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防災インタビューVol.55

安心で安全なまちづくりをめざして ~障害者視点での防災~

放送月:2010年7月
公開月:2011年1月

横内 康行 氏

竹ノ塚あかしあの杜施設長

地域と子どもたちの関わり

地域を挙げての避難訓練、防災・震災時の訓練には、たくさんの子どもたちも参加していますし、私たちの施設の障害のある人も参加していますので、小学校・中学校の校庭に300人、400人が集まって、いろいろな訓練をします。震災時にどういうふうに逃げたらいいのか、点呼はどうしたらいいのか、あるいはけがをした人はどういうふうに介助をしたらいいのか、救ったらいいのか、あるいはまた体の弱い人、子どもたちはどういうふうに住みやすくしたらいいのか、このようなことを皆で、地域の人たちと考えながら進めているというのが、この訓練の一番大切なところです。小さい時から、障害者や高齢者をどのようにして誘導したらいいかを学んでいると、大きくなっても、実際に災害があったときに、すっと手が出せるというのを、大きくなった子どもたちから聞いています。この小さい子どもたちの関わりというのが、実は大きくなって、その子たちの心にしっかり根付いて、それが宝になります。その意味でも小さい子どもたちと接触するというのが、1つの我々の仕事かなと思っています。

バリアフリーについても、実際に歩いてみないと、意外と子どもたちも大人も気が付かない所があります。よく私たちは町で一緒に、道路を探索するということをやってきました。土曜日とか日曜日に20名ぐらい地域の人が集まって、町がどういうふうになっているか、段差がどうあるのか、どういうふうに道路が斜めになっているのか、出入り口が危ないとか危なくないとか、そういう社会的な環境の問題についても、子どもたちと一緒に検証しあっています。次に子どもたちが実際に、今度は車椅子に乗って、その体験をしてみると「あっ、こんなに大変だったんだ。これって変だよね」ということに気が付きます。それが強いて言えば、社会の環境の変化に対応して、子どもたちが気が付いて、町の人と一緒にそれを改善する。こういった心が芽生えるというのが、私が今まで体験してきた大きな宝になっていると思います。障害のある皆と一緒に町に出て、関わることがきっかけで、いろいろなことに気が付くことができます。多分これは健常者だけではなかなか難しいかと思っています。

安心で安全なまちづくり

今、私は東京都足立区に住んでいます。足立区では「安心安全なまち」というのを目指して、区長さんはじめ多くの方々、町の皆さんが協力しあってまちづくりを進めています。「安心で安全なまち」というのは、これはどこでも多分、求められることは同じだろうかと思いますが、特に小さい子どもからお年寄りまでが1つの町の中で一緒に生活しているという状況は、特に東京のど真ん中ではなかなか難しいと思います。東京23区でも外れの方にある足立区は、まだまだ住む上での環境は自然的でいい所です。しかし町の治安やバリアフリー的な部分での改善が必要ですし、まだまだ十分な所ではない、という部分もあります。そういう意味で本当に小さい子どもからお年寄りまでが、安心して住めるまちづくりをするためには、直接障害を持っている人たちにも大きく関わっていくことが必要だと私は考えています。

以前、足立区の社会福祉協議会でこういったことの調査を、町の皆さんに協力を頂きながら実際に町を歩いて、改善すべき点等々、1年間かけて調査したことがあります。その中で多くの方が話していた中で「自分たちが住んでいる町をどれだけ愛せるか」ということにかかっているということが出ていました。これによって安全なまちをつくることができるわけです。これは「建物であったり、道路であったり、人の心であったり、全てそれが一致しないといいものはできない」ということを、その中で私たちは学んできました。キーワードとしては「明るく元気なまち」、これをつくるということにほかならないと思います。

また私たちが今までやってきたことに、障害のある人や私たち職員が町に出て、子どもたちと触れ合う1つのきっかけとして、小中学校の朝の挨拶運動があります。校門の前に立って、生徒が学校に通ってくる時に「おはようございます」と声を掛けます。今、都会の子供たちは、生活のスタイルが変わってきていますので「おはようございます」という声がなかなか掛けられません。お父さんは通勤のために朝早く出てしまい、お母さんも通勤のため朝が忙しい。そうすると子どもたちは、時間ギリギリまで寝ていて、一緒にご飯も食べられない。「おはようございます」という声を掛けるタイミングがなくなってしまうということが、我々が調査している中でも見えてきました。このような働き掛けも「楽しく明るく安全なまち」にしていくための一つの方法だと思います。しかしながら今は「知らない人に声を掛けられても返事をしちゃ駄目よ」と言われたり、学校の中でも「知らない人に声を掛けられたら付いて行ってはいけない」という教育もされていますので、そういう意味では町の皆さんが、いつも声を掛け合って、安心安全なまちづくりをしていくことが重要かと思います。

足立区の安全対策について

お話ししたように、安全で安心なまちづくりは、日ごろからの心掛けが非常に大切ですが、災害、地震、火災はいつ起きるか分かりません。そのために私たちは「もしものこと、いつでもいい」と考えていないといけないのかな、というふうに思っております。災害、事故、事件、特に足立区におきましては、結構いろいろな事件が発生しておりまして、世間の人は「足立区でまた起きたね」なんていう話も聞くことがあります。しかし実際に町の中に住んでいると、そんなに怖いということはありません。特定の所で確かに事件は起きてはいるのかもしれませんが、全体的には結構住みやすい町になっていると思います。

足立区の町をざっと見回してみますと、若い人たちが集まる新しい地域と、昔からの宿場町である下町があります。特に北千住という地区は昔からの宿場町で、非常に狭い土地の中に、たくさん民家が建っています。民家と民家の間がわずか50センチの通り道しかない所が、北千住の地域の中にはたくさんあります。不思議なことに実際には、あまりこの地域での火災は発生していませんが、ここでもし火災、震災が発生した場合には逃げ道がないと、いつも心配しています。

町の中を散策してみると、結構古い家が多いことに気付きます。「大きな地震が来たときに、この町は一体どうなってしまうだろう」「今、こうやって写真を撮りながらパチパチとシャッターを切っているが、その瞬間に大きな地震が来たら、この家に押しつぶされてしまうのかな」なんていうことも考えながら、町の中を散策しております。そうした町の中に何人か障害のある方たちが住んでいますので、事有るたびに私も家族の皆さんに「家の中にいて、つぶされてしまうことがないように、古い家に住んでいる方は、ぜひ耐震補強をしてください。それが命を守る一番の原点です」という話をしております。何人かの方は実際に耐震補強などもやっていただいています。うれしいことに足立区は、23区の中では突出した形で耐震補強等々が進んでいます。これは区役所の方が力を入れているということもありますが、そういったところで力を入れてやっている建築家の方々がたくさんいます。この古くからの下町、そして新しい町とのコラボの中で「人の命を守る」ということも、しっかり考えている人たちがいるのは心強いです。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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