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防災インタビューVol.52

減災のための気象観測

放送月:2010年4月
公開月:2010年10月

齋藤 誠 氏

気象庁地震火山部火山課火山対策官

気象庁の役目

気象庁の本庁は東京にありますが、それ以外に管区気象台、地方気象台、海洋気象台というものが全国各県に1つずつ以上、北海道や沖縄の一部には複数ある所があります。それ以外にも気象の研究をやっている気象研究所、専門的な地磁気、地球の磁気を観測している地磁気観測室などもあります。各空港には航空地方気象台、航空測候所などの組織もあります。昔は全国に測候所というものがたくさんありましたが、今、測候所というのはほとんどなくなっています。気象や地震の観測もかなり機械でできるようになってきたので、その要員を地方気象台に集めて、防災情報の解説に力を入れようということです。我々は、もともと観測にかなり力が入っていました。今後も観測は重要ですが、発表する警報や防災情報をしっかり使ってもらうための対策に、今は大変力を入れています。
やはり気象庁の一番大切な役目は、防災情報を発表することです。実は今はたくさんの民間気象会社が天気予報を発表しています。気象庁も天気予報を発表していますので、一種の競争状態ではありますが、その中で、警報などの防災情報は気象庁が責任を持って、国として発表しなければいけない、そこをやはり重点化すべきだろうというふうに思っています。

緊急地震速報

緊急地震速報というのは、地下で地面の破壊があり、地震が起こったときに最初にやってくるP波をキャッチして、強い揺れが来る前に「もうすぐ強い揺れが来る」ということを知らせて、身を守っていただくための情報です。それを出すための技術ができたわけですが、すぐに情報を発表しても、その情報がどういうものか、ということが理解されていなければ、かえって混乱するかもしれません。その混乱をなくすために、緊急地震速報がどういうものか、どういうふうに使えばいいのか、というようなことを皆さんに知っていただくための周知啓発活動をやっていました。
緊急地震速報によって、少しでも被害を減らしてほしい、身を守ってもらいたいと思っていますが、この情報も万能の情報ではありません。実は一番大きく揺れる所は震源に近い所ですが、震源に近ければ近いほど情報を受けてから逃げるまでの時間が短いというわけですので、そういうことを理解して、少しでも身構える、自分の命を守る1つの行動をする、ということができればいいと思います。
テレビで放送している緊急情報は警報ですが、震度5弱以上の揺れが想定されるときに出されますので、そんなに頻度が多いわけではありません。これまで一番効果があったのではないかと言われているのが、岩手宮城内陸地震の時です。あの時には、実際に揺れる前に情報を聞いて、身の安全を確保する行動をとったという話も幾つか聞いています。

緊急地震速報を聞いたら…

緊急速報というのは、短い時間で行動しなければいけない情報ですから、やはり一番重要なのは訓練です。いざというときに動けるように訓練しておくことが重要なわけです。ただ、訓練というと非常に大掛かりなものを想像される方も多いのですが、これは私の考えですが、大掛かりな訓練は必要なくて、イメージトレーニングでもいいと思っています。
今、実際に緊急地震速報を聞いたらどうしますか、今この瞬間です。この瞬間、緊急地震速報になったらどうするか、というようなことを考えていただくことが大切です。そういうことを1日1回、無理だったら週に1回でも考えて、机の下に潜るとか、実際にそういう行動をとって、慣れていれば、いざというときにスムーズに対応できるのはないか、と思います。
もし緊急地震速報が鳴った場合は、自分の家だったらここに移動しよう、というようなイメージをしておくといいと思います。自宅の場合はまだ大丈夫だと思いますが、公共の交通機関にいたら怖いです。例えば、電車に乗っているときなどは急停車に備えて、つり革や手すりにしっかりつながるとか、そのような心得も気象庁のほうでも作っていますので、参考にしていただければと思います。
緊急地震速報を受けて、列車を制御する鉄道事業者があります。テレビで放送するのと列車を制御するのとでは、その基準は全く一緒ではありませんが、どういう場合に列車を制御すればよいか、列車を止める以外にも、例えば百貨店や公共施設などで緊急速報を放送することになっているところもあります。そのような所では従業員の指示に従うとか、もしくはそういうことがない場合には、頭を保護して安全な姿勢をとっていただければと思います。万全ではないけれど、ほんの少しの行動をとることによって、少しでも自分の身を守ることができる、身を守る可能性が増えるのではないかと思います。
気象庁としては、地震、火山、気象について、何とかして皆さんの身を守るため、少しでも被害を防ぐことができる情報を発表していこうと、情報の精度を上げていく努力をしています。しかし我々が発表しただけでは決して被害は減りません。受け取った方がそれをうまく使うことで、初めて被害を減らすことができますので、気象庁の発表する情報がどういう情報か、どういう意味を持っているのかを理解していただいて、情報を受けたときにはどういうふうに行動すればよいか、ということを普段から考えておいていただければありがたいと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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