1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. 行政の危機管理
  6. 地震学とは? ~地球の生態から学ぶ地震のしくみ~
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.59

地震学とは? ~地球の生態から学ぶ地震のしくみ~

放送月:2010年12月
公開月:2011年5月

大木 聖子 氏

東京大学地震研究所助教

プロフィール

東京大学地震研究所、助教の大木です。私は地震研の広報アウトリーチ室というところで、人々に地震のことを普及、啓発したり、地球や研究のことを伝える仕事を主にやっていますが、もともとは地震学が専門です。

高校1年生の3学期に阪神大震災が起きまして、同じ国で同じ時間に、ああいう悲劇が起きていることを東京でテレビで見ていて「信じられない」と思いました。それで地震学者になりたいと思って、それ以来ずっと地震学をやってきました。今は念願がかなって、地震学を修めてから、地震について人に伝えるという仕事をさせていただいています。

実はもう一つきっかけがありまして、中学校の時に『教室では教えない地球の話』というブルーバックスの本を読みました。その本を書かれたのが北海道大学の地震学の先生でした。もともとちょっと興味はあったのですが、そこに進学しようと決めるほどではありませんでした。その後、何となく頭にあったので、地震が起きた時に「ああ、もうこれだ」と思いまして、本当に北海道大学に行きました。本がきっかけで地震に興味を持ち始めたので、子どもの時に読む本は、とても重要だと思います。あの本を与えてくれた母に感謝しています。

小学校での防災教育

今、板橋区にある小学校とタイアップして「小学校での防災教育」というのをやっています。防災教育には幾つかありますが、特に緊急地震速報を使った避難訓練を重点的に進めています。避難訓練というのは私が小学生のころからありましたが、「訓練、地震です。児童の皆さんは机の下に隠れましょう」と、自分の知っている先生の声で放送が入って机の下に隠れる、という訓練を今まではずっとやってきたと思いますが、実際に地震が起きたときは、そんなことはあり得ないわけです。それなので現在は、緊急地震速報のティロンティロン、ティロンティロンという音を突然流して、それに反応した子どもたちが机の下に入るなり、校庭の真ん中にしゃがむなりするという訓練を進めています。

年に何回か地震の訓練があると思いますが、1回目は普通の授業の時に行います。この時、子どもたちは教室で机の下に入ります。2回目には、例えば掃除の時間にやると、机は全部後ろに下がってしまっているので、前の6人ぐらいしか机の下に入れません。「その時どうするか?」というのを自分の判断でアクションしてもらうというものです。次は家庭科室で行います。机はあるけれど、下に入れない。その時に、それぞれ考える力を養うということで、そのような授業をしています。

これはゲーム性があるので、楽しんでやってくれているみたいです。1回、音楽室でやったときは机がなくて、譜面台しかありません。それで1人の子が木琴の下に隠れましたが、その後、木琴の耐震性について、子どもたちの間ですごく議論になりました。このようなこともできるので考える力も養えるし、地震が起きたときでなくても不審者が入ってきたときの対応などについても同じことがいえますので、こういう訓練を通して学習しています。

キャラクターを使って防災の勉強

小学生に教える際には、子どもたちにどうやったらより分かりやすく、しかもずっと心に留めておいてもらえるのかというのを考えました。緊急地震速報というのはP波とS波の伝搬する速度の違いを利用しています。つまりS波のほうが揺れが大きい、けれどもS波のほうが後から来る、それを利用してできている仕組みですが、その仕組みを説明するときに、トットコトットコ逃げるP波のキャラクターP君、後からのしのし追い掛けてくるS波のS君というキャラクターを作りまして、これを使って紙芝居のように伝えることにしました。すると目に見えて理解度が変わって、「ああ、これはいける」と思いました。

心理学の先生にも伺ったら、人が相手だと人間の脳の処理能力が速くなるということでしたので、擬人化して教えることは、科学を伝えるのにいい方法ではないかと今は考え始めています。このように春から避難訓練をして、秋、冬ぐらいに緊急速報の仕組みを実験装置などを使いながら説明しています。仕組みが分かると、一体自分は何でこれをやっているのかが分かり、さらに家に帰って家族にも伝えることができるので、このような取り組みをしています。

また、この地震速報になぜ誤差が出るのかを伝える際にも、「P君とS君が近いとすぐ一緒に来ちゃうでしょ」と話すと、子どもは「そうかそうか。じゃあ、間に合わないときもあるんだな」ということを伝えることができます。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針