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防災インタビューVol.66

震災に備えて ~情報の重要性~

放送月:2011年8月
公開月:2011年12月

沼田 宗純 氏

東京大学生産技術研究所助教

災害データベースと可視化ツール

まず地震が起きた直後に我々が知りたいのは、今地震が起きて、明日何が起きるのだろう、明後日何が起きるのだろう、1カ月後、1年後、何が起きるのだろうという「時間の経過の中で何が起きるか」ということです。「可視化ツール」というのは、起きた瞬間、そして、その後に起きることが何かというのを時系列に表示してくれるものです。その表示の仕方として「被害の状況」と「それに関連する対応」という二つがあります。

例えば今、東北では復旧から復興に向かっていますので、今の状況では仮設住宅や生活再建の問題が非常に重要になってきています。しかし地震があった直後の問題はそういったことではなくて、どこでどんな被害が起きているかということでした。その後は、ガソリンなどの物資の不足の問題もありました。このように地震が起きた直後の応急期の問題と、時間の経過の中で起きてくる問題というのは、刻々と変わってくるので、その時に、こういった「可視化ツール」を使うと全体像が見えてきます。これを使うと、先取りで次にどんなことが起きるかが分かるので、今やるべきことは何かが見えてくるわけです。

このように、入手できた情報を逐次入れていって、どんどん情報が更新されていくようにして、誰でもがそれをWeb上で見ることができるように、現在、整備を進めています。

災害時の報道について

地震の直後にはテレビでいろいろな情報が流れてきましたが、私は、それぞれのテレビ局が何を取材し、何を言っているかを観察してきました。それを分析してみると、各局あまり違いが見られず、同じことを報道していました。例えば、原発の問題が起きると皆、原発のことしか報道しませんし、市町村に行くにも物理的な制約があるのかもしれませんが皆が行きやすい所に行って、同じ映像を撮ってきています。逆に、被害があるけれどもテレビで報道されない地域がどうなっているのかが分かりません。そうすると報道されない地域に物資が届かないなど、対応に問題が生じてきます。

地震が起きると、その時間の経過で起きてくる問題、その対応策は変わってきます。その中で、テレビが担うべき役割とは何でしょうか。テレビはいろいろな人が見ますし、映像も伴いますので、インパクトは強いです。ですから、時間の経過の中でテレビ局が発する情報は、被害を軽減するような、皆さんがうまく対応していくための情報を発信すべきだと思います。しかし、それがなかなかできていないのも現状です。

テレビ局には「特落」と言って自分の局だけが映像を取り逃がしてはいけないという考え方が基本的にありますが、災害時には皆が違う所をバランスよく報道するという姿勢が重要だと思います。今、手元に、発災から10日間を、時間の経過でテレビが何を報道したのかというデータがありますが、全部の局がずっと原発を取り上げていました。全部が同じことを報道するのではなく、これだけの大きな災害の際には、役割を決めて報道をしていかないと全体像がつかめませんし、対応も遅れてきてしまうということになります。

対応を支えるための報道の必要性

災害の直後、物資が必要な所に関しての報道がされていましたが、取材をした所にはたくさん物資が集まるけれど、逆に物資が全然行かない所もあって偏りました。テレビ局が行って「今、物資が足りない」と報道すると、皆さんそれを見て、物資を送ってきます。最初は物資が足りないので、送られたほうは非常にうれしいのですが、だんだんたまってくると、今度は物資が余ってきてしまうという状況もあります。しかし一方で報道されない地域には、まだまだ物資が足りなくて困っているという状況もありますので、報道というのは災害に対する対応をうまく支えるような情報を提供することが重要です。

新聞についてもデータを集めて分析していますが、これを見ると、大手は原発だったり、大きな被害があった所に集中して皆同じような報道をしている傾向にあり、テレビと同様な報道の姿勢があります。しかし地元のローカル紙は、担当の市町村を満遍なく報道しています。Webニュースなどで、地元の新聞社が報道している内容をインターネットでも見られるので、地元で困っていることや、何が起きているかという情報は比較的入手しやすいのですが、大手の情報量の多さにはかなわないので、大手がうまくバランスを取って、大手と地元の新聞社でうまく分担をして情報を伝える工夫が重要になると思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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