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防災インタビューVol.43

アメリカ式 子供達への危機管理教育プログラム

放送月:2009年7月
公開月:2010年1月

長谷川 祐子 氏

在日米海軍司令部予防課長所

Disaster Action Kids(災害時に活動できる子どもになろう)

「Disaster Action Kids」と言いまして、米国危機管理庁FEMAが作りました「災害時に活動できる子どもになろう」というプログラムがあります。これについてぜひ皆さんに聞いていただきたいことがあります。これは米国危機管理庁FEMAにて開発された、子どもへの災害安全教育プログラムですが、FEMAのホームページ上に掲載され、子どもが自分で学べるような形になっています。題名の通り、災害時に活動できる子どもになることを目指しており、災害がどうして起こるか、分かりやすく、災害時に何をするべきか教え、パニックになることを防ぎ、自分と周りを助ける子になる楽しいユニークなプログラムになっています。

最初に「ようこそ」という子どもたちへのメッセージがあります。「災害時に活動できる子どもになるのは、易しくはないよ。でも、なれたらとてもすごいことさ」そういう形から入っていくのです。このプログラムによって、どうして災害が起こるのかを学び、災害時に活動できる子どもになることを目指し、「自分で自分の身を守る子どもになるって楽しいよ」「災害時に活動できる子どもになるって楽しいよ」と呼び掛けます。このプログラムを身に付けた子どもたちは災害時、何が必要か知っているし、自分のペットをどうやって災害時に守るか知っています。これは日常の生活を奪ってしまう災害に対し、受け身でいて、ただ泣くばかりではなくて、積極的に自分の災害を減災させる知識と技術を手に入れるための応援プログラムなのです。

アメリカの子どもたちのサバイバルキット(災害準備品)

まず一番面白いものにサバイバルキット、災害準備品の用意があります。日本にもさまざまな災害プログラムがありますが、このプログラムは日本のそれと異なる部分が幾つかあります。その一つがこのサバイバルキットです。これは避難所やホテル、親戚の家などに避難する際に持っていくものです。中身は皆さんが知っているような水、食料、貴重品、懐中電灯、ラジオ、着替え、お金など、日本でも言われているようなものと変わりはありません。

Disaster Action Kidsでは、このほかに自分自身の避難袋を用意するように指導しています。中身は本当にいろいろなもの、大好きな本、筆記用具、ノート、小さなゲーム、パズル、大好きな縫いぐるみ、大好きな毛布、枕、家族とペットの写真、宝物、少しのお菓子、水などです。日本では消防署などの指導で「こんなもの持ってきてはいけません」と言われるようなものです。でも何日か家に帰れないかもしれない子どもにとって、避難所暮らしのストレスは、こういうもので随分軽くなるものです。例えば、筆記用具やノートなどは、自分の中にたまった不安な気持ちや恐ろしい気持ちを吐き出させるために、大変良いツールなのです。子どもは自分で理解できない不安な状況に陥ると、自分の気持ちをうまく表現できず、黙ってしまうことが多くなります。でも、そのときに文章を書いたり絵を描いたりするのです。

アメリカの9.11テロの時、大変なショックを受けたのは、大人ばかりではありませんでした。実は子どもも大変ショックを受けていました。そういう子どもの心から恐ろしい気持ちを追い出すために、文章を書いたり絵を描いたりということを実施したところ、子どもたちの状態が大変に良くなったと報告されました。また、ゲーム機なんかもそうです。一部の大人にしたら、お絵かき帳と同じように考えがちでしょう。「この非常事態にゲームなんて」ということでしょうか。でも避難所で気分がめいっているとき、音を消していれば「ゲームをしてはいけない」というわけではありません。年ごとの子どもたちと、お互いに貸し合ったりしたらどうでしょうか。お友達にもなれますし、元気も出ます。不安なときに緊張状態をほぐすツールになります。家族だったら、お子さんのためにトランプなんかいいですね。笑いも出るでしょう。また、縫いぐるみや枕や布団。コミックのスヌーピーの中で、男の子がいつも毛布を引きずって歩いています。ああいうものです。大人でも枕が変わったら眠りづらいですから、そのためのものです。その他の家族の写真は、もしかして離ればなれになったときのためのものです。水やお菓子なども入れておくようにします。

いかがでしょうか。日本でもこれからは、このようなことを考えて準備をすることも必要になってくるのではないでしょうか。ちなみに私の孫の避難袋には、ミニカーが数個入っております。また保育園の先生ですが「私の避難袋の中には指人形を入れました」と、私の講演を聞いた後に言ってくださった方もいらっしゃいます。

もし災害時や避難所で怖さを感じたら

「もし災害時や避難所で怖さを感じたら」これもDisaster Action Kidsにメッセージとして入っています。「災害の間は泣いてもいいよ。でも覚えておいて。すぐに状況はよくなるよ」。あなたの両親やほかの大人に、怖かったり混乱したりしたら、助けてもらうために話をしなさい。彼らは何が起きたのか分かるように話してくれるよ。聞くことを怖がらないでね。例えば「避難所にどれくらい居ることになるの?」とか「いつ学校に戻れるの?」とか、時として君の体験を文章にしたり、絵に描いたりするのも助けになるよ。君にどんなことが起きたのか、どのように感じているのか描けばいいよ。避難所の中を見てごらん。たくさんの君にできる仕事があるよ。小さい子どもと遊んであげたり、お掃除をしたり、食べ物を配ったり。新しいお友達を見つけて仲良くなるのもいいよね。泣いてもいいよ。でも覚えていてね。災害は長く続かない。すぐに日常に戻るよ。

こういうふうな感じでDisaster Action Kids、災害に対したときに子どもたちが、どういうふうに災害を受け止めたらいいかということを教えてくれている、とても秀逸なプログラムだと思います。こうやって私は子どもたちに、いろいろなことを教えています。

普通は消防署というと、子どもだけではなくて大人、それからもちろん老人の方とか、いろいろな公衆教育、予防教育をするのですが、私が特に子どもに力を入れているのは次のような理由からです。大人は「災害は自分には起こりっこない」「これは不注意な人の結果だ」などと言い訳ばかりして、素直になかなか聞いてくれません。でも子どもは素直な心と柔らかい頭のうちに、私たちが何を言いたいのか、メッセージを浸透させてくれます。これは最も効果的な、未来の大人への投資です。未来の大人である5歳の子に、こういうことを教えます。Stop Drop and Roll(止まれ、倒れろ、転がれ)で火を消しなさい。これが10年たって15歳、中学3年生、もしくは高校1年生だとすると、「火を消すにはStop Drop and Roll」と言ってもなかなか聞いてくれません。8歳の子に教えれば、10年たてば18歳。10歳の子に教えて10年たてば、もう20歳です。これが私たちが子どもに一生懸命教えている理由の一つです。

これは未来の大人への投資です。今、私たちが子どもたちに、こういう大事な危機管理を教えていると、その子どもたちが大人になったとき、今度は私たちとは全然違う危機管理の考え方を持つことになります。私たちが教えることによって、子どもたちはもっとレベルが高い人たちになるわけです。そのレベルの高さで、今度は私たちの面倒をみてくれることになるわけです。これが未来の大人への投資というお話になります。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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