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防災インタビューVol.72

水害から町を守る

放送月:2012年2月
公開月:2012年4月

小島 優 氏

国土交通省荒川河川局長

東京での水害から町を守る ~荒川の治水~

水害を考えたときに、低地の部分でどうしても気を付けないといけないのは、大きい川から水があふれることです。ただ、水害が起こるのは低地だけではなくて、台地の部分などでも起こるということです。水は高い所から低い所に流れていきますので、他に比べて若干くぼ地になっている所とか低い所は水がたまりやすいということになります。台地の中を切り裂いて川が流れているような所、例えば渋谷川とか目黒川の辺りは気を付けないといけません。特に渋谷は、名前も「渋谷」というぐらいですから谷の地形です。その谷の所には水がたまりやすく、大雨が降るとそこから水があふれたり、水がたまってしまって排水できなくなってしまうということが起こります。

最近はいわゆるゲリラ豪雨といいますか、急に1時間に100ミリといった雨が降ったりしますので、本当にどこにでも水害が起こり得るわけですので、まずは地形や気候、気象に注意していただくことが大事かと思います。

荒川について見てみると、本当に低い所を流れています。普段の地面の高さよりも極端に言いますと10メートルぐらい高い所に水面があるようなことにもなりますので、仮に堤防が決壊して水が流れ出すと、市街地の方に勢いよく流れ出して、そこにたまってしまうということになるので、非常に大きな被害が出ると予想しています。われわれは大規模水害という言葉を使っていますが、とても深刻な状況になると考えています。現在は、そういうことにならないように治水対策をやっていますが、自然現象が相手ですので、決壊する可能性がないとは言えないと思います。

荒川は上流の埼玉県秩父の辺りから、埼玉県の山間部に降った雨を集めて埼玉を流れ、東京に入ってきますので、上流部に降った雨が徐々に徐々に流れてくるというようなことが起こります。どちらかというと局地的なゲリラ豪雨という雨の降り方よりは、台風が来て2日間、3日間にわたって雨が降り続くといったときに、非常に水位が高くなるというような現象が起こります。それに対する対策としては堤防を造るということもありますし、さいたま市の辺りの中流部に、水を一時的にためるような池を造ったり、上流部にダムを造ったりということで、荒川放水路が開削以降、治水対策は着実に進められてきています。昔に比べれば徐々に安全性も高くなってきていますし、堤防自体も、放水路を開削したときの堤防よりも一回り大きくなっていますので、安全性は当時に比べれば高くなっているということが言えるかと思います。

地震と水害

今回の東日本大震災のときも、東北地方の川はもちろんですが、関東地方でも茨城や千葉を流れている川で、堤防が部分的に沈下をしたということもありました。現在はボーリングをして、地質調査をして、どの辺が弱いかは大体チェックしていて、弱い所については補強工事をするという対策を徐々にやっているところです。

また、目に見えて姿は変わらないのですが、地面の中自体を改良するという対策もしているところです。荒川もそうですが、最近、都心においては、地下街や地下鉄がかなり発達していまして、どうしても水がそういう所に流れ込むという恐れがあります。荒川が決壊すれば地下鉄が17路線、97駅、大体147キロぐらいが水没するというような計算もあります。荒川が決壊しないまでも、ちょっと低い地形になっている渋谷とか、過去にも赤坂見附とか溜池山王とかでも、地下鉄の中に水が流れ込んだようなこともあったと思いますが、やはり地下空間は非常に水に対して危険といえば危険な所だと思います。しかも地下にいると地上の様子がよく分からないので、地上で大雨が降っていても、なかなか地下にいる方に伝わらないということもありますので、そのあたりをどういうふうに情報伝達していくかという部分も、今後の課題になってくると思います。

ゲリラ豪雨について

最近、気候の温暖化や都市のヒートアイランド現象などが、よく取り上げられていますが、いわゆるゲリラ豪雨というか、非常に局地的に短時間に強い雨が降るというようなことが、全国どこでも発生しています。かなり被害も出ていますが、そうしたところでも極力、少なくても人的被害をなくすということが重要かと思います。そのためにも、まずは自分が今いる所の地形を知っていただくことが大切だと思います。お住まいの所もそうですし、お勤めの所とか遊びに行かれるような所も、若干土地が高いとか低いとかというのを意識していただければよろしいかと思います。

われわれも今後どのくらい雨が降るのかとか、何ミリぐらいの雨が降るのかというような、現在の雨の状況や今後の雨の予測についての情報提供をしていく取り組みもしています。気象庁などでも大雨やゲリラ豪雨の予報などを実験的に行っていますが、なかなか予報というのは難しいようです。これは短時間のうちに雲が発達して一気に降ってくるということなので、これから技術的には向上していくと思いますが、今の段階では、まず現状として、どこに雨が降っているかというのをお知らせするという取り組みを国土交通省でもやっています。

ゲリラ豪雨の際は低い所が危ないということですので、ちょっとしたくぼ地であったり、道路のアンダーパスといいますか鉄道の下とか道路の下をちょっと道が下がっている所、高架下、こういう所は非常に危険になります。このような場所では、車の中にいて取り残されてしまったというニュースなども、よくあります。また、天気が良かったと思ったら急に雨が降って、遊んでいたら流されてしまったという話もありますが、特に都市の中の川では、雨が降ると急に水位が上がって、急激に鉄砲水のような形で水が流れてきますので、そうした川で遊んでいらっしゃる方とか、川の中でお仕事をされている方が急に流されたりとか、痛ましい事故も起こっています。ぜひこのような事故はなくしていかないといけないと思いまして、われわれも情報提供には力を入れていきたいと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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