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防災インタビューVol.58

都市計画と町づくり ~都市計画的防災の観点から防災を考える~

放送月:2010年10月
公開月:2011年4月

加藤 孝明 氏

東京大学生産技術研究所准教授

これからの防災町づくりについて

これまで現在の防災町づくりが抱える課題、その解消の方向性について話してきましたが、少し視点を先に飛ばして、もう少し未来の防災町づくりの方向性について話したいと思います。ここまでの話は、どちらかというと何か暗い感じだったような気もします。深刻な問題があって、なかなかそれが解けない、でも頑張って解いていこうと、マイナスをゼロに持っていくような議論だったので、これからは少し明るい話もしたいと思います。

簡単に言うと「社会や環境の変化への対応をしていきましょう」という話です。これには2つあって、1つは社会の変化への対応です。今の社会の変化で一番クローズアップされるのが高齢社会、超高齢社会です。僕たちが子どもの頃は、高齢化社会と言っていましたが、だんだん高齢社会になって、いつの間にか超高齢社会に入ってしまっています。この言葉だけを聞くと、さらに防災の問題も深刻化していくのか、という気分になってきますが、最近の動きを見ていくと、必ずしもそうでもないのかな、という気になっています。

昔は高齢化率が10%ぐらいだった時期もありますが、地域で活動できる人は、実は高齢者です。つまり高齢化率が低いと地域で活動できる人が少ないのです。高齢社会、超高齢社会になってくると、元気な高齢者が町にあふれています。ということは、共助の担い手である地域で活動される方が、どんどんこれから増えていく、そういう時代に入っているのではないかと考えられます。

高齢者の力を生かして

高齢者の力を生かしていくために、ぜひ皆さん考えていただきたいと思います。僕も川崎市で市民講座を1コマいただいていて、ここ数年、そこの参加者たちとディスカッションをしたり、一緒に勉強させてもらっています。彼らは非常にアクティブですし、非常に好奇心も旺盛で、それで僕のやっている防災の講座にも来ています。それなので、こういう人たちを地域に戻していくということが非常に重要だと思います。

社会の変化として、地域コミュニティーが弱体化しているという話もありますが、一方で、ホワイトカラーだった人たちが地域に高齢者となって戻ってきているということです。昔は、ホワイトカラーは会社に行っていましたので、地域のことは従来型の地域コミュニティーが頑張っていました。でも今はそれに加えてホワイトカラーが重なると、昔よりも実はもっともっと強い力があるのではないかと思います。しかもホワイトカラーの高齢者たちというのは、従来型の地域コミュニティーが持っていない、もっと違ったネットワークも持っていますので、それが重層的に重なっていくと、今までにないような地域の力が出てくるのではないかと思います。僕も東京の東の方で、地元で活動するNPO、地元の町会連合会、我々研究者グループ、この3者で活動をしていますが、本当に驚くほどの地域の力を感じます。

これからの防災町づくり=変化への対応

これからの防災町づくりのためには、社会の変化への対応が必要であると言いましたが、もう1つ、地球環境変化への対応が必要ではないかと思っています。地球環境変化が起こると海面が上昇するという話があります。これによると100年間で300~700、800ミリ、海面が上昇するのではないかという報告があります。これはミリですので、結果、数十センチ上昇してしまうということになりますが、これが問題かというと、少なくとも日本ではそれほど大きな問題ではありません。実は海面上昇が問題なのではなく、むしろ地球環境変化によって気候変動、極端な気象現象が増えていく、というのが問題です。

最近のゲリラ豪雨なども、もしかするとその影響の1つなのかもしれません。それに加えて台風が大型化していくことが予想されます。これはシミュレーションによると、将来は台風の個数は減少すると出ています。つまり1つが大型化していくという話です。そうすると今までないような雨が降り、その結果、大規模な水害が発生していくという可能性もあります。

例えば今年、中央防災会議から、地震と同じように大規模水害の被害想定が出ました。これによると首都の半分ぐらいが水没してしまうということです。こういったものに対して、都市あるいは町として備えていくということが1つ、これからの防災町づくりの方向性であると思っています。これは非常に明るくて面白い話ですが、地震は明日来るかもしれませんが、この大規模水害は地球環境変化の影響なので、明日は来ないのです。でも50年後ぐらいには問題は深刻化してきます。つまり与えられている時間が非常に長いです。

過去をちょっと振り返ってみると、50年前の都市はどうだったのでしょうか? 恐らくこのスタジオの周辺は山だけだったと思います。未来の50年後はどうなっているか、多分いろいろ変わることができると思います。ですから自分が生きているか死んでいるか分からないような先の話ですが、その先の夢を描くことができるわけです。実はもう実際、東京の東の方で、それを市民たちと一緒に始めていて、100年後とか50年後のこの地域をどう考えていくのかといった議論を、非常に楽しくやっています。普通、防災というと暗く語るのですが、楽しい顔で、安全性があって、しかも快適で、幸せな町の姿を考えるという、自分の孫の世代、その次の世代に向けての議論が今、始まっています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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