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防災インタビューVol.66

震災に備えて ~情報の重要性~

放送月:2011年8月
公開月:2011年12月

沼田 宗純 氏

東京大学生産技術研究所助教

防災ビジネスについて

我々はこれまで大学と企業が一緒になって「防災ビジネス」を新たにつくるためには、どういうことをしなければいけないかを考える研究会を開いてきました。しかし現状は非常に厳しい面がありますが、「そもそも防災ビジネスの目的は何なんだ」というところから入って、今、研究会では「持続可能な地域社会をつくろう」ということで取り組んでいます。よく「防災」と比較されるものに「環境」がありますが、環境ビジネスはエコとかグリーンという言葉がはやったように、今、非常にうまくいっています。防災も「環境に追い付け追い越せ」で、防災ビジネスをすることによって「かっこいい」とか「楽しい」「自分も参加したい」と思えるようなことにつながる取り組みを考えているところです。

環境も、昔は大気汚染とかCO2の排出など、あまりいい言葉で表現されていなかったのですが、エコやグリーンという言葉が出てきて、一気に印象が変わりました。やはり環境は身近なところから参加して、それがグローバルな環境問題に自分が貢献しているのだというような意識があります。防災も東日本大震災の後は人ごとではなくて、自分が参加したいという意識に変わってきていますので、ここがチャンスです。どうにか皆さんをうまく防災のほうに引き込みたいと思っています。

この研究会では実際にビジネスを立ち上げるのではなく、そのビジネスをつくるためにはどんなことをやるべきなのかを皆さんで考えているところですが、特に若い人には、この震災を機にやはり人ごとではなくて、「防災に参加するんだ」と考えてほしいと思いますし、「防災で金もうけをして、お金持ちになれるんだ」というような意気込みで、防災に取り組んでもらえればと思っています。

防災ビジネスにおいて本当に役立つのは、身近な防災グッズだと思いますが、ビジネス的には誰を相手に商売をするのか、一般住民なのか、企業、行政なのかをしっかり考える必要があります。そういったことをうまく整理しながら「自分は防災ビジネスでご飯を食っていくんだ」というときに、では誰をお客さんにしようかと考えてもらえればと思います。

防災グッズを用意していても、家具を固定していなかったり家の補強ができていなかったりする場合は、非常に危険です。仮に災害が起きて、その家が壊れてしまえば、そこに住んでいる人は救助される側になってしまいますし、防災に貢献できていないということになってしまいます。本当に防災に貢献しようと思ったら、自分は助ける側になって、自分の家を強くして、家具も留めて、防災グッズも準備して、何かあったときには自分が助けてあげるのだというような気持ちでいてもらいたいと思います。

社会全体の安心安全を考える

私は今まで災害の研究をしてきましたが、これからは、もう既に高齢化社会になって人口も減ってきている中で、やはり社会全体の安心安全というのを考えないといけないと思っています。特にこれまでは防災に取り組んできましたが、それだけではなく福祉の問題、犯罪の問題、環境の問題もありますので、この大きな四つの柱で将来の安全安心な社会を築いていく必要があると考えています。

そこには横のつながりが必要だと思います。防災に取り組んでいながら犯罪や福祉、環境にも同時に取り組んでいる人は、それほどいないと思います。これからは横串を刺して、お互いに「防災でやっていることが防犯にどう役立つんだ」「福祉はどうなんだ」というようなことを、全体を見て、その中で何をやるべきかを考えていかなければいけないと思っています。

現在は情報技術も発達して、違う分野のデータでも比較的入手しやすくなってきていますので、こういったものを全部統合して、社会の安全安心に関わる統合データベースみたいなものを作りたいと考えています。当然それは使ってもらわなければ意味がないので、日本にたくさんある防犯や福祉のボランティア団体などが、必要とする情報をデータベースから引っ張って参考にしたり、使ってもらえるようになるといいと思っています。それと同時に、このようなデータがたまってくると、そのデータをうまく活用して、新しいビジネスは何かという防災ビジネスのマーケット調査に使うこともできると思います。

そのためには、今ある世の中の安全安心に関わる情報を全て集めて、皆さんが使いやすいような形にまず整理することが重要になると思っています。

社会全体で防災への取り組みを

3月11日の大震災を機に我々研究者も、これまでやってきたこと、これからやることを、実際に社会に生かしてもらうような努力をしていきたいと思っています。同時に皆さんも1歩踏み出して、防災というものに自分から積極的に取り組む姿勢を持っていただいて、研究者だけではなく、社会全体として「とにかく防災に取り組んで、日本を良くするんだ」「安全安心な社会を新たに築くんだ」というような意気込みで社会をつくっていきたいと思っています。

悲惨なことですが、東日本大震災が起きてしまったことは現実なので、被災地の町をどうにかして復興、再生させる必要があります。また、これから東京の首都直下地震や、東海、東南海地震が起きる可能性があることを考えると、今まで防災についてはあまり真剣に取り組んでこなかった方も、これは人ごとではないので、自分から参加して「自分自身でやるんだ」という意気込みで、自分が今できることに取り組んでいただきたいと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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