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防災インタビューVol.44

災害から一人ひとりの命と暮らしを守るために できることから始めよう!

放送月:2008年10月
公開月:2010年2月

浦野 愛 氏

レスキューストックヤード理事

よそ者と地元の人たちの連携

まず、よそ者の良さは、「何かしたい」という思いに突き動かされて被災地に入ってきているので、主体的に動ける人たちが多いということが挙げられます。また私たちのようなNPOや災害救援ボランティアは、過去にこれまで起こった被災地で活動の経験があるので、この先1週間後、1カ月後、1年後、どういうふうに被災地が変わっていくのかというのを、ある程度予測することができます。それ故、どのタイミングでどんな活動をしていけばいいのか、どんな話し合いをしていけばいいのか、という先の見通しについての情報提供がある程度可能です。

また、よそ者の目に映る地域は、地元の人が普段見ている視点とはちょっと違うところがあります。具体的に言えば、地元の人から見ればあって当たり前のものが、外から見ると輝く程素敵なものであったり、地域の素晴らしい財産・資源と感じることが多々あるのです。地域の方々の人間性や風景、食べ物、文化的な魅力などを地元に素直に伝えることで、住民自身が地域の力を再発見することもありました。これをふまえた上で、地元住民が自らまちの復興を考えることで、災害が起こる前よりもっと良いまちにして行こうという機運が生まれることもあります。

2007年の石川県能登半島地震では、地元の方々に「避難所や仮設住宅、仮設住宅退去後の復興支援としてどのような活動をやったのか」ということを情報提供しました。特に、避難所で亡くなられた方が多かったという話をすると、「自分の地域からはそんな人は出したくない」とおっしゃり、「避難所を巡回するチームをつくろう」「仮設住宅を個別訪問して、週に数回、皆が集える場をつくっていこう」という発想につながっていきました。これによって、外部からのボランティアが去った後も、地元の人たちが継続的な支援を行うことができました。この事例からよそ者と地元の人がうまく話し合いをしながら、「これからどうしていこうか」ということを検討していくことによって、その地域の特性やペースに合った、復興の進め方が可能になるのではないかと思っています。

災害時要援護者とは

災害時要援護者とは、災害が起こった時に援護を必要とする人を指します。具体的には足腰の悪いお年寄りや認知症のある方、目の見えない方、耳の聞こえない方、知的や精神に障がいのある方などです。また、外からは分かり難いのですがペースメーカーを入れていたり、人工透析を受けている内部障がいのある方、日本語がほとんど分からない外国人、乳幼児を抱えている方、妊婦の方なども含まれます。このような方々は、実際災害が起こると誰かしらの支援を受けられなければ身の安全を確保したり、生活を維持するのが困難になります。このような方々を総称して「災害時要援護者」とよんでいます。災害現場での具体的な事例としては、2004年新潟県三条市の水害で、寝たきりのお年寄りがいる高齢者世帯に一気に水が流れ込んできて、避難が間に合わず亡くなったり、1995年阪神・淡路大震災では、市営住宅の10階に住んでいた車いすの障がい者が、エレベーターが停電で使えず、下に降りられなくなって、5日間ずっと置きざりになっていたというケースもありました。通常は警察や消防などの行政機関が救助の担い手と考えられますが、大規模災害では限界があります。そのため、この問題を行政のせいにばかりしていても解決しないだろうということが分かってきたのです。そこで発災直後、誰が一番の救助者になったのかを調べてみると、「地域の人、ご近所さん」という実態が明らかになりました。

しかし、要援護者の方たちが、みんな近所付き合いをうまくやっていける人たちばかりだったらいいのですが、福祉や医療のサービスを利用している人の中には、そのサービス機関とは繋がりはあっても、地域とはあまり繋がりがないという方が多いように感じます。そこで、地域と当事者を繋ぐ仲介役の一つとして、福祉施設の役割は大きいのではないかという思いに至りました。

2003年に、名古屋にある重症心身障がい者の通所施設で施設と地域の合同防災プログラムを実施しました。同じ学区の女性会や子ども会の方々を施設に招いて、防災の話を聞いてもらい、近くの公園まで利用者と一緒に避難をして、炊き出し訓練や救急法、消火訓練を行うというプログラムでした。中には初めて車いすを押したり、食事の介助をしたという主婦の方や初めて障がい者と接したという方も沢山いました。しかし、最後の反省会では「今まで障がいのある人と道で通り過ぎるときに、目で追うことすら失礼なんじゃないかと思うくらい壁を感じていたけれど、ちょっとしたことでも自分たちにできることがあることに気が付いた」という感想が出てきました。この気付きは両者の距離を縮める上で非常に重要であり、このようなちょっとした出会いの積み重ねが、最終的には「困っているんだったら手伝うよ」と互いに言い合える関係を育てていくのではないかと思います。福祉施設はこの役割の一端を担える社会資源として、重要な役どころと可能性を持っていると思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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