1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. 行政の危機管理
  6. 地球温暖化から想定される被害 ~災害・水不足の問題について考える~
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.54

地球温暖化から想定される被害 ~災害・水不足の問題について考える~

放送月:2010年6月
公開月:2010年12月

布村 明彦 氏

(財)河川情報センター研究顧問、関西大学社会安全学部客員教授

世界的な水不足の問題について

100年後を考えた場合、世界中では、雨が増える所もあれば減る所もあって、トータルではあまり変わらないかもしれません。しかし、すごく雨が降る都市と雨が降らない都市が極端になってくるので、非常に水利用がしにくくなるというのが1つです。もう1つは暖かくなって氷河が解けてしまうとか、日本でも雪が積もらないなどということが起きますので、実際の降水量は変わらなくても、農作物を育てるための水など、使える水としてはすごく減ってしまうことが心配されています。
1つの例ですが、日本は稲作をしていますが、ちょうどうまく雨が降る時期と作物が育つ時期が合っています。山に雪が降って、それが春先に雪解け水になって出てきて、それを田んぼに引いて稲を育てます。このように、水田にたくさん水を張らなければいけない時期と雪解け水の時期がちょうど合っています。しかし、これが温暖化になると雪があまり積もらないので、冬に降った分は川に流れてしまいますし、水の欲しい時期より前に雪が解けてしまうということになり、今までどおりの稲作ができなくなってしまいます。1年間の水の量はそんなには変わらなくても、実際に使える水がなくなって、水不足になるのではないかと言われています。

世界における水問題について

オーストラリアそのものは世界の中では乾燥地域というか、雨の少ない地域ですが、オーストラリアの東側には、雨がある程度降る場所があって、麦や米を作っています。その地域が干ばつになって、今、米の収穫が以前の実に2%、50分の1ぐらいに減ってしまっています。これは世界で毎日4千万の人の食べ物がなくなるのと全く同じぐらい減っていまして、食料の問題にも大きく響いてきていると思います。
雨が降らないために水不足になり、飲み水が十分ないとか、農作物が育たないという直接的な話もありますが、アフリカでは温暖化の問題が出る前から、12億人という非常にたくさんの人たちが、安全な飲み水にありつけない、という状況になっています。不衛生な水しか飲めないために、実に毎日約6千人という人が亡くなっているというのが今、世界の実情です。
これには上下水道の設備ができていないというような国的な問題もありますが、もともとは人口問題です。非常に人口が増えていくのに対して、飲み水や食物の確保ができていないという問題が根底にあると思います。その上、戦争、紛争なども各地で起きています。またアフリカの国では、水くみは子どもや女性の仕事になっていますが、1時間、2時間、歩いて水くみ場まで行って戻ってきます。そのため子どもたちもほとんど学校に行けないという状況になっていますので、教育問題にまで及んできているというのが、この水不足の問題です。その上、水不足で農作物が育たないというようなことで、食べ物がなくなり、飢饉で亡くなる方が非常に多くなっています。1980年から2000年の20年間では、約4万人という非常にたくさんの人が、この水不足で亡くなっています。
また雨が降らないことが原因で、アメリカやオーストラリアで森林火災が増えています。カリフォルニアの知事がテレビに出て、森林火災の対策をやっていたのを見た方も多いと思いまが、このように森林火災が発生すると、自然が燃えてしまい、それが住宅にまで及ぶなど、いろいろな影響が出てきます。

地球温暖化に対する緩和策と適応策

地球温暖化に対して私たちができることは、個人でやることと、人間社会全体でやることの両方があるかと思いますが、1つは温暖化しないように、何とかCO?などへの対策をすることだと思います。これは温暖化に対する緩和策だと言われています。それから忘れていけないのは、もう既に温暖化の原因と思われるいろいろな災害が増えてきていますし、どんなにCO?などが増えるのを防いでも21世紀の前半は、やはり災害が増えるのではないかと言われていますので、そういう災害が増えても困らないようにすること、それにうまく適応していくことが大切です。これを温暖化に対する適応策と言っています。このように、温暖化しないようにする緩和策と、温暖化しても困らないようにする適応策の両方をしっかりやっていかないといけないと思います。
温暖化による洪水や干ばつなどに対して、いろいろな検討がなされていますが、基本的には温暖化による災害対策と、これまでの災害対策とは、あまり変わりません。そういう意味で、きちんと洪水などの災害に対して、安全な社会にするための対策を地道にやっていくことが大事かと思います。具体的には川の水が流れやすくするために川幅を広げたり、高潮や津波に備えて、水門をきちんと閉まるようにしよう、ということです。
また先ほどお話ししたゲリラ豪雨については、なかなか事前にうまくつかまえることは難しく、間に合わずに人々が流されてしまうようなことが起きています。これに対しては、今新しく「Xバンドレーダー」といって、もうすぐ降るかなという雲をとらえて、なるべく事前に集中豪雨を予測するための新しい技術も開発され、実用されつつあります。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針