1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. 行政の危機管理
  6. 減災のための気象観測
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.52

減災のための気象観測

放送月:2010年4月
公開月:2010年10月

齋藤 誠 氏

気象庁地震火山部火山課火山対策官

津波警報

先日のチリの大地震の後に、日本にも津波警報が出ました。南米のチリの沿岸で地震が起こって、それから1日近くかけて日本まで津波が来たわけです。この津波では予測の精度が良くなかったとも言われましたが、現在の技術からすると、取りあえず安全サイドを考えて津波警報を出したわけです。当然我々としては精度を良くすること、過大評価、過少評価をなくして、できるだけ実際に近い値で警報や情報を発表するように努力はしておりますし、今後とも続けていきます。しかし、どうしてもこういうものには誤差が付き物です。これは気象庁の人間があまり言い過ぎると怒られるのですが、やはり「自分の命は自分で守る」ということが大事だと私は思っています。我々はそのための情報を出しているのですが、その精度は決して100%正しいものにはなり得ません。我々も精度を上げるように努力はしていきますが、「自分の命は自分で守る」という考えの下で避難行動などをとっていただいて、もし被害が実際に起こらなかったときには「被害がなくて良かったね」と、そういうふうに思われるような社会になればいいと思います。
津波に関しては、観測するポイントが太平洋の中にもたくさんありますので、観測データを見て、もちろん高い津波が来ていれば津波予報を切り替えて「予想よりも、もっと高い津波が来る」というような情報を出し直すことにはなっていますが、100%正しい情報が来るわけではない、ということは理解していただきたいと思います。
以前スマトラ沖で起こった地震のときにも20万人以上の人が被害を受けました。その後、インド洋の周辺諸国も津波の警報の組織や体制を整えようということで検討が進んでおり、日本としても技術的な支援を行っているところです。

東海地震の予知

自然現象について、あまり理解されていなかった時代には、何か普段と違うことが起こると「何かおかしいな。大きな地震が起こるのではないか」と思ってしまうようなことがあったかもしれません。しかし最近は科学技術が進歩して、いろいろなことが分かってきました。私は以前に東海地震予知情報の担当をしていましたが、東海地震の予知情報というのは、今は「前兆すべり」というものを基に注意報を出すようになっています。これは何かというと、東海地震が起こる前には小さなプレスリップという断層運動が起こって、それがズルズルズルッと成長して大きな地震になるもので、コンピューターで数値シミュレーションをして、そういうことが起こり得るということも分かってきました。気象庁としては、単に地震が起こっているから東海地震が起こるのではないかということではなく、きちんとプレスリップを捉えて東海地震の予知を発表するというような体制を整えています。
これは1つの例ですが、要するに科学的根拠に密着して、今何が起こっていて、今後何が起こるのかということを評価、判断して、警報や情報を発表していくために情報精度を高めていこうと今、気象庁は頑張っているところです。

情報を活用して減災を

日本で今後噴火が予想される火山ですが、活火山と呼べる火山は全て噴火の可能性があります。その中でも今現在一番活発なのは桜島です。昨年の後半から活動が非常に活発化しておりまして、今後さらに活発化する恐れがあるというようなことも言われています。
20世紀が終わってから10年以上たちますが、20世紀というのは規模の大きな噴火がこの数百年の中で少なかったと言われています。そういうこともあって、この21世紀は、すでに10年が過ぎましたから、あと90年ですが、この21世紀中にはかなり規模の大きな噴火が何回か起こるのではないか、と予想される先生もいらっしゃいます。また場合によっては、東海、東南海、南海地震が起こる可能性もあります。気象庁は、これらの地震・火山に対して、より精度の高い、正確な情報を、適時、的確に発表していこうということで、今後とも努力を続けていくつもりでおります。
ただ緊急地震速報と同様に、やはり我々がいくら頑張って、情報を発表したとしても、その情報を受け取る方が、その情報を理解して、うまく使わなければ何もなりません。気象庁でも職員に対して「情報は使ってもらってなんぼだ」と常に言っています。情報を出す側も「どういう情報が使いやすいか」「どういう情報を使って、どういう情報を出せばもっと使ってもらえるか」ということを真剣に考えているところです。逆に受け取る側からしても当然、「情報を使ってなんぼ」というか、使えなければ意味がないわけです。「自分の命や家族の命、地域を守るのは自分たちだ」という意識を持って、気象庁の情報だけではなく、いろいろな情報を入手し、自然現象そのものにも理解を深めて、来るべき災害を、できるだけうまくかわして、減災して、楽しく暮らしていければ、と思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針