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防災インタビューVol.68

自分の命は自分で守る ~自助のための対策~

放送月:2011年10月
公開月:2011年12月

齋藤 實 氏

元東京都総務局総合防災部情報統括担当課長

災害時のトイレ対策

もう一つ重要なのは上下水道の復旧です。水は電気や通信に比べると、復旧がどうしても遅れます。東京都の場合は、水道管も下水管も東京都が復旧するのは道路までです。道路から家庭の引き込み、もしくはマンションなどの配管は各自が所有し、各自で補修することになっています。例えば、東京だと水道の本管の復旧まで仮に2週間かかるとしても、それから枝分かれしている各家庭、マンションなどへの復旧は、その後ということになりますので、長期にわたって水と下水が使えないということになります。この復旧までの間の水、とりわけトイレ対策については重要だと思います。

実は齋藤家には、トイレ対策として二つのものがあります。一つは風呂おけの水を絶対に流さないでおくということです。これはいざというときの雑流水になります。もう一つ一番のポイントになる最後の水道水、飲める水というのをご存じでしょうか? 実は、これはトイレのタンクの水のことです。ほとんどの家ではトイレに上流水を使っていますので、常時流れているきれいな水なのです。我が家では、地震があったら絶対にトイレのタンクの水は流すなということを徹底しています。もしかするとタンクには芳香剤が入っているかもしれませんが、芳香剤は実は飲んでも絶対に安全にできています。ですから最後のとりではトイレのタンクの水というふうに考えてください。

トイレ対策の仕方ですが、トイレに新聞を敷いて、その上から大と小をやっていただいて、それをビニールの袋に包んで密封をして、ごみが来るまでどこかに置いておくことをお勧めします。うちでは非常時に備えて、スーパーなどのビニール袋と新聞紙を大体1カ月分は保存してあります。新聞紙は、このようにトイレに利用するほか、お皿にしたり、掃除に使ったりと、いろいろなところで使えます。日常生活の対策も、このように齋藤家では実践していますが、ちょっと工夫すればできるのではないかと思いますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

危機管理勉強会 齋藤塾

毎月1回程度、企業の危機管理の担当者などさまざまな方に声を掛けまして、「危機管理に関する勉強会」というのを行っています。ここでは、いろいろな危機を体験した方の話を聞いたり、震災対策をどうするかということを検討したりしています。10月は東日本大震災の復興状況がどうなっているかということについて、お2人のゲストをお呼びする予定ですし、11月には、マンションの対策というのをやろうかと思っています。

「危機というのは何か」というのをまずは考えてもらいたいと思っていますが、その一つは自分が想定していないことが発生することです。今回の3.11で言うと、昨日は携帯電話が自由に使えたのに、今はこれが使えなくなったという状態が危機なのです。電気に関しては、停電というのはいろいろなリスクを想定する場合は当たり前ですので、電気が止まっても自家発なり懐中電灯とかいろいろな部分で対応ができています。これは比較的危機の中でも想定されていた危機です。もう一つ、自分が想定した以上の事が起こるということです。例えば、今回の3.11で言いますと、宮城沖などの三つの海域で連動してマグニチュード9.0が起こったと、これは想像を超えた危機です。

そこで問題は、こういう危機が発生したときに我々一人一人は、どういう判断基準を持って行動したらいいかということだと思います。私も都庁でいろいろな危機が発生したときに、自分なりに考えていたことを申し上げますと、まず大事なのは「情報をいろいろ集めましょう」ということです。そして、集まってきた情報の中から「本当に必要な情報は何か」という情報のトリアージを行うことです。トリアージというのは必要なものを手に入れて、要らないものを捨てていくということです。もう一つは、何かを判断するときに、判断に迷うときがあります。一般的に言うと行政は大多数の方の命を守るということが目標ですので、一人一人の小さな危機を把握するというよりは大きな危機、どこが一番大きいかということを見て、そこに最大の力を投入をするためにいろいろなことを判断しなければなりません。その際に、どちらにしていいか分からない、右か左かという状況で本当に迷ったらどうするのかという場合、私はいろいろな方に申し上げているし私自身も実践してきたのですが、「最後は人間としての常識で考えろ」ということです。危機が発生したときには、会社の立場、法律や前例など一切なしにして、与えられた情報の中で必要な情報をトリアージして、なおかつ被害をきちんと見つめて、今持っている資源、例えば火で言えば消火能力、そういうものを全て最大限生かした中で、本当にどこを助けなければならないのかを判断する場合、最後は人間としての常識で判断するしかないと思っています。そういうことを含めて、危機管理勉強会では多彩なゲストの方に来ていただいて、いろいろお話をしながら、共に楽しく学ぼうということを取り上げています。

これはフルオープンになっていますので、個人の方が自由な立場でいつでも参加できますので、興味のある方は「危機管理勉強会 齋藤塾」というキーワードでホームページを検索してメールをしていただければと思います。

地震はいつ来てもおかしくない

「地震はいつ来てもおかしくない」というふうに考えることが、まず大事です。そして、絶対にどんな地震があっても自分だけは生きるのだと、家族の命はどうしても守るのだということを考えていただきたい。つまり、自分の命は自分で守らなければならないという信念の下で、いろいろな場面を想定して、常に頭の中でトレーニングをしていくということが、まず大事なのではないかと思っています。

次に、普段できないことは、災害が発生したときは絶対にできません。ですから、何らかの形で家庭の中で話をしておくとか、ちょっとした訓練をしておくとか、テストをしておくとかが必要です。その上で日ごろの備えの中で、ぜひやっていただきたいことは、「大げさに考えないこと」です。これは、日ごろからできることを、ちょこちょことやっていただきたいということです。その典型例としては、3日分の備蓄をして押し入れにしまうのではなく、本当に必要なものをプラス1で備蓄していくことが大事だと思います。家族の安否確認についても、日ごろから家族で話をしておいてください。大きな地震の際には電話が通じないということが危機なのです。その時に重要なのは、通信手段が生きたとき、言わば電話が通じたときに、どういう通信手段でどこに連絡をするかということを、お互いに事前に話をしておくというのが重要です。

そして最後、三つ目にぜひこれはお願いをしたいのですが、自分の命が助かった、自分の家が大丈夫だということになったら、次には「助け上手になってもらいたい」ということです。これは、まずは隣近所の人の安否を確認する、あるいは、もし隣の方がおばあちゃんだったら、一言声を掛けてあげるということで、まず隣近所の助け上手になってほしいということです。この助け上手の一つとして、震災が起きると必ずいろいろな形で店頭から品物がなくなってしまいますので、常日頃からプラスワンの備蓄をしておいて「自分で物を買い占めない」ということも重要です。もし余裕があれば、被災を受けたところに対するいろいろなボランティア活動をしていただければと思います。

それともう一つ大事なことは、もし自分がけがをしたり被災した場合は、ぜひ「助けられ上手」になってもらいたいということです。隣近所の人に声を掛けて「助けてください」というのも重要ですし、仮に避難所に行かざるを得ない状況になったら、避難所にも隣近所の方やボランティアの方もいますので、二次災害やいろいろなことで震災後に命を失うことがないよう、ぜひ「助けられ上手」になっていただきたいと思います。キーワードは「助け上手と助けられ上手」ではないかと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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