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防災インタビューVol.65

防災まちづくり ~東日本大震災に学ぶ~

放送月:2011年7月
公開月:2011年11月

渋谷 和久 氏

国土交通省総合政策局政策課長

大規模盛土造成地の状況調査

大規模な盛土造成地が危ないというお話をしましたが、国土交通省の推計では、全国にそういう危ない場所が1万カ所ぐらいあるのではないかということです。そこで、全国の自治体にぜひ調査してほしいということで今、お願いしているところです。

ぜひ紹介したいのは、全国の中でも早い時点から行っている先進的な横浜市の取り組みです。横浜市では、市内にある大規模な盛土造成地がどこにあるかということを、ホームページ上で「大規模盛土造成地の状況調査」という細かい地図が公表されています。これは、自分の住んでいる所がどんな場所なのかが一目瞭然で分かるマップとなっています。これは横浜市が調査した結果を表した地図ですが、この調査は実は、そんなに難しくありません。昔の航空写真と今の状況を見て、昔谷だった所が今平らになっていた場合、これは盛土だということが分かります。ただ、小さなご飯茶わんのように、小さくて深い盛土はあまり動かないので、それほど危険ではありませんが、スープ皿みたいな、平らで少し広い所は非常に危険です。小さな盛土よりは、3千平米ぐらいを超えるような大規模な盛土のほうがむしろ危ない、ということですが、そういうものが横浜市内に3558カ所もあるということです。横浜市や川崎市は戦後、こういう開発をずっと行ってきた所なので、盛土造成地は確かにたくさんあります。ただ、これは全てが危ないわけではありません。危険かどうかは、地下水が上の所まで上がってきているかどうかで分かります。土を掘り返したりしなくても調べられる方法がありますので、本当に心配だと思われる方は、自治体に相談されたらよろしいかと思います。

液状化を防ぐために

盛土をした土地に適正な処置をしないと、液状化が起こるという話もあります。液状化はどうして起こるのかとよく聞かれますが、昔の工事ですと谷を埋めて盛土をする場合に、ダンプトラックで土を谷に埋めるわけです。僕ら国交省が作っている基準では「締め固め」と言いまして、当然、盛土はきちんと硬くしなければならず、「締め固め」をしなければいけないと書いてあります。しかし古い造成地の場合は、一番上の表面だけ締めて固める工事しかしていない所があります。そうすると真ん中が結構スカスカで、カステラのスポンジのような形になっているため、そこに水がたまると地震の揺れで液状化を起こすわけです。

新潟県中越地震の後、宅地造成等規制法、都市計画法を改正して、これから盛土をする場合には50センチごとに締め固めをしなければいけないという基準に今はなっています。そのため最近の造成地は大丈夫だと思いますが、ちょっと古い所になりますと、きちんと工事している所もあるかと思いますが、やはり土地の状況がどうなのかというのを皆さんの目で見ていただければと思います。また、古い地名に沢という名前が付いたり、渋谷のように谷が付くような地名の場所は若干危ない所もありますので、そうしたことも含めて、昔の地図を見るだけですぐ分かる話ですから、ぜひそういう目で見ていただければと思います。

宅地自体の耐震化

防災を考えるときに、今回のように津波災害が起きると「津波だ、大変だ」という話になりますが、実際には、いろいろな形の被害が起こります。例えば、阪神淡路大震災では住宅や建物が倒れたので、耐震補強が大事と言われてきました。今回、新幹線もそんなに大きな被害を受けませんでしたし、高速道路もほとんど無事でした。やはり阪神淡路大震災の後、耐震化というものが進んで、今回、大きな構造物はそんなに大きな損害は受けていないということです。これはやはり大きな成果だと思います。あれだけの揺れの中で、新幹線はあの当時28本走っていました。しかし、揺れたその瞬間に1両も脱線していないというのは、世界に誇れる大きなことだと思います。

災害ごとにいろいろな教訓があって、今回は津波ですが、実はその前の中越地震の時も含めて、一見隠れているようですがこの宅地の被害というのは、ものすごく大きいので、住宅の耐震化だけではなくて宅地の耐震化ということも含めて総合的に、ぜひ検討していただければと思います。

被災地でのボランティア活動について

多くの方が、できればボランティアという形で被災地に行って、皆さん方ができるいろいろな活動をしていただければ、という思いでお話をさせていただきたいと思います。テレビなどで大勢のボランティアが、がれきの処理をしたり、津波で家の中にたまった泥をかき出すような作業をされているのを、よくご覧になるかと思いますが、現時点でボランティア参加されている方が約45万人います。この人数だけを見ていると多いように思えますが、阪神淡路大震災の時は最初の3カ月で117万人が参加していましたので、これは一桁少ない状況です。まだまだ人手が足りませんので、ぜひ大勢の方に、もっともっと行っていただきたいというのが現状です。

阪神淡路大震災に比べて、なぜボランティアが一桁少ないのだろうかということで、いろいろな方が分析をしているのですが、まず一つは、とにかく被災地が広すぎるというのがあります。被災地があまりにも広大すぎて、どこに行って何をしていいのかがよく分からないということです。

阪神淡路大震災の後、ボランティアの受け入れをめぐって、さまざまな仕組みができてきました。普段はいろいろな福祉活動をしている組織、社会福祉協議会というのがありますが、この社会福祉協議会は、こういう大きな災害があると現地にボランティアセンターを立ち上げて、ボランティアの受け入れと、さまざまなニーズを持った被災者の方々とのマッチングを行う役目を果たします。ただ今回の災害では、現地の社会福祉協議会の職員が亡くなっている場合が非常に多いことと、社会福祉協議会はボランティアセンターの立ち上げだけではなく本来の福祉活動を行わなければいけない上に、これだけの被害を受けているので、人手が足りません。社会福祉協議会というのはブロック組織で、全国組織がありますので、その方々が応援に入って、ボランティアセンターの設置や運営のお手伝いをしてもらっていますが、受け入れはともかくとして、被災者のニーズを把握するのが難しい状況です。通常は現地の社会福祉協議会の方々が被災者の顔を見知っていて、「こういう困った人がいる」とか「こんなことをしてほしい」というニーズを上手に聞き出してくるのですが、知らない人に対して東北の人はなかなか我慢強くて、ああしてほしい、こうしてほしいということを言われません。現地のネットワークの方も、ご自身が被災をされているということもあって、なかなかこの聞き取りがうまくいかないという状況があるようです。

ボランティアが現地に入るためには

政府では、辻本清美さんが総理補佐官に任命されて、ボランティア担当の総理補佐官になっていますし、内閣官房、官邸の中に震災ボランティア連携室というのをつくって、私もその中の一員になっています。ここでは各省の課長クラスから震災ボランティア連携チームを組織して、ボランティアの受け入れをどうやったらスムーズにできるかという施策を講じています。

例えば、ボランティアで行かれる方の車は高速道路を無料で通行することができます。これはご存じない方が多いと思うのですが、無料で走行するためには、まず現地の社会福祉協議会と連絡を取って、相手方から「受け入れます」というメールやFAXなど何でもいいのですが、相手方が「受け入れる」という証明になるものを持って、お住まいの市町村役場、市役所などに行って証明書をもらえばボランティア車両ということで、被災地への高速道路を無料で通行できるということになります。ぜひ、そういう仕組みがあるということで、ご活用いただければと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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