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防災インタビューVol.80

日常からの防災への備え ~地域でつなぐ耐震補強~

放送月:2012年10月
公開月:2012年12月

岡本 博 氏

墨田区耐震補強推進協議会事務局長

墨田区の耐震補強助成制度

このような問題を抱えた場所ではありますが、墨田区は助成制度を工夫してくれています。通常でいうと耐震の基準強度は1.0といい、そこまでしないと助成金が出ないということになります。そうすると、どうしても200万、300万という金額が掛かってしまいます。特に傷んだ建物ほど1.0にするのは難しいので、余計お金が掛かります。ただ、そのようなことを言っていると、なかなか皆さん手を出せなくなってしまいます。そのような状況では「家具の転倒防止はしても建物の耐震補強は無理だよ」と言われる方が多いのですが、墨田区は「1.0に至らなくても、少しでも良くなればそれでいい」という言い方をしてくれたので、われわれも「できる範囲でとにかく直しましょう」ということで話しやすくなりました。この制度そのものはお住まいの方、住民の方にとっても、われわれにとっても非常にいい制度だったので、大きく期待していました。しかし実際に取り組んでみると、もっと別の問題がたくさん出てきました。建物を直そうと思うと、そのお住まいの方たち、大家さん、家主さん、地主さんも含めて、いろいろな方たちの関係が出てきて、そのへんがなかなか進まない大きな要因になっているということが、だんだん見えてくるようになりました。

割とお年を召している方は「面倒くさい」「うちは大丈夫」と思われてしまう場合もありますし、ご家族の問題もかなり深刻な状況になっていると思われます。本来では災害が起こってからでは遅いので、親御さんが危ない家に住んでいるのでしたら、息子さんやご家族が積極的に耐震補強を進めるべきだと思うのですが、なかなか今の状態では難しいことも多く出てきています。

木造密集地域の耐震補強

耐震補強をしていると、いろいろな問題が絡んで出てくるのがよく分かります。中には建物そのものというよりは、ご家族の問題とか社会の問題というのが、全部中に入っているような状態があります。社会の縮図があるというか、言い方を変えると、都市防災のアキレス腱みたいなところが木造密集にあるというふうに感じています。

木造で老朽化してくと、火災の危険性も高くなります。建物が傷んでいてつぶれてしまうと燃え代になってしまうので、出火したら止められなくなってしまいますので、関東大震災の時の大きな火災旋風のようなものも恐れなければいけないという状況になりかねないと思います。

耐震補強自体はいろいろな形で、いろいろな所で進めていますが、一番大事なのは「一番危ない所をどうするか」ということを考えることだと思います。一番危ない所というのは、いろいろな条件が重なって、なかなか耐震補強ができない所です。高齢者が住まわれていたり、ご家族とばらばらになっていたり、借家、借地ということが絡んでいて、家に手を出すことができないというようなお宅が、まだまだたくさんあります。そういう所が実際には一番危ない、傷んだ建物の場合が多いので、そこを何とか補強していかないと、一番怖い所を残したまま補強の数だけ上げていくというのは、本末転倒になってしまうのではないかと思います。

少し補強すれば1.0になるような所は簡単に耐震補強ができますが、難しい所は避けられていきがちです。特に建築基準法違反であったり既存不適格というレッテルが貼らてしまっている所などは、助成金も出ませんし手が出せない状態です。場合によっては悪徳リフォームの温床になってしまって、役にも立たない補強をされて高額のお金を取られる場合も多く出てきています。一度悪徳リフォームに遭った方は、建築に対して信頼感がなくなっていますので、民間のわれわれが行っても門前払いされてしまうことが多いです。そのような意味でも行政が一緒にやってくれたり、去年は消防と一緒に訪問したのですが、そういう方たちと一緒に行くと本当に話が進みやすいです。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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