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防災インタビューVol.59

地震学とは? ~地球の生態から学ぶ地震のしくみ~

放送月:2010年12月
公開月:2011年5月

大木 聖子 氏

東京大学地震研究所助教

地球の内部の色

前半で、P君とS君が見て来た世界を地上でキャッチして教えてもらう、それをやっているのが地震学者だということをお話ししましたが、さらに実験室でP君とS君が言った通りなのかを再現して比較することで、地球の内部が一体何でできていて、どんな状態かということが分かってきました。実際、人間が掘ったことがある穴の深さは、人間は入れないけれども、とにかくドリルで掘って掘って掘りまくって12kmです。それ以上になると、どんどん圧力が高く、硬くなってしまうので、ドリルが負けてしまうのと、どんどん熱くなって溶けてしまうということで、6400kmのうちの12kmまでしか掘ったことがないのです。

では、実際には行けませんがP君とS君に聞いたり、実験室で照合したりして見えてきた地球の中の色は、何色だと思いますか? よく教科書などには赤で書かれていたり、溶けるくらい熱いので、まぶしくて白いと思っている方もいます。マグマの赤という方もいます。しかし実際に色を見てみると、最初は緑です。8月の誕生石である黄緑色のペリドットという石がありますが、それがそこら中に敷き詰められていて、地球の中は宝石箱のようです。また、ザクロ石と言われる1月の誕生石のガーネットも、ちらほら見られます。100?から200?の深さの所は黄緑色で、やがて深緑になっていって、もっと濃いブルーになっていくと言われています。大体600km、700kmぐらいの所で濃いブルーになります。600kmからさらに潜って行きますと、今度はビール瓶みたいな色、茶褐色になります。いずれにしても、ずっと潜って行くと宝石箱の世界を見られます。しかし、これは実はすごくゆっくりゆっくり動いていまして、対流といって、おみそ汁などをじっと見ているとモコモコ上がってくるのが見えますが、地球の中でもそのような対流が起きています。

地球の中の動き

我々を揺らし、建物を壊したり人の命を奪う地震の波、P波とかS波を使って地球の中のことを知った結果、見えてきた地球の中というのは、宝石箱のような岩石がゆっくりゆっくりと数億年かけて動いているということです。地球の中のほうは熱いので、その熱を持った温かいものがボコッと出てきて、ゆっくりゆっくり地表に向けて上がってきます。地表に出ると、今度は冷やされて横に流れます。それが、プレートが地球の表面を移動しているということです。

日本の東側には大きな太平洋プレートという岩盤がありますが、これがずっと実は日本の方に動いています。このことは、地球の内部でボコッと上がってきたものが、やがて冷やされながら水平に動いていくということを反映しているわけです。それが十分に冷やされると今度は日本列島に衝突して、冷たいものは重たいので、日本列島の下に下りていきます。下りていったものは、下まで行くと温められてまた上がってくるということですが、日本の下に沈み込んでいくとき、冷やされて日本にぶつかって地震を起こします。それが太平洋の浅い所で起きた地震であれば津波を伴うわけです。そうでなければガリガリぎゅうぎゅう日本を押してくるので、日本列島のほうが先に悲鳴を上げて陸の中で起きる地震を引き起こし、直下型地震になるわけです。地球からすると、ゆっくりとした流れの中で対流してグルグル動く流れのほんの一部なのです。その最後に沈み込むときにほんの一部が地震を起こしてしまうということで、地震はこの地球の大きな営みの一つです。

このように数億年単位で地球のような大きな生き物が動いています。これは犬の上に住んでいるノミみたいなもので、我々がこれを制御しようというのは無理なことです。我々はその地球の生態系をよく知って、地震とともに生きていくことが大切です。だいぶ地震のことも分かってきましたので、どういう対策をとればいいかということを調べて実践すれば、命は十分に守れると思っています。

地球の生態学=地震学

私は、地球という大きな生き物の生態学をやるのが地震学だと思っています。知れば知るほど地球というのは大きくのんびりした生き物で、対流をしていると言いましたが、それは暑がりだからです。暑がりだから自分を冷やそうとして対流を起こしています。そういう対流運動が原因で起こる地震活動があったり、火山活動も同じです。そのように大きな地球の上にゴミみたいに住んでいる私たち人間が、ちょっとした地面の揺れで、これだけの被害が起きるわけです。それなので、地球という生き物のことを知って、その上で「これは一緒に生きていくしかないんだ」ということを理解して、どういう対策がとれるのかを探っていただけたらと思います。

対策は、今既に皆さんがされていることをちょっと工夫するだけで、大きく違います。最初にお話しした小学校での避難訓練は、どのような学校でも日本ではやっていると思います。それをちょっと緊急地震速報の音に変えるだけで、とっさの判断を考える力を養うことができるわけです。今やっているものをちょっと変えて工夫するだけで新しい防災、災害に強い次世代を育てていくことができます。そのためにも情報を積極的に探して、実際にアクションしてもらえればと思います。

地震研究所でもこのような活動のお手伝いをさせていただいていまして、今年度は東京消防庁と一緒に活動しています。消防署に、こういう防災の教育をしてほしいとお声掛けいただければ、地震研の私がP君とS君を持って伺います。ぜひ先生方、子どもたちの命を守るためにアクションしていただければと思います。

地震研でも月に1回、私がラボツアーを実施していまして、大体10名から15名ぐらいで締め切るのですが、2時間ぐらいかけて地震研究所の中を自由にご覧いただいています。親子で来られる方もいますし、80代の方から小学生まで、本当にいろいろな年の方が来てくださいますが、実際の研究者が、どのような装置を使っているのか、実際の地震の波計とはどのようなものなのかを見ていただく機会となっています。これは月に1回ぐらい開催していまして、これも「地震研究所」と検索していただければ出てきますので、ぜひ見てください。また、夏にはもっと大きい、一般公開というのを全所を挙げてやっています。ぜひ親子で、ご家族で、来ていただけたらと思います。

地震研究所のホームページで

地震研究所のホームページにはいろいろなことが載っています。「地震研究所」と検索していだければ、ホームページが出てきますので、ぜひ見ていただければと思います。P君、S君の話も出ていますし、こういう話を書き砕いたものもあります。またシンポジウムや一般の方向けに行う講演会についても告知するので、ぜひ見ていただければと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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