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防災インタビューVol.60

危機管理のために ~準備・対策を継続することの重要性を学ぶ~

放送月:2011年2月
公開月:2011年6月

鍵屋 一 氏

NPO法人東京いのちのポータルサイト 副理事長

危機管理のために ~知識と判断力~

先ほど、危機管理というのはマニュアル化もできないし、実際に前もって考えるのも難しい部分もある、という話をしました。では、どうすれば危機に強くなることができるのかというと、これは私自身の考えですが、一つは「知識」がないと駄目だということです。それから、その場その場で冷静に良いほうを選んでいく「判断力」、最後は「人格」、この3つがポイントだと思います。

まず、この「知識」ですが、いくら身に付けても、これでよいということはありません。例えば今回、霧島連山で火山の噴火がありましたが、その時に空振(クウシン)、爆発的噴火などの新しい聞き慣れない言葉が次々に出てきました。そういう言葉がどんどん出てきますから、知識にはある程度限界があります。しかし、どういう場面になろうとも、冷静に落ち着いて良い方法を探る、ということは訓練次第で可能になります。これが人間の質ということになると思います。素晴らしいリーダーというのは恐らく、それについて知っているから素晴らしい判断をするのではなく、判断力があるから素晴らしい判断をするのだと思います。どうやったらその判断力が身に付くかということですが、これは一つは予測です。きっと次はこうなるだろう、こうなる可能性が高い、あるいはもしかしたら起こってはほしくないけれどもこうなる可能性がある、といった予測をすることが大切ですが、人間は予測の範囲内であれば冷静な判断ができると言われています。例えば、宝くじを買ったとすると、まあ予測で大概はほとんど当たらないだろうと思っているので、外れたときも冷静に慌てずに済むわけです。ところがここで1千万当たったというと慌てます。それは良いほうの危機管理なので良いのですが、私自身も1回経験がありますが、大雨が降って小さい川があふれそうになってきたことがありました。7メートル堤防があり、2メートルぐらいまで水位が上がってきたけれど、あと5メートルありました。しかし水位計を見ていましたら、何とわずか10分で4メートルも上がってしまって6メートルになりました。7メートルの堤防で6メートルまで水位が上がっていますから、もうこれは大変な話で、場合によっては避難勧告を出さなければいけないですし、消防団や住民の方々に出動要請をお願いしなければいけないと、頭のてっぺんがキリキリキリキリ痛んで大変な思いをしたことがありました。それは、私がまさか10分後にここまで水位が上がると思っていなかったから焦ったわけです。こういった意味では焦りというのは人間の判断を狂わせてしまいます。できるだけ予測をして、その範囲内に収めるというように考えなければいけないわけです。

仕事は特に予測のゲームだとも言われています。上手に予測することが、上手に仕事をすることにつながります。判断力を鍛えることができればいいのですが、まずは大局観を持つことが必要だと思います。これは、細かい事にはあまりこだわらず、大づかみに、全体がどうなっているのかを把握することです。大地震で建物がバタバタつぶれて火事が出ている状況なのか、それとも1軒や2軒の建物がちょっと傾いている状況なのか、これで全然違うわけですし、亡くなった方がいらっしゃるのかいらっしゃらないのか、これでもう対応が全然違います。そういった全体像をまずつかんで、そこから細かいところに入っていく、これが大事です。例えば、マスコミに話すときも、いきなり細かい話をすると分からなくなってしまいます。まず最初に「今回の地震では今のところ死者は出ておりません」「建物の被害もごく少なくなっています」と全体像を話すわけです。その後に「なお、一部の所では建物が傾いたり、渋滞が発生したり、電気がこれくらいの範囲で止まっています」というように中に入っていくと分かりやすいので、物事を把握するには、まず大局観をつかむことが大事なことです。

危機管理のために ~人間性を高める~

危機に強くなるためには知識と判断力がポイントです、という話をさせていただきましたが、もう一つ重要なのは「人間性を高める」ということです。例えば、誰かが「この仕事をやってくださいますか」というお願いをしたとします。そうすると、ある人の言うことなら素直に聞けるのに、この人が言うのでは聞けない、こういうことありませんか?
人間には好き嫌いもありますが、危機管理をする上でも、人間性というのが非常に問題になるわけです。ですので、普段から人間性を鍛えるということが、とても大事になってきます。

人間性を鍛えるために、まず大事なのは健康であるということです。体の調子が悪いと、なかなか人に優しくできないですし、疲れていると悪い判断をしやすく、間違いやすいです。しかし不思議なことに、調子が良すぎて絶好調でも間違いやすいということがあります。人間というのは、やはり平常な精神状態で、その人らしい判断力を発揮することができます。そこに人間性が出てきます。しかし非常に落ち込んでいたり、逆に非常にハイになっていたりすると判断を間違いやすいですし、人にも良い印象を与えません。そのために重要なのは十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動です。しかし現代は皆さん忙しいので忘れがちになってしまいますので、意識してこれを心掛けるようにしていただきたいと思います。

そして、もう一つ大事なのはメンタル面です。これはなかなか自分一人では解決が難しいですが、どうも気分が重い、調子が悪いというのが2週間以上続いたら、これは黄色信号です。専門医に相談をして「大丈夫ですよ」と言われればそれはそれで安心ですし、もし悪くて「ちょっと、うつ病の気がありますね」ということであれば早めに薬をもらって、対応すればいいのです。これは個人の危機管理になりますし、自分の人間性を守っていくということになろうかと思います。

人に優しくあれ

人間性を高めるもう一つのポイントは「人に優しくする」ということです。私は全国でいろいろなシンポジウムなどに呼ばれる機会が多いのですが、それぞれの地域に「本当にどうしてこれほど素晴らしいのか」という人がいらっしゃいます。その人たちには共通している幾つかの特徴があります。

まず一つは「人に優しく自分に厳しい」人たちです。幕末に、佐藤一斎という非常に優れた学者がいました。その人は「人に接するときは春風のように穏やかに接し、自分に対しては秋の霜のように厳しさを持ちなさい」と言っています。これは、人に優しく自分に厳しくということだろうと思います。自分に厳しくするのは、なかなか難しいのですが、人には優しくできるはずです。私はよく言うのですが「優しさのシャワーを浴びせるがごとく人に優しく接する」、現代はなかなか厳しい時代ですので、それくらいでちょうどいいのかもしれません。

もう一つの共通した特徴は、器量の大きな方です。体からオーラが出ているようで、その人の傍らにいるだけで落ち着いた気持ちでゆったりできる、そういう方です。非常に大きな心を持って人の話を受け入れ、人の話をよく聞いてくれる人です。逆にプライドが高すぎて人の話を聞けない、という方がいますが、そういう方の場合はだんだん周囲の人から嫌われていくということになりがちです。特に会社などでポジションが上がっていったら、人の話をよく聞いて、大きく受け入れるというような人になっていただけるとありがたいと思います。

最後に、そういう素晴らしい方々というのは志を持っていて、自分が何をやりたいかがはっきりしています。中国の明時代に王陽明という素晴らしい学者がいました。彼は学問というのは志を立てるよりも先にすることはない。つまり志を立てるのが第一である、その後に学問が身に付いてくるのだと言っています。実は私は時々面接試験をするのですが、そのときに必ず志を問います。「どうしてこうしたいんですか」「どうしてあなたは昇進したいと考えましたか」「どうしてあなたはここで働きたいと思うんですか」、そうしますと本当に志を持っている人は、自分の言葉できちんと話してくれますが、志を持っていない方は、何か借りてきたような言葉で話したり、目が泳ぎながら話していたり、何か思い出そうとしながら話しています。そういう場合は志がちょっと弱いかな、と思います。志がなくてもたまたま成功する人もいますが、それは偶然です。しかし志を立てて努力した後に成功すると、それはもう必然です。成功すべくして成功したということだと思います。

我が国には良寛和尚や西郷隆盛さんなどの素晴らしい人がいます。このように、いかにもこの人に学びたいというような素晴らしい人もいますが、なかなかそういう雲の上のような人に学ぶのは難しいと思います。しかし、もっと身近にいる、これまで出会った素晴らしい学校の先生、上司、友人、そういう人をイメージしながら人格を高め、人間性を高めていかれれば、きっと危機管理も上手にできるのではないかと考えています。気持ちにゆとりを持って、それでいて、いざ危機というときにはパーンと動ける、めりはりが利いている人になれるように一緒に頑張りましょう。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。