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防災インタビューVol.66

震災に備えて ~情報の重要性~

放送月:2011年8月
公開月:2011年12月

沼田 宗純 氏

東京大学生産技術研究所助教

津波観測用ブイの利用

今回の東日本大震災では、本当に大きな津波で多くの方が犠牲になりました。私たちの研究室では神奈川県の平塚沖に、波の変動を見る「ブイ」という観測機械を海に浮かべて観測をしています。3月11日の津波も、そのブイ観測機で津波のデータが取れています。 このブイは、すごくシンプルで簡単なものです。これは、もともとはインドネシアで大津波があった時に、安くて簡単に観測できる機器が必要だということで開発されたものです。通常は海の上にプカッと浮いていて、津波が来て水面が盛り上がると、それをGPSで観測して、津波が来たことを確認しています。これは津波が来たことを観測しているものなので、観測したから警報を出して「皆さん、逃げろ」と言っても、もうそこに津波が来てしまっているということになります。

3月の大震災の時に実際、相模湾では1mぐらいの変動でしたが、津波を観測しました。そこで得られた結果を、神奈川県にある観測棟で得られた波形と小田原にある気象庁の観測機械の結果と比較しても同じような傾向があり、これくらいの簡単で安いブイであっても津波を観測できるということが分かりました。

しかし、これは津波そのものを測っているので、やはり情報としては遅くなります。現在は、もうちょっと早く測れる方法はないのかということで、別の技術を開発しているところです。地震というのは海底が動きますので、海底が動いて盛り上がると、その上の海の水圧が変化します。海底が上に動いた瞬間に水圧が変化して、一気に海水の中を伝わりますので、それを観測することによって、実際に津波が来るよりもはるか前に津波が起きることを観測できます。今回もその水圧の変化を捉えておりまして、津波が来る前に、津波が来そうだということが分かりました。水圧の変化というのは、大きな海底が動くのと小さい海底が動くのとでは、変化の度合いが違ってきますので、それを見れば、どれくらいの規模の津波が来るかが分かります。ただ、水圧の変化だけを捉えるのではなく、今までやっているような実際の波の変化のデータを取ることも必要で、それをセットでやることで、いろいろな組み合わせを使って、お互いの良いところを生かして観測して、被害の軽減に役立てられればと思っています。

安否確認の新しい方法として

皆さんは、災害が起きて、自分がけがをするということは想定していないと思いますが、実際にはけがをすることもあり得ます。例えば東京で大地震が起こった場合には、大量にけが人が出て病院に運ばれることが予想されますので、その際に、けがの程度によってトリアージが行われます。現在は手書きのカードに名前、性別、住所、生年月日を書き込んで、色分けをしてトリアージを行って手当てをしていますが、この方法では多くの人がけがをした場合には、なかなか対応ができません。例えば、お父さんやお母さんがけがをしたというときに、それがデジタル情報になっていないので、どこの病院に運ばれて、どの程度のけがなのかも分かりません。病院側も、今、自分の病院に何人の患者がいて、どれくらいの程度の人がいるかも、なかなか把握できません。そこで今、我々がやっているのは、これらの情報をデジタル化するシステムをつくるということです。ただシステムにするといっても使えないものでは意味がないので、平時に我々が持っているものを使おうということをポイントとして考えています。そこで注目したのがフェリカです。これは定期券や携帯にも入っていますが、そういったフェリカの技術を使って、災害が起きてけがをしたときに、その人がフェリカを持っていれば、そのカードを読み込むことによって、仮にその方がけがをしてしゃべれない場合であっても名前が分かりますし、それがデジタルでデータ化されますので、どこの病院に自分の家族がいるのかを探すことも簡単にできるようになります。

我々は今、皆さんが持っている、いろいろな病院の診察券を一つの共通のものにして、非常時に使おうという試みを静岡県でやろうと考えています。セキュリティー上問題にならないように、名前と連絡先ぐらいで十分なので、それを入れておけば災害時に非常に役に立つと思っています。現在は実際に、いろいろな病院と一緒になって訓練で使っていますが、今回のように電力の問題があった場合などは使えなくなってしまいますので、実際の問題で起こり得ることをいろいろ想定して訓練をしています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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