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防災インタビューVol.60

危機管理のために ~準備・対策を継続することの重要性を学ぶ~

放送月:2011年2月
公開月:2011年6月

鍵屋 一 氏

NPO法人東京いのちのポータルサイト 副理事長

危機が発生したときの対処

危機に対して備えることが大切だというお話をしましたが、次に、いざその危機が発生した場合の対応について考えてみたいと思います。会社や組織の話でお話をさせていただきますと、いくら社長さんが頑張っていようが、仕組みがあろうが、実際には危機は起きるときには起きてしまう、これは仕方がないことです。その場合には、起きてしまったものは仕方がないと割り切って、いかに当面の被害を抑えるか、これに全力を尽くさなければいけません。

例えば、家が火事になってしまったと仮定してみてください。このとき「なぜ火を出してしまったんだろう」「どうしたらいいんだろう」と悩んでいる場合ではなくて、まず火を消さないといけません。火が小さいうちに何とか消そうと努力をし、消防署に電話をして消してもらう、そういう状況です。こういう状況で一番大事なことは何だと思いますか?

それは、とにかく速さ、スピードが一番です。例えば2つ選択肢があったとします。あっちをやろうかこっちをやろうか迷うわけですが、十分な情報があれば、そのうちのこちらの案にしようと決まるわけですが情報が何もない。水で消していいのか土を掛けたらいいのか分からない、という場合があります。取りあえずちょっと水を掛けてみよう、こういう判断も大事なことになります。ただ油火災に水を掛けるともっとひどいことになるので、この辺の知識はある程度必要になりますが、すぐにやること、迷っていないですぐにやることが重要です。

また会社などの組織で危機が発生したときには、必ずマスコミがやってきます。このマスコミ対応というのがとても重要で、危機管理の最も重要なターニングポイントとなります。マスコミの対応を上手にやるかどうかが「あの会社は危機があったけれども、これは何とかうまく抑えたんだな」「あの会社はひどい会社だったな」と言われるかどうかの瀬戸際となってきます。マスコミというのは、実は我々市民が思っている疑問点、不安なところを代表して質問しています。会社にしてみれば、お客さま一人一人に答えるよりも、マスコミを通じて答えたほうが非常に効果が高いので、危機が起こったときに納得できる説明をできるようにすることが大事になってきます。ところが報道などでよくありますが、マスコミにちょっと強く言われると感情的になったり、むきになっていろいろ話してしまうことがありますが、これはかえって信頼を落としてしまうことになるので、細心の注意が必要な場面だと思います。

このように危機管理の対処の仕方は、最初はスピードが大事であり、その次にはマスコミ対応が大事だということで、どちらも準備をしていないとすぐ急にはできないことです。危機に備え、もし危機が起こったときには被害を少なくすることに専念し、自分たちはこういう努力をしている、取りあえずこういう状況にあって、こういう努力をしている、ということを的確に伝えることが、会社や組織では非常に大事であると思います。

危機の収束

危機管理おける3つのステージで最後の段階が、収束という、一番激しい時期が終わって、これから元に戻ろうという時期です。このステージにおいては、なぜそういう危機が起こったかという原因を必ず突き止めなければいけません。例えば、規則が緩かった、あるいは居るべき時に居るべき人が居なかった、あるいは完全な見落としをしていたなど、いろいろな原因があるかと思います。その原因に対してどういった対策をすれば、そういうことが二度と生じないのか、この「原因と対策をセットで決めること」これが大事です。セットで決めた後は、それをきちんと文書にして、皆で徹底して守っていくことも大切です。マスコミ対応も原因と対策ということを必ず求められますので、この流れで対策まで済ませて、その後はそれが風化しないように、また準備の段階の訓練を行っていく、ということにつながっていきます。

危機管理の難しさ

今お伝えしたような3つのステージが危機管理の在り方ですが、この危機管理という仕事は、意外と会社の人も個人も皆さん、あまり好きではないのです。それはなぜかと言うと、いつも危機管理をやっているわけではないので慣れていない、慣れていない事を考えるのはあまり楽しくない、という感じになるわけです。これが逆に慣れている仕事、日常の仕事ならば、いつも大体この時間にこういう事が起こって、こういう事をして、ああいう事をするというように、会社などで言えば仕事内容については細かくマニュアルを定めて、なるべくマニュアル通りにやればいいわけです。ところが危機管理というのは、そういったルールをいったん止めて、取りあえずはその被害を最小に食い止めるための臨時的な対応をしなければいけない。それもゆっくり決めていてはいけない、早くやらなければいけないわけです。マニュアル化も難しい、それでいて問題は重く、さらにスピードが求められる、ということですから、これをやろうというのは大変だな、と想像がつくわけです。

日本にはその危機管理を専門としている仕事が幾つかあるのですが、行政でいえば警察、消防、自衛隊、海上保安庁、こういう仕事は何か危機が発生したときにバンッと出て行く、そういうところです。従って映画やテレビによく出てくるのは、こういった行政機関です。日常的でない、危機のときにどう人間がきちんと立ち向かうのか、こういったときに人間のすごさが分かります。ですからドラマになるわけですが、反対に普通の市役所をテーマにしたような映画は、ほとんどありません。それは日常通りに行われていますから、観客のほうもそんなに興奮をしない、淡々と流れていくわけです。役所をタイトルとした面白いものに、黒沢監督の「生きる」という映画があります。それは、がんで余命いくばくもない区役所の総務課長が公園を造るという話です。通常は総務課長の仕事に公園を造るというのはないのですが、自分の縦割りの仕事を超えて公園課長と掛け合い、いろいろなことをしながら最後は公園を造って亡くなっていく。そういった役所らしい仕事をしなかったときに映画になるのです。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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