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防災インタビューVol.44

災害から一人ひとりの命と暮らしを守るために できることから始めよう!

放送月:2008年10月
公開月:2010年2月

浦野 愛 氏

レスキューストックヤード理事

災害ボランティアの活動

災害ボランティアの仕事はいろいろあると思いますが、私が大切にしているのは「被災された方々の気持ちを少しでも和らげる」ということです。実は私も活動を始めたばかりの時は、災害ボランティアといえば、現場に行って泥かきをするとか、がれきを運ぶとか「汗水たらして何かをする」というイメージを強く持っていました。でも、被災地で求められているのはそれだけではないということが、活動に関わるうちにだんだん分かってきたのです。

まず、被災された人たちが何を求めているのかをきちんと理解した上で活動内容を考えていかないと、私たちがやったことが迷惑になってしまうことがあることに気付きました。それを防ぐためにも、被災者の方々の声を丁寧に聴くという作業が非常に重要であること分かってきました。例えば「困ったことがあったら相談してください」と窓口を設けることで拾える声もありますが、中には何が困っているのかさえも自分ではよく分からないくらい混乱している人もいます。物理的に電話が壊れていたり、相談所まで遠くて行けないなどの理由で連絡できないという人もいますし、「皆が大変なんだから自分ばかり助けてくれなんて言えない」と言って、我慢してしまう人もいます。しかし、被災者の人たちの困り事は実際に存在しているので、それをいかに早く見つけていくかということが、一番大切であると思います。

阪神・淡路大震災では、震災関連死ということで913名の方が亡くなっていて、その中でも避難所で亡くなった方が数百人いたと言われています。不眠や食べ物などの心配、「これからどうしよう」というストレスや沢山の人たちとの共同生活により、心身に相当な負担がかかっていたにも関わらず、「今、つらいから助けて」と言い出せる環境がありませんでした。体調が悪くて状態がおかしいと分かった時には、もう肺炎にまでなっていて、病院に運ばれて亡くなっていくというケースも少なくありませんでした。避難所には保健師さんやドクター、看護師さんなどの専門家チームもいましたが、大規模な災害時には、それだけでは一人ひとりに目が行き届かないということがあります。その時に頼りになったのが周囲にいる人たちでした。近くにいる人たち同士が、互いへの目配り・気配りや心配りをもう少しだけ働かせることができたら、もっと早く問題を発見でき、早くしかるべき機関につなげられたのではないかと感じました。どうすればそれが実現できるのか?このことをいつも一番に考えながら被災地で活動しています。

例えば、皆が気楽に集えるお茶会などを開いたり、温かいお湯に足をつけてもらって、心身ともにリラックスできる「足湯マッサージ」のコーナーを作ったりする中で、被災された方からポロっと出てくる何気ない言葉を丁寧に拾っていくという作業を繰り返しました。このように、被災地にはこちらがある程度おせっかいを焼かないと拾えない声がかなり潜在的にあります。だからこそ、「すべての被災者支援は被災者の声から始まる」を肝に銘じつつ、創意工夫を重ねながら、被災された方が困りごとを声に出しやすい環境をいかに早く作っていくかを考え、実践していけるかが重要な課題だと思います。

地域を巡回して

2006年に長野県下諏訪町では、床上床下浸水300戸以上の大きな被害がありました。「被災された人の声をしっかり聴く」ことが大切だというお話をしましたが、その声の拾い方として私が勉強させていただいたのが、この下諏訪町の皆さんでした。

水害時には泥を片付けたり、ぬれた畳を出すというような作業に人手が必要です。特に夏場の災害は体力も消耗しますし、一生懸命頑張っても2日、3日経つと、一気に疲れがきます。その時に地縁血縁だけで何とかしようと思っても、どうしても限界が出てくるので、ボランティアが手助けできれば、皆さんの負担も確実に軽くなるだろうと思っていました。しかしチラシをまいたり、ラジオや新聞で広報しても「困り事」はなかなか上がってきませんでした。そこで、待っているだけでなくこちらからトラックに掃除用具、デッキブラシ、スコップやバケツを積んで地域を巡回することにしました。

地域を巡回しながら声を掛けて、「じゃあ手伝って」と言う所はその場で対応するというやり方で、どんどん被災者の困り事に対応していきました。頼まれてもいないのにこちらから出向いて行ってお手伝いしに行くということで、下諏訪の人たちはこの活動を「おせっかい隊」と名付けました。「おせっかい」というとネガティブなイメージがあるかもしれませんが、こういうボランティアの動きもないと、本当に必要な人に支援を繋げることはできません。一方で、やり過ぎると迷惑になるので、どこまで踏み込むかが非常に難しい問題です。ただ、ボランティアと被災者を繋ぐパイプ役を地域の特性を良く知っていて、顔のきく方に担ってもらえた時は、「こういう働き掛けだと了解してもらえる」とか、「こういう働き掛けだと遠慮する」という具体的なアドバイスを頂けるので、被災者との距離を上手に図りながら、効果的な働きかけを考えることができるようになりました。

頼まれて動くのも大切ですが、頼まれてなくてもこちらから出向いて行って、その被災者の方のニーズを探していくという、この両方の面の働き掛けが被災者には必要であると思っています。

私たちのような団体がよそ者としてその地域に入り、過去の被災地での失敗や成功事例を紹介することで、地域の方々も少しずつ先の見通しを持ちながら、生活再建を考えていけることがあります。このように「よそ者」と「地元の人」が協力し合いながら、お互いのいいところを探して出していくと、もっと活動しやすい環境がつくれると思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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