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防災インタビューVol.59

地震学とは? ~地球の生態から学ぶ地震のしくみ~

放送月:2010年12月
公開月:2011年5月

大木 聖子 氏

東京大学地震研究所助教

長周期地震動について

長周期地震動というのは、地震が起きた後に少したってから、非常にゆっくりとした揺れがゆらりゆらりと数十分にわたって続くような地震です。特にこれは被害が出る場所があらかじめ決まっています。実際に、2004年の新潟県の中越地震のときに起きました。震度3なので、歩いている人は気が付かないくらいですが、例えば六本木ヒルズなどの超高層の建物の中では、船酔いのような揺れがずっと続いたということが起きています。その時は被害には至らず、人が亡くなるような被害は出ないと思いますが、エレベーターはグラグラ横に揺らされるようにはできていないので止まってしまうとか、そのような被害が今後起きるのではないかと懸念されています。

なぜ高層ビルだけが揺らされるのかということを説明しますと、条件は幾つかありますが、まず地震が大きいことです。大きな地震が起きて震度が浅い場合、さっきの擬人化で言うと、地球の中の浅い所に住んでいるやつらです。その地震が起きたときにP君とS君と一緒に「表面波」という、地球の表面だけを平泳ぎのように伝わっていく波が入っていきます。平地や盆地においては、キッチンテーブルの上にボウルに入れたプリンを置いてテーブルをゆすると、プリンがボアボア揺れますが、そのような状態になります。そうすると、ゆっくり動いているので人は感じないのですが、高い建物などは、それに合わせてだんだん自分も共鳴して、ゆらりゆらりと揺れ始めます。そのように、平野や盆地にある高層の建物だけを狙い撃ちしてくるような地震の揺れを、長周期地震動と呼んでいるわけです。

高層建築物はかなり強く造られているので、震動で揺れて折れることはないと言われていますが、ビルの中では上の階が右側に1m、左側に1mというようにゆっくりゆっくり揺れますので、たんすなども合計で2m動くわけです。そうなると建物そのものは大丈夫でも、家の中がぐちゃぐちゃになってしまいます。キッチンから食器は出てくるし、冷蔵庫の中のものも全部出てきてしまいます。たんすは止めてなければ当然倒れてきますので、そのようなビルの中の家具などによる被害が懸念されている地震です。このような場所の高層ビルに住んでいる方は家具を固定したり、被害が起きた場合は何棟もの高層ビルが同じような状態になるので、エレベーターなどもたくさん止まってしまいますし、運転再開をする技術者の数も足りなくなるので、しばらくエレベーターがない状態で暮らさなければならなくなることをよく考えて、水などをためておくような備えをしておく必要があると思います。

地球の中の世界

「地震は災害である」というふうに私たちは捉えてしまいますが、地球からしてみると、地震というのは大きな地球という生き物の、ほんのちょっとの活動なのです。それが起きる所に私たちがたまたまというか、好きこのんで住んでいるのだということを、私は地震学を勉強していくに従って感じるようになってきました。

先ほどお話ししたP君とS君ですが、P波は最初に来る小さなカタカタとした揺れですが、一方でS波、S君は悪者で、家具を倒したり家を壊したりして被害を起こすものです。このP君とS君は地球の中もトットコトットコ走っていまして、地球の中を通って地上に出てきたものをキャッチすることで、P君とS君が見て来た世界はどのようなものなのかを聞くのが地震学者の仕事です。私たちはまだ誰も見たことのない地球の中の世界を、P君とS君から教えてもらうことができるわけです。

例えば、極悪S君は水が苦手です。P君は上手に液体の中も泳いで伝わるのですが、S君は液体の中を泳ぐことができません。S君は極悪な割には実はカナヅチなので、S君が全くしゃべらない領域、つまりS君が伝わらない領域があるということを通して、地球の中には液体があるということが分かりました。地球の中心にはビー玉のような固体の鉄があって、その近くの外核といわれている所は鉄の液体、鉄の海があります。その上にぷかぷか、あたかも浮いているように岩石の世界があって、そのさらに上に私たちが住んでいるということをP君とS君が教えてくれたわけです。

実際に私たち人間が地面を掘っているのは表面だけです。地球の半径は6400kmあるのですが、人間が入ったことがある深さは3.5kmです。6400kmに比べると0.1%にもいっていません。宇宙へはロケットを飛ばせば行けますが、地球の中というのはそれができないので、私は地球の中は宇宙よりも遠いと思っているのですが、それがどうなっているのかを教えてくれるのがP君とS君、地震波なのです。それはレントゲンで私たちの体の中を見るのと全く同じことで、その研究をしていますが、このように地球を知るということから災害に備えるというふうに入っていくのもいいのではないかと思っています。地震は止めることはできませんので、いかに上手に共生していくか、一緒に住んでいくかを考えていかないといけないと思います。少なくとも日本人はそう捉えないと、やっていけないと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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