳暮を贈るときは新品が当たり前ですが、救援物資になると新品はほとんどありません。このような物資の受け入れをしている行政側の担当者は、地域防災計画上、福祉課が多いのです。福祉課にはもっと別にやることがあるのですが、実際にはトラックで夜通し届く物資の対応に追われてしまっていたり、ある市では救援物資を2300万円かけて焼却処分したりもしています。

ですから送ることによって、かえって被災地を苦しめるようでは、これは逆効果です。救援物資として何でもかんでも送るのではなく、送り先のことを考えて、真心を込めて、「顔の見える関係」の中で送ることをお勧めしたいと思います。

皮肉にも、被災者の方々にいろいろお伺いしますと「物もうれしいが、実は一番もらってうれしかったものはお金だ」と言われます。

救援物資集積場所の様子(1995年阪神・淡路大震災)

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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